まいかのあーだこーだ

まいかのあーだこーだ

2023.07.24
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口々に夕立のこと路線バス 驟雨過ぎ海の詩集を買う港 750ccの飛魚の如大夕立
プレバト俳句。
お題は「夕立」。




キスマイ千賀。
驟雨過ぎ海の詩集を買う港


ワンランク昇格だそうですが、わたしならボツ。
意味は分かるけど、ゴチャゴチャしすぎてると思う。

主語と述語の関係が煩雑だし、
内容面では「水」の情報が重なりすぎてます。




体言止めにして述語を省略することも出来るけど、

その結果、
書いている本人でさえ、
主語と述語の関係を自覚できなくなったりします。
この句は、まさにその典型だと思う。

これは切れのない一句一章なのですが、
文の構造としては、
驟雨が過ぎて 私が 海の詩集を 買う 港がある
驟雨が過ぎて 私は、 私が 海の詩集を 買う 港に 来た
…といった意味になります。

つまり、ひとつの短い文の中に、
主語と述語の組み合わせが3つもあって、
無駄に煩雑な構造をしているのです。


(主語や述語を省略しているせいで)
作者も、評者も、その煩雑な構造に無自覚なのです。



本来、この内容であれば、
主語・述語の組み合わせは1つか2つで済みます。

たとえば、
A「驟雨の後に、 私は 港で海の詩集を 買う
B「驟雨の後に、海の詩集を売る 港がある



C「 驟雨が過ぎ 私は 港で海の詩集を 買う
D「 驟雨が過ぎた 港で、 私は 海の詩集を 買う
E「港の 驟雨が過ぎ 私は 海の詩集を 買う

としても主語・述語は2組で済みます。

かりにDやEの構造で俳句をつくるなら、
驟雨過ぎし港 海の詩集買う
港に驟雨過ぐ 海の詩集買う

…のような二句一章の17音にできますし、
そのほうがはるかにシンプルです。



かたや内容面でいうと、

この句の季語は「驟雨」なのですが、
それ以外にも「港」「海」と水のことばかりです。
せっかく雨が止んだのに、
また《水のある場所》で《水の本》を買うってのが、
何ともしつこくて湿っぽいと思う。

音韻面で「s」を重ねるのは良いとしても、
内容面で「水」の話ばかり重ねたら、
季語の印象がかえって埋没してしまうのでは?



ちなみに余談ですが、
千賀は「オマージュ」と「マリアージュ」の区別がついていない。
そういうところも、俳句で見せる語彙とのギャップに疑念を生じさせます!




森口瑤子。
口々に夕立のこと 路線バス
口々に乗り来 夕立 ゆだち の路線バス
(添削後)

わたしは原句のほうがいいかなと思う。
添削句は、やっぱり主語の省略に無自覚なのでは?

一般に、
「口に乗る」とか「口々に乗る」という述語を見たら、
その主語は《噂》や《話題》だと考えるはずなので、
「夕立の路線バスの噂が人々の口に乗って来た」
…みたいな誤読になりかねません。

しかし、添削者が省略した主語は《人々》です。
「人々が口々に (何かを言いながら) 乗って来た」 ってこと。
では、口々に何を言ってるのか? そして何に乗って来たのか?
それも明示されてません。目的語も補語も省略されている。

そこまでを察してようやく、
後段に目的語や補語のヒントを見つけることになりますが、
主語も目的語も補語もすべて省略して、
読み手にそれを察しろってのは、いささか無謀なのでは?



なお、
原句は「夕立が去った後」の場面を描いていますが、
添削句は「今まさに夕立が降っている」という場面なので、
原句と添削句では情景も違っています。

すなわち、
原句では季語が「過去の話題」になってるので、
添削句ではそれを「現在の実景」に変えたということ。
そこにこそ添削の意図があるのかもしれません。

とはいえ、
千賀の描いた「驟雨の後」にしろ、
森口の描いた「夕立の後」にしろ、
それ自体を子季語と見なすことは出来るだろうし、
かならずしも季語の鮮度が低いとは思いません。



千原ジュニア。
750cc ななはん の飛魚の如 ごと 大夕立 おおゆだち
750ccは飛魚 夕立の湾岸線
(添削後)

原句は直喩ですが、
添削句では隠喩に直しています。

斬新な比喩の場合は、
直喩にしないと読み手に伝わらないかもしれませんが、
「雨の中を走るバイクは飛び魚のようだ」
という程度の比喩なら、
隠喩でも十分に伝わるってことでしょうね。
(悪くいえば「直喩にするには凡庸すぎる」ってこと)





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最終更新日  2023.07.24 10:20:05


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