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2012年12月06日
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カテゴリ: 言葉
「とまと」「しんぶんし」「たけやぶやけた」 など、 上から読んでも下から読んでも同じ意味となる文を「回文」 といいます。

小さい頃、「手袋の反対な~んだ?」と聞いて、「ろくぶて」と答えさせ、六回たたいて遊んだ(かなり理不尽な展開ですが) 「逆さ言葉」 に近いですが、少し違います。

「回文」=「和歌・連歌・俳諧などで、上から読んでも下から読んでも同音のもの。回文歌・回文連歌・回文俳諧などの称がある。」(『広辞苑』第六版)


平安時代の和歌から連歌、俳諧へと受け継がれた 長い伝統を持つ「ことば遊び」 です(三十一文字を上下同じ音で構成するのはかなり難しいです)。


今回は 「ことば遊びクイズ」の題材 として 回文 を使ってみたいと思います。

問題は4題で、初級から上級までです。

第1問【初級】

藤原隆信(1142~1205) は、「草花を詠む古歌」として、次の回文歌を詠んでいます。

次の空欄(い)~(は)にそれぞれ二文字を入れて下さい(必要があれば濁音も答えて下さい)。

制限時間は1分間です。


1 むらくさにくさのなはもしそなはらは(い)しも(ろ)の(は)にさくらむ



(答え)

(い)「なぞ」(ろ)「はな」(は)「さく」


漢字をあててみると

「むら草に草の名はもし備はらば何(な)ぞしも花の咲くに咲くらむ」(下から読んでも同じ)

(群生する草々にそれぞれ名が付いているならば、どうして花がこんなにたくさん咲いているのだろう。)

遊びながら和歌を解釈する勉強になったのではないでしょうか。それにしても、三十一文字という多くの文字列をうまく組み合わせたものです。 和歌の意味がきちんと通っています 。



第2問【初級】

近世俳諧の 「回文句」

目をとめよ梅(むめ)かながめむ夜目遠目   重貞(『毛吹草』「廻文之発句」正保2〔1645〕年刊)

交野見つ鳥と小鳥とつみの鷹         重頼(『毛吹草追加』「回文之百韻」正保4〔1647〕年刊)

冷えの気(け)寒く酌む酒の酔ひ       重方  同 上





では問題。同じ『毛吹草追加』より、重貞の句です。


〔  〕に文字を入れて下さい(文字数も考えて下さい)。

2 照りて来つ西に真西に〔  〕

(ヒント)十七文字の「回文句」です。


(答え)      

「つきてりて」→「月照りて」
ですが、「照ってきた、西に、いや真西に、月が照って」と、何だかこの 句自体が「ことば遊び」のようなリズム の良い句です。俳諧の場合、リズム感も大切な要素だったのでしょう。



第3問【中級】

先の藤原隆信(1142~1205)の私家集『隆信(たかのぶ)集』から「廻文歌」(五首のうち一首)です。



制限時間は1分間です。


3 しらなみのたかきおとすら(い)はかならすとおき(ろ)のみならし

では次に、適当な漢字をあてて歌の意味を考えてみて下さい。



(答え)

(い)「しらはま」(ろ)「かた」


漢字をあててみると

「白波の高き音すら長浜は必ず遠き潟のみならし」 (下から読んでも同じ)

(白波の高い音を聞くだけでも長浜はきっと遠くまで潟が続く浜であるだろうとわかる。)

今回は文字数を隠したため【中級】としました。かなり難しかったと思います。
「とおき(遠き)」は、歴史的仮名遣い「とほき」です。 回文は「発音」が優先で「仮名遣い」は、さほどこだわっていないものが多いです 。もっとも「仮名遣い」にこだわるのは中世以降で鎌倉時代の「定家仮名遣い」も厳密なものではないと評価されています。
白浪の音から「長く続く浜」を思う、叙景の歌です。しかし、よく考えると「波の音で浜の長さが分かるのだろうか」とは思います。そこは 「意味が通る」だけでも立派な「回文歌」 と認めるべきでしょう。


第4問【上級】

「ことば遊び」歌では定評のある「頓阿」の歌から「回文歌」を見てみましょう。

『続草庵集』(連歌を約六六〇首(句)収める。14世紀中頃に成立。)からです。

次の空欄(い)(ろ)にそれぞれ文字を入れて下さい(文字数も考えて下さい)。

制限時間はなしです。


4 とくたたし(い)のたかむら(ろ)しろしきゆらむかたの(は)したたくと

(ヒント)「たかむら」は竹藪。どこかの竹藪に白いものがかかっている情景です。



(答え)

(い)「さと」(ろ)「ゆき」(は)「とさ」


漢字をあててみると

「疾(と)く立たじ里の篁(たかむら)雪白し消ゆらむ方の閉ざしたたくと」(下から読んでも同じ)

(早く出発するまい。里の竹やぶに雪が白くかかる。その雪が消えているらしい方の閉ざされた戸をたたこうとし

て。)

(い)と(は)が回文の対応する言葉の表裏になっているため、かなり難易度が高い問題です。
何となく意味深な歌ですが、「雪が消えているだろう閉ざされた家」の意味がはっきりしません。 「頓阿」さんの「頓智」なのか 、考えさせられる歌です。


では、最後に 有名で縁起の良い回文 をご紹介しましょう。

正月二日夜の初夢に、吉夢をみるため七福神の宝船の絵を枕の下に置く風習がありました。その絵にこの回文歌が書かれていて、三度読んで寝ると吉夢になると信じられていたそうです。江戸時代中期以降の文献に見られます。


『宝船』の回文歌

なかきよのとをのねふりのみなめさめなみのりふねのおとのよきかな

もうすぐお正月、いい 「初夢」 を見たいものです。

意味が明確でない部分があり、特に「とをのねふり」がはっきりしません。「遠の眠り」で深い眠りとするものが多いですが、一説に「十の眠り」で「十人が舟で眠る」とする解釈もあります。

漢字をあててみると、

長き夜の遠の眠りの皆目覚め波乗り船の音の良きかな

「長き夜の眠り」「目覚め」「音の良きかな」などの字句が縁起の良い響きゆえ採用されたのでしょう。さらに、それが 「回文歌」であったがために流行したことも考えられます。「上から読んでも下から読んでも」の面白さ、楽しさと、「どちらからでも」という目出度さがうけたのではないでしょうか 。

回文が日常生活に入り込んでいた江戸庶民。私たちも 「遊び」の楽しさを忘れずに、眠りにつき、明るい生活を送りたいものです 。

じっくり考えると難しい「回文」ですが、頭のトレーニングとともに懐かしい子どもの頃の「遊び心」を思い出させます。

こうした 「回文」は「逆さ言葉(倒語)」へと結びついて、さらに「ことば遊び」の世界と広げていく こととなります。

「逆さ言葉」の世界 についても、のちほど面白いものを取り上げていきたいと思っています。





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Last updated  2012年12月06日 19時51分26秒
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