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週末の予定に少し不安を覚えた。金曜は鳴門市。土曜は東かがわ市。その間に高知市内での1ステージ。人生の楽しみの一つ、睡眠時間をまた削らないといけない・・・。金曜日。鳴門市に9時到着予定だと6時半には出発しないといけない。2時間半の移動にはいつものSOUND HORIZONをかける。歌が物語りになっているSOUND HORIZONは聴くだけで時間を忘れさせてくれる。午前は老人介護施設「鳴光荘」、午後は「あい愛診療所」での大道芸。ご老人を前にしてのショーは力が入る。おしゃべりもおばあちゃん達に合わせたスローなテンポで。楽しんでもらえたかな・・・。土曜。本来のスケジュールだった東かがわ市のちびっこランド。後日、急遽中央公園前でのハロウィンイベントのショーの依頼が入る。ちびっこランドは17時着予定だからいいか・・・。14時からのショーは会場前のパレード行進やピンマイクの不調で10分遅れ。マイクについてはステージ上で音声がブツブツ切れてしまいどうにもなんない状況に。なかなかショーが始められず、イベント内の空気も微妙な感じに。お客さんからは「マーさんガンバレー!」の声援。僕はいいんだけど音響さんが超あせってます。結局ハンドマイク片手でショースタート。ジャグリングって片手使えないとどうにもこうにも上手く流れが作れない。なんとかショーをこなしてるとスタッフが「終了してください時間です」の紙をこっちに向ける。え゛?10分短縮された挙句、次の出演者までまだ30分の空白時間あるのにオンタイムでステージ終了?納得いかねぇ・・・。ハァ、最後のファイヤージャグリングをカットし、お客さんには「ごめんねー」と挨拶しステージを降りる。控え室でスタッフ平謝り。終わった事だしもういいっすー。時間が無い。荷物をまとめ即移動!17時前に東かがわ市に到着。遠い。保育所のハロウィンって事で夜の仮設ステージでのイベント。出演時刻には少し時間があったので念入りに準備。さっきのショーのイライラを巻き返せねば。2時間ほどしてショースタート。ジャグリングは少なめに、バルーンに時間を割いて大量に作る。怪獣だガオー!スティッチだうりゃー!プルートだおりゃー!グーフィーだそりゃー!お客さんもその度に「おおおおお!」と大歓声。ナントカやり切りました。ステージを降りた所であるお母さんに「感動しました!」と声を掛けられる。ははは。その言葉ありがたく頂戴いたします。素直に嬉しかったです。無事この日のイベントは終了。さて、帰るとするか・・・。車の窓を開け気持ちのいい東かがわの夜風を受けながら高知に向けてアクセルを踏むのでした。
October 29, 2006
大学が九州の西日本工業大学という事でいつか出身大学の学園祭にお邪魔して大道芸を披露したい・・・。今でも思っている夢です。九州の大分県から出演依頼が来たときはただ「遠い」と。でも思い入れのある土地、九州。フェリー乗り場より近いし愛媛八幡浜から乗ってしまえばすぐだしって事で受けました。大分市坂ノ市、亀塚古墳で行われた海部のまつり。今回は親が付いて行きたいってんで親同伴です。予定として朝に会場に着いた後、両親は湯布院観光。夕方にまた合流って感じのスケジュール。が・・・フェリーの時間を見計らうと朝2時半起きの3時出発。会場に到着したのは6時間後の9時でした。亀塚古墳を会場にした大きなイベントでマジシャン一周さんやバンド演奏、ダンスなどなど。最高にイイ天気で午前中にバルーンを少々。屋台で串焼きを頬張りつつ午後の準備に。ここでスケジュールが10分早まるとの連絡が。「えええええ?」遅くなるのは良いけど早まるのは困るぅ!結局5分遅れでスタートしました。ステージに上がってアクシデント!!!アンプの送信、受信電波のチャンネルを前回のイベントで変更してたのを忘れてた!!げげげげげ!今更合わせられない!!すでにステージ立ってるし!!急遽、ハンドマイクでショーを行う。まぁまぁの盛り上がりだったけどピンマイクが使えなかっただけに悔やまれる・・・。情けない。大きな悔いを残したままのイベントでした。いつかこの借りを返しに来てやる!!来年また呼んでくれるかな・・・無理っぽい。トホホ。
October 22, 2006
