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2004.05.12
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カテゴリ: カテゴリ未分類
え~最近巷ではこういう企画が進行してるようで、先日移りゆく季節の狭間さんから彼女の次にと指名を頂きました。

実を言うと、季節さんの前にちゃとさんにもご指名を頂いていたのです。しかしテーマが漠然として何を書いて良いのか頭に浮かばなかったこと、そしてその他の事情により一度はお断りさせて頂いていたのです。しかし人に頼まれたことを断ると言うのは、どっか心に引っかかるところを残したのも事実でした。

そんな折り、ちゃとさんの後に続いた季節さんからまたもやの指名。う~ん、これはもう目に見えない力が書け!!と言うことなのだなと変に納得してしまいました。季節さんには壁紙も作ってもらって世話になってるし・・。

しかし後で考えたら、このちゃとさんと季節さんは凶暴、いや共謀して、上手く乗せられたのかなとも思いましたが、まあそんな事はどうでも良いことなので、思いつくままに書かせて頂きました。

ちゃとさん、断ったりしてごめんね。

読み返してみると、心の帰る場所と言うよりは、単に小さい時の思い出話のようになってますが、まあ今更後戻りは出来ん・・と言うことで、こんな感じで終わらせて頂きたいと思います。

ごたくが長くなりました。
では、リレー日記「心の帰れる場所」悠々編です。

~~**~~~~**~~~~**~~~~**~~~~**~~

そこは盛り場に近かったが大きい道から1本内側に入っており、割合と閑静な住宅街であったと記憶している。

母はそこで美容院を営んでいた。東京の美容学校まで勉強に行った美容師は当時としては珍しかったようで、僕が生まれた頃、我が家には住み込みのお弟子さんが数人にて、僕の子守は彼女たちや、同じ町内に住む祖母にゆだねられる事も多かったようだ。

そんなお弟子さん達も徐々に独立していき、僕が小学校へ上がった頃からは母が一人で店をやるようになった。
店は「それいゆ」と言う名前で、これは母親に確かめたらフランス語で太陽という意味だそうだ。店の入り口の向かって左側には、煉瓦で区分けされた小さな花壇があって、キンモクセイやあおぞら?と呼ばれていた観葉植物が植えられていた。右側には業務用クーラーを回すための小さなモーターポンプがあり、そのクーラーポンプから流れ出る冷たい水が夏の間毎日小さな溜まりを作っていた。

美容院というお客さん相手の仕事をしているので、こちらの日常生活はそれに合わせて不規則となる。学校へ行く普段はあまり気にならないが、夏休みなどで朝から家に居る時には、お昼になってもご飯が出来ずにお腹が空いてくると、仕事場へ入って行き母親に空腹を訴えることがあった。

そんな時にはよく「お腹が空いたのなら卵ライスでも作って食べて置いてね」と母親はそっと言った。「卵ライス?ハイカラな美味しそうな名前ねえ。どんなご飯なの?」とよく頭にカーラーを巻いたお客さんに聞かれたが、僕は恥ずかしくて答えずに奥に引っ込んでしまった。

卵ライスとはこんなご飯である。西洋皿にご飯を入れる。その真ん中に軽く窪みをつけてその中に卵を割り入れる。上からかつお節を振る。そしてお醤油をかけてかき混ぜてスプーンで食べる。何のことはない、卵とじと猫マンマを合わせたようなご飯である。お茶碗で作らずに西洋皿で作るのがハイカラに「ライス」と呼ばせる所以だったのであろう。

それは食事を作るのに忙しい母親が、僕のような子供でも簡単に作れて火を使わない、そして栄養のある料理は何かと考えたのだと思う。今と違って、卵は完全な高栄養食として脚光を浴びていた時代であった。
あったかいご飯の湯気に溶け込んだオカカの香りが食欲をそそる。卵のまろやかさがオカカの舌に触る感じを少なくしている。手をかけた豪華なご飯ではないが、僕はこのメニューが決して嫌いではなかった。
卵ライスを食べ、冷蔵庫に冷やしてある麦茶を飲んで、セミ捕りの網やザリガニ捕りのバケツを持って、僕は午後の町へ飛び出していった。

