ウンとかスンとか mamatamの日記

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2013.04.25
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カテゴリ: 読書
昨日中途半端に書名だけを挙げた、佐藤雅美著『へこたれない人』、


同心というと、着流しに巻き羽織、小銀杏の、いわゆる定廻りが
頭に浮かぶけれど、このシリーズの主人公藤木紋蔵は、同じ同心
でも、例繰方(れいくりかた)という内勤のお役人です。
それというのも、この紋蔵さん、15歳で南町奉行所に採用された
のは良いけれど、実は、ところ構わず居眠りをする奇病の持ち主
で、危うく馘首になるところを、腕利きの定廻り同心だった父親が
仕事中に不慮の死を遂げたことに免じて、内勤の例繰方に配属

以来30年余り、裁判を記録して判例集を作り、また以前の判例
を調べて判決を下書きをして来ました。
平穏無事な毎日のはずですが、紋蔵さんの周りにはなぜか
事件が起きます。上司や知り合い、同僚たちは、彼には事件を
解決する独特の才能があると感じています。

今回は、結婚して、娘が生まれたばかりの紋蔵の長女稲の夫が
病に倒れて急死するというショッキングなエピソードで幕が
開きます。
後継ぎを決めずに家長が死んでしまうと、その家は断絶してし
まいます。そこで、紋蔵の上司でもある稲の義父は、息子の
死を届け出る前に、紋蔵の養子で13歳の文吉を稲の養子とし、

文吉の許嫁とすることを決めます。
文吉には、将来を誓った娘ちよがいます。評判の美少女で、
文吉とは相思相愛だったはずなのですが、前作で、ちよは、
ある大名家から、殿の落とし胤であると言って迎えに来た籠に
文吉には一言の連絡も説明も残さず乗って行ってしまいます。

のですが、この事で文吉は、ちよに不信感を持つようになり、
ちよとの別れを意味するこの養子縁組に同意して、急死した
稲の夫の職を継ぐべく活動を始めます。
その中で、旗本夢野夢之助と出会います。夢之助さん、実は
さる大名の三男坊。分家して旗本になり、お嫁さんも迎え
ますが、背が低くてイケてない容姿のため、姫さん曰く「親戚
一統の集まりにみっともなくて顔を出せない」と、逃げられて
しまいます。
夢之助さんは悔しいので、パパであるお大名に頼んで、家中一
の美人と再婚。すると、お姫さんは怒って、雨が降ると、水が
あふれて夢之助さんのお屋敷にみずが流れ込むような池を
作ってしまいます。夢之助さんの家と姫さんの藩のお屋敷は
隣同士なのです。
抗議しても知らん顔をされて怒った夢之助さんの藩では、対抗
して、姫さんのお屋敷の門の前の空き地に、物干し場を作り、
姫さんの出入りの際にも目に入るように、上屋敷や中屋敷から
もかき集めた黄ばんだ褌や汚れた下着を干しまくり、今や両家
の軋轢は泥沼状態です。
それを解決に導いたのは、文吉の何気ない一言でした。

夢野夢之助さん、なかなかいいキャラしています。
でも、タイトルのへこたれない人は夢之助さんではありません。
それは山本庄蔵さんという小役人です。
これが、なんとも鬱陶しくて、可笑しなオジサンで。。。

まあそういえば、この紋蔵シリーズに限らず、佐藤雅美作品
には、とにかく煮ても焼いても食えない、厚顔無恥を絵に描い
たような、とんでもない奴が山ほど登場します。
それを、主人公たちが、そう来たかと呆れるような奇想を
あやつって、うまく解決してしまうというのが、佐藤作品の
醍醐味です。

紋蔵顔負けに資料、史料を当たり、下調べをして、薀蓄という
一言ではくくれないほどの知識と、洞察力を持ち、なかなかの
皮肉屋さんでもあるらしい佐藤さんの横顔も垣間見えます。

それらの厚顔無恥なトンでもオジサンたちは、ありきたりに
勧善懲悪っぽくやられてしまったりするわけではなく、大抵、
悪い奴ほどよく笑うみたいな感じで、有り得ない性格の悪さは
そのまま、けっこういい目を見たまま、お話は終わりになった
りするのです。
世の中って、得てしてこんなものよねみたいな。。。

今回の山本庄三さんも、得手勝手な屁理屈を並べ立てて、自己中
丸出しのまま一冊が終わるのかと思っていたら、なんとびっくり
の、侠気と人情を見せてくれて、いつになくさわやかな読後感、
読んでいる間にも、なんだか心洗われるような快さでした。

佐藤雅美さんには、何人かのシリーズキャラクターがいますが、
中でもわたしはこの紋蔵さんが一番好きです。
そして今回は、稲さんや文吉くんの運命が急転回、紋蔵家の
跡取り問題も再燃しそうだし、いろいろ楽しませてくれそうな
夢之助さんの登場もあり、楽しく読みました。

ええっ、そう来る?ひぇえ、そんな考え方ってあり??と
読みながらつっこみたくなるような登場人物が次々と現れ、
常識をぶち破ってくれる(?)この短編集、シリーズ作品を
未読の方でも、独立した作品として読んで、十分楽しめると
思います。





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最終更新日  2013.04.25 01:46:05
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