大洲の河辺ふれあいフェスタにお邪魔しました。さて、大洲あたりに出かける場合、高速使って川之江周りで行くかそのまま最短距離で山の中を突っ切るか悩む・・・。カーナビは最短距離でルート検索するので結局山の中を突っ切ることにしました。が・・・さすが四国山地を越えるとなると想像以上の山道で森に囲まれた山道では衛星電波が届かずカーナビ使用不能。途中落石を撥ねる。ぐあぁ!!バンパーがぁ!!空が見えるタイミングで電波を拾い拾い目的地まで向かいました。暇な運転中はSOUND HORIZONを聞きつつ3時間で到着~。坂本龍馬が脱藩した際、通った土地だそうで龍馬ゆかりののどかな地域でした。でも多くの人が集まったお祭りで盛り上がりは最高!午前にバルーンショー。前日のトラブル(10/16日記)を引きずりながらもショー事態は最高の盛り上がり。バルーンの「何作ってるかあてっこ」ではヒントの出し方が楽しくってディズニー系のキャラクターを作ってる時に『ヒントとしては・・・ん゛ん゛ん゛ん゛、ん゛っん゛(ドナルドダック)かなぁ・・・わかった人!!』と口を閉じて発音。子供達は「ミッキーマウス!!」『えー?ミッキーは ん゛っん゛ーん゛ーん゛(ミッキーマウス)じゃん!』といったやりとりが(笑)そして最後にバルーン70本使ったクラシックカーを作る。こういった巨大なモノをショーの中で作るのはインパクト大でかなり有効です。バルーンパフォーマーの皆さん、是非!準備に3時間かかるけど・・・。そして午後はジャグリングショー。晴れた空にディアボロ飛ばすの最高に気持ちいい!!ショーの後、会場内で色んな物を食べ、のどかな一日を過ごしたのでした。でも山あいの土地ってホント川がキレイなのよね。またお邪魔させてください。お世話になりました。
October 22, 2006
この日、あるメーカーの飲食店区画での室内イベントを終え帰宅したあと、そのメーカーから電話が入った。「Mr.マーさんでしょうか?今日行われたショーについてお客様から苦情の電話がありまして・・・」ショーで苦情が出るなど初めてのケースだけに驚いた。この時点で思い当たる節は全く無い。トラブルも無かったしそれなりに盛り上がった。担当者から詳しく内容を聞くと・・・ある親から「最前列でアピールしたのにウチの子になぜ風船をくれなかったのか!?」という苦情。メーカー側にその時の状況とショーの内容を説明。元々ショー形式で行うバルーンショーはバルーン配布と違い、流れやストーリー性を重視し、また、普段見ることの出来ないバルーンを10本近く使った高度な物をその場で作成。この日はミッキーやプルート、グーフィーなど6体のバルーンをショーの中で作成した。完成したバルーンは無作為に会場内の数名に手渡しでプレゼント。当然、100人いれば残りの94人はバルーンが貰えない状況になる。例えば100人の観客が居た場合、誰に差し上げるかはジャンケンだったりくじ引きだったり、何を作っているか当てっこだったりする。ジャンケンやくじ引きはその都度ショーが中断するのであまりやらない。当てっこに関しては最前列に位置していた5人組の女の子のテンションが高かった為、答えがその5人組に集中しそうだったのでやらなかった。結果的に独断で会場内のお客さんに無作為にプレゼントした。ここで苦情として問われた”なぜウチの子になぜ風船をくれなかったのか!”に関しての回答は”その子に渡さなかった理由は・・・無い。”としかコメントできない。渡さなかったのではなく、渡すことにならなかった。どうすればその子が貰えたかの理由も無い。少なくとも最前列でアピールしてくれた事が"バルーンを貰える条件"では無かった。会場内のお客さんに対し、満遍なくさっきは右の方に居るお客さんだったから今度は左方向にいるお客さん・・・という風に渡した結果、その子には渡らなかった。それだけだ。バルーンショーを組み立てる上でいかに子供達とトークし、楽しく、そして何の変哲のない風船で想像以上の作品を作り、ショーの完成度を高めていくかが鍵となる。この日はラストにグーフィーを完成させたとき、一部からは拍手が起きた。普段見ることの出来ない、少なくともこのショー以外では見ることの出来ない高度な技術を駆使したバルーン。ショーとして完成させても今回のように理解してもらえない部分も多々ある。バルーンを使ったショーを行っても、風船=もらえる物という図式を描いている人は少なくない。”バルーンを貰えなかった子供達の気持ちを考えた事があるのか?”この問いには反論させていただく。これまでバルーンショーをやってきた中でバルーンを貰えなくて残念がる子供たちの顔を嫌と言うほど見てきた。バルーンショーをやる度にそういった子供たちの表情は胸に突き刺さる。その子達の表情を誰よりも見てきたのがパフォーマー自身なのだ。バルーンを貰えなかった94人の子供たちに対する明確な対応策は無い。だからバルーンを貰えなかった94人の子供達に「すごい!」と言わせられるハイレベルなバルーンショーを完成させていくしか無いのだ。
October 15, 2006
「警部、こちらです。」ブルーシートに囲まれた現場に如月警部と若手刑事、近藤が到着したのは早朝6時。神奈川県厚木市ヤングコミュニティーセンターの裏側にある駐車場脇で若い男性の死体が発見された。「死因は頭部打撲による失血死ですが、この損傷じゃあ頭蓋骨骨折、脳挫傷って所でしょうか。正確な身元は確認中ですがこのコミュニティーセンターの利用者のようです。」「これは?」如月は遺体近くに転がっていた見慣れないモノを顎で指した。30cmほどの細い木の棒の端が1mぐらいのナイロンの紐で互いに結ばれている。その傍らには2つのお椀の底同士をくっ付けた様な車輪にも見える物が数個転がっていた。「これはジャグリングの道具の一種らしいです。中国独楽の一種でディアボロと呼ばれているそうです。」