ウンとかスンとか mamatamの日記

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2019.12.18
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カテゴリ: 文楽
12月14日土曜日、先週に引き続き東京国立劇場にいきました。

14時開演なので、半蔵門線に乗る前に軽くお昼をしておこうとパン屋さん 「浅野屋(錦糸町テルミナ店)」 のイートインスペースへ。
このお店の食パンとかフランスパンが好きでたまに買うのですけど、この日はサンドイッチとアップルジャムのたっぷり入った紅茶を戴きました。サンドイッチもパンが美味しいので格別です。
でも先を急ぎますので、ゆっくり味わってもいられず、ササッと食べて地下鉄に乗りました。
半蔵門に着き、電車を降りようとドアの前に立つと、ホームドアの向こうに見覚えのあるお顔が見えました。
なんと、前の日記に書いた人形遣いの吉田玉男師匠、午後の舞台には出演されないので、今日はもうお帰りのようです。
玉男さん、とってもオトコマエでいらっしゃるのですけど、お顔をまじまじ眺めたりなんか致しません!

そう言えば、吉田玉女さんだった玉男さんが、師匠の初代吉田玉男さんのお名前を継がれた二代目吉田玉男襲名披露の公演の演目がこの一谷嫩軍記でした。
その頃わたしはブロ友のnaominさんに誘って戴いて文楽を見始めたばかり、まだ2回目か3回目だったでしょうか、何もかも目新しくて、文楽の理不尽な筋運びすらすごく新鮮で、というか、毎回「え~~びっくりなんでそうなるの」と思うばかりで、居眠りするどころか、最初から最後まで目を爛々と光らせていたことを思い出します。
考えてみると、翌年の国立劇場開場50周年記念公演の出し物も一谷嫩軍記でした。
この時は40年振りという初段、2段目、3段目の通し狂言でした。(一谷嫩軍記は、実は五段目まであるのですが、三段目までが並木宗輔の作品、しかも絶筆ということもあって、その後の段(別の戯作者が書き足したものだそうです)とは別扱いなんだそうです。

一谷嫩軍記は、平家物語の「敦盛最後」にも描かれた、一ノ谷の合戦で熊谷次郎直実が無官太夫敦盛を討った物語です。
源氏の侍大将熊谷次郎直実が、弱冠16歳の平敦盛を討ち取ったことで世の無常を悟り出家したという話は世に広く知られ、能や舞にも(のちには小学唱歌にも)なっていました。
この物語を、戯作者並木宗輔が、直実が首を刎ねたのは平家の公達敦盛ではなく、敦盛と同じ16歳の我が子、小次郎直家 全く違うお話に作り変えてしまった、それが一谷嫩軍記でした。
三段目での衝撃のどんでん返しに、この時代の観客たちはどれほど驚いたことでしょうか。

しかも、横恋慕する平山何某に刺され近くの物陰に倒れていた、敦盛の妻である玉織姫が直実の声を聞いて瀕死の状態であらわれ、「もう目も見えない!」と言いながら刎ねられた敦盛の首を掻き抱いて息絶えて、観客は若い二人の悲恋に涙を絞り。。。結果、彼らの中で敦盛の死は確定事項となります。
でも、実はその時彼女は「目が見えない」のです。これが伏線で、三段目に見事回収されるわけです。
更には、桜の若木の前に義経が立てさせた「この桜の枝を切ってはならない」という制札の文言「一枝を切らば一指を切るべし。」、これに込められた義経の命令・・・若木を敦盛に見立て、彼を斬るのなら一子を切れ・・・も熊谷によって三段目で解き明かされます。
とはいえ、それだけだったら当時の人たちでさえ、「なんてむごい命令!」とか「主に命令されたからというだけでわが子を殺す親がいるだろうか?」などと反感や疑問を持ったに違いありませんが、そういう観客も納得させてしまうような伏線が、やはりお芝居の初めに仕込まれています。
それは敦盛の父経盛が実は敦盛は後白河法皇の落胤であると明かす場面です。

それを知った義経は敦盛を討ってはならないという命令を熊谷にこの制札で伝えたということ、もちろん熊谷もそれを知ったから、泣く泣くわが子を討ったわけなのです。
現代のわたしたちにはわが子を殺す理由にはなりませんが、当時の人たちは納得したのでしょう。
熊谷直実が出家するのも、敦盛を切ったからではなく、実は主の命令とは言えわが子の命をわが手で絶ったことが理由なのだと、改めて深く頷いたことでしょう。
こんな風に、あちこちにたくさんの伏線が張られ、のちにそれがしっかりと回収されていて、まるで良くできたミステリーのような作品です。
細部までシッカリ作りこまれていて、ここまでされたらもう何も言うことはない、気持ち良く騙されておこうと、わたしが当時の観客でも大きな拍手を贈ったことだろうと思います。

さて、今回の一谷嫩軍記です。
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拡大して見て戴くとわかりますが、今回の舞台は小次郎直家の出陣から始まっています。
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これが直実、今回の舞台では吉田玉助さんが遣っています。
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こちらは襲名披露公演の時の吉田玉男さんの熊谷です。
義経の首実検を受けようと、敦盛と偽って小次郎の首を持って本陣に行こうとしているところに、義経が熊谷の陣屋に首実検をしに来て、熊谷がご命令通りにしましたよと示すために制札を引き抜くという場面ですね。
この後、出陣の支度をすると言って裏に入り、出てきた時は、墨染の衣で有髪の僧の姿となり、有名な「16年は一昔。夢であったなあ」というセリフがあるのですが、ここは、3度目の今回もやはり胸が熱くなり瞼がじわっとしてしまいました。





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最終更新日  2019.12.19 15:05:33
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