小学校高学年の頃は、更に忙しかったのか夜になっても食事の準備が出来ていないことが多かった。そんなとき、食事はどうするの?と仕事場に入っていって聞くと、鶏肉を買ってきてとよく言われた。


買ってきた鶏肉を前に母親は何を作ろうか考えている。具体的に何を作ろうと思って買ってこいと言ったのではないのである。夕食のメニューもじっくり考える時間が無かったのであろう。ふ~っとため息をつくこともあった。恐らく疲れていたのだと思う。今になってふと、この頃って父親との仲が悪かったんじゃないか?などと思った。

この鶏肉は、たいていはバター焼きや塩焼きになって、茹でた野菜やトマトが横に添えられたおかずになった。鶏肉を焼くと縮んでカサが小さくなるので、子供心になんか損をしたような気持ちになった。カレーやシチューのようなカサの増えるおかずが食べたいなあなどと、子供心に勝手な事を思っていた。

母親は僕が6年生の時に子宮筋腫で手術をした。それからは以前のように体力が無くなったのか、それともこの仕事特有の持病である腰痛に悩まされていたのがひどくなったのか、予約の常連さんぐらいしかお客をとらないようになった。以前に比べると店は静かでひっそりとした雰囲気が漂うようになった。
僕は中学に入る前の頃から、ラーメンやチャーハンなど、火を使って作る料理を教わって、お腹が空いたら自分で何でも作って食べるようになり、両親は土曜や日曜の夜には、「あんた勝手に何でも作って食べてね」と言い残して二人でお出かけするようになった。

この「それいゆ」は僕が高校生になった時に無くなった。


新しい家は、周りにまだ家が多くないこと、母親の腰も悪いことなどの理由からもう美容院はやらないと言う夫婦の決定があったと聞く。
そして、まだ引っ越しまで1年ぐらいを残して、母親の腰の悪いのを見かねた父親が勝手に廃業届けを出してしまったらしい。このことで二人はかなり激しい喧嘩をしたそうだ。

引っ越し後しばらくして、「それいゆ美容室」があった前の家は取り壊された。母は自分の心の中の一部が無くなったような気分になり、悲しくて泣いたそうである。
取り壊された後は駐車場になった。車がようやく2-3台入るだけの小さな敷地であるが、近所の旅館に貸し出されて、その料金は母親の小遣いになっている。

現在は市内の空洞化のせいで、周りのご近所さん達も殆どが居なくなり、僕の生家のあった近辺は駐車場だらけである。両親が夫婦げんかを始めると、僕はいつも同じ町内に住む祖母の家へ走っていき、祖母の部屋の雨戸をコンコンと叩いたものだが、その僕を可愛がってくれた祖母がもう15年ほど前に亡くなってからはこの近辺へ行く機会もめっきりと減った。

新しい家の庭で僕は大学生の頃まで母に髪を切って貰っていた。
今、3人の孫に囲まれた彼女は、僕らが頼んでも孫の髪の毛は触ろうとはしない。実家の洗面台の隅っこに置かれた散髪用のハサミは、母と共にひっそりと年を重ねている。
自動車にも自転車にも乗れない彼女は、父をお抱え運転手として毎日を楽しんでいるようだ。

飲み会でこの町の歓楽街を彷徨った後、時々思いついてその家にあった裏通りへ入ってみる事がある。街頭の灯りに照らされてコンクリートの地面が白っぽく光っている。目を閉じてみると暖かいご飯の湯気に混じった卵ライスのオカカの匂いが漂ってくる。夏に足をつけ、顔を洗ったクーラーポンプの水たまりのひやっとした感触が蘇ってくる。秋の空気に溶け込んだ甘酸っぱい金木犀の香りが流れてくる。ああ、ここに僕が住んでいた家があったのだと思う。

そして目を開け、自分が今住んでいる場所、そこしか無い、家族が居る場所へと帰っていくのだ。

~~**~~**~~**~~**~~**~~**~~**

え~、それではお友達を紹介してくださいと言うことで、
僕の次はいつも女性らしい爽やかさの中に、一本筋の通った日記を書いてくれる yokko_888さん にお願いしました。
yokkoさん、よろしくね。







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Last updated  2004.05.13 01:15:47
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