くろの旅

くろの旅

2006年02月08日
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「ホテル・ルワンダ」の映画がきっかけとなり、

くろの体験について書こうと思います。

(「ホテル・ルワンダ」の記事を読まれていない方は、
 是非先に ホテル・ルワンダの衝撃 を
 お読みください)

くろが以前の会社で主に担当していた業務は、
アフリカのアンゴラという国への自動車の輸出でした。


表面上はルワンダと同じ、部族間の争いですが、
現実は旧ソ連対アメリカの代理戦争が行われていたのです。

‘95年当時、アンゴラの人口は1千万人。
そこに地雷が2千万個埋まっているという、
世界で最も地雷が多い国でした。

実際に、くろが出張している間にも、
市内で地雷が爆発した事があります。


アンゴラへの初出張は23歳の時でした。
大統領と会いましたし、政府要人とも商談をしました。

そして、取引先の会社との交渉では、
初めて億単位の商談をまとめました。

その実感に有頂天になっていました。

商談直後、踊るような足取りで
取引先の事務所から出て来た
その瞬間の事です。

くろは、目の前の光景に絶句し、


事務所の前は、長くゆるやかな坂になっていました。

その坂を1人のお母さんが歩いていました。

正確に言うと、這っていました。


きっと地雷を踏んでしまったのでしょう、
お母さんは両足が腿の付け根からありませんでした。

両手だけで、
ずりずり、
ずりずり、
這い進んでいました。

そして、
背中には乳飲み子をくくりつけていました。
赤ちゃんはぐったりしていて、
頭はガクガクと揺れていました。


その一瞬前まで、くろは
今までの人生で初めてといっても良いくらいの
大きな喜びの中にいました。
自分の事をとても誇らしく、思っていました。
でも、そのお母さんを見た瞬間、
現実を叩き付けられました。

そのギャップがあまりにも大きく、
全く身動きができなくなりました。


乳飲み子を背負ったお母さんは、
そのままずりずりと坂を上っていき、
やがて視界から消えていきました。

その後、あの親子がどうなったのかは分かりません。
でも、無事に生き延びているとは到底思えません。
健常者でさえ生きていくのがやっとの国でしたから。


それから、くろは悩み始めました。

本当にこの仕事を続けていって
死ぬ瞬間に後悔しないだろうか。

自分はこの世に生を受けて
一体何を為すべきなのだろうか。


確かに経済は大事だと思います。
この世を動かしているのは、
思想でも宗教でも政治でもなく、
やはり「金」だと思います。
金は常に流通させる必要があります。
水の流れが滞ると、水が腐るのと同じです。
お金を流通させるというのは、
現代社会に於いてとても大事な仕事です。

でも、自分の一生を本当にそこに捧げていいのか。
自分は本当に人間としての満足感を
得られるのだろうか。

その会社が好きで、
一緒に働いている人達も大好きだったくろは、
本当に悩みました。

考えても考えても結論は出ません。

その間ずっと、
両足のないお母さんがいつも頭の中に
つきまとっていました。

そして2年後、
ようやく、会社を辞める決心をしました。


アンゴラという国は、
本当はとても豊かな国でした。
金・ダイヤ・石油・果物・水産資源
何をとっても豊富で、
本当はとても裕福なれる国のはずです。
なのに、GNPは年間わずか500ドル/人、
世界最貧国の一つでした。

なぜ、人々は貧しく、苦しんでいるのか。
それは、殺し合いが行われているから。

ではなぜ、人々は殺し合うのか。
それは、心が貧しいからだ、と
くろは思ったのです。


いくら資源が豊かでも、
こころが豊かでなければ、
幸せにはなれない。

言葉で言うのは簡単ですが、
馬鹿なくろは、そこにたどり着く迄に
2年を費やしてしまったのです。


それから、
こころを育むような職業に就きたい、
と職を探しました。

そして今、
くろはマスコミの仕事をしています。


「今の世の中にこれを問いたい」
「今の世の中にこれを問うべきだ」
と思う事を、
実際に自分が制作したものを通じて
世の中の多くの方々に
訴える事ができる職場にいます。


ここまではいいんです。


問題はここからです。


昨日の映画を見て、
くろは自分のスタンスに
疑問を持ち始めてしまいました。

ひさしぶりに、
あのお母さんを思い出してしまったのです。

高い理想を掲げて転職したはずなのに、
人の心に近い仕事がしたいと思ったのに、
自分はそれができているのだろうか。

口先だけ、理想論だけの人間になってはいないだろうか。

俺は、俺に現実を教えてくれた、
あのアンゴラのお母さんに
恥じない人生を送っているのだろうか。

これが、本当に俺の天職なのだろうか。

いつか自分の人生を振り返る時が来たとき、
真の満足感を得られる日々を過ごしているのだろうか。



俺の頭の中を、
両足のないお母さんが
今日もずりずりと這い回っています。

「ありがとう、
 あなたが俺の人生を変えてくれたんです」って
お礼を言いたいけど、

「もう、そんな苦労はしなくていいんですよ」って
俺がおぶってあげたいけど、

現実には、
もう多分生きてはいないお母さん。

両手だけで、
これからもずっと、
俺の心の奥底を、
這いずり回り続ける事でしょう。

そしてそれが、
俺が「生きている」ということの
証明なのかもしれない。

自分の無力さを痛感する事だけが、
俺が唯一できる事なのかもしれない。



お母さん、




お母さん・・・





俺は、一体、
どうやって生きていけばいいのだろうか。





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最終更新日  2006年02月09日 00時27分20秒
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