現場に残っていた数個のディアボロの内の一個から被害者の血痕が見受けられた。如月は見慣れない現場の状況に少々困惑した。事件か事故か・・・ただ分かっているのは若い男が昨夜から今朝にかけて死亡し、たった今発見されたと言うことだけだった。周辺で聞き込みをしていた近藤が小走りで帰って来た。「警部、どうも事故のようですね。この青年は昨日夕方からこの場所でジャグリングの練習をしていたそうです。数人の目撃者がいます。このコミュニティーセンター自体、バンドや演劇、など若者の練習場所だそうで、この青年もその中の一人という訳です。それでこのディアボロなんですが、技の一つにハイトスという垂直に数十メートル投げ上げる大技があるんです。その際、受け損ねて頭部を直撃した可能性が高いですね。」血痕の付いたディアボロは明らかに他のディアボロと形状が違っていた。他と比べ小さく、また、素材は他のディアボロがゴム製なのに対しグラスファイバーと金属を組み合わせたつくりになっていた。内側には小さく『Dragon Breath(龍の息)』と刻まれていた。近藤の言葉を全て受け入れるには少々引っかかる何かを感じながら2人は現場を後にした。神奈川県警本部では連日のように事件事故が発生し、年がら年中ごった返している。捜査3課に帰った如月は早速ネットでジャグリングのディアボロについて検索していた。ディアボロ・・・2つのお椀の底をつなげたような独楽を2本のスティックの先端に結んであるヒモで空中で回転させる。ジャグリングの中ではポピュラーな道具。身体の周りを回転させたり空中高く放り投げて演技を行う。同様に『Dragon Breath』について検索したがネット上では何も手がかりは無かった。「警部!先月、東京でも同じ事故が起きてます」近藤が警視庁の捜査資料を片手にやってきた。「野地健一、27歳。全国的にジャグラーとしては有名人でディアボロについて2005年の全日本大会で優勝しています。彼も同じく都内のある公共施設の敷地内で練習中に今回同様頭部に怪我をした状態で発見されました。死因は頭蓋骨骨折。ほぼ即死だったようです。現場の状況から事故と判断されていますね。でも警部、これを見てください。」資料に載っている一枚の写真を付き出した。『Dragon Breath』「この野地って男も同じディアボロを使用していたようです。今回の件も事故の線が濃厚ですが少しディアボロについて調べておきますね。あ、それと身元が割れました。死亡したのは福沢諭、28歳。厚木市在住でプロジャグラーとして活動していたようです。」「ディアボロの大会もあるのか。そうか・・・事故ね・・・しかしまあそんな危険な道具が出回っているようじゃこれで終わりって訳にはいかなさそうだな・・・」如月はコーヒーをすすりながらパソコンの画面に目を落とした。「福沢諭・・・と、どれどれ。」「あ、警部、鑑識からの情報もらって来ます。一通りまとまったら事故で捜査報告資料作りますんで。」近藤には最近の若い連中にしてはテキパキとした動きに感心させられる。おかげでこのご老体にムチを打たなくて済む。如月はそう思いながら今回起きた事故のディアボロについて考えていた。「龍の息・・・どういう意味なんだ・・・?」最新式の液晶パソコン画面に映し出された福沢諭のプロフィール。そこには『2006年全日本ディアボロ大会優勝』と書かれていた。「国内のディアボロトップ2が立て続けに死んじまったのか?」如月は脳裏にひっかかるモノが何なのかを考えつつ近藤の報告を待った。「『Dragon Breath』。死のディアボロってとこか・・・」そうつぶやくと椅子をくるっと反転させ、窓の外のビル郡に目を落とした。沸き起こる胸騒ぎはまだ見えぬ何かを予感させた。それは決して良い知らせには思えなかった。
October 9, 2006
久々のマジックの依頼。この日、個人宅でのテーブルマジックショーです。今は大道芸人Mr.マーさんとしてプロ大道芸人なのですが元々はマジシャン。関東に住んでいたときに独学でマスター。大和市のマジックサークル「たぬきのはっぱ」に所属してました。マジック自体は大道芸人になってからは費用をかけなくなりました。(マジックネタビデオ・DVDを手に入れるのに費用がかかる)なので今は新しいネタは発掘してません。でもあの頃夢中になり、数々の素晴らしい魔法(マジック)を手に入れたことで今でも魔法を使う腕は健在です。ショーの前にトランプ3組と50セントコイン、マジック用のシートをマジックショップYAMAGENで購入。この日は2ファミリー揃っての個人宅でクロースアップ(トランプ・コイン)のマジック。一人のお父さんがマジックが大好きな方で、奥さんからは「今日はすっごいプレゼントがあるよ!」とマジックショーがあることを内緒にしてたようです。最初のマジックでそのお父さん、「こ、こ、これ!!このマジック、テレビで前田さんがぁ!前田智洋さんがぁ!!!!」と子供達以上に大興奮。魔法世界にようこそ。よかった。ここまでテンション上げてくれると雰囲気もすでにいい感じです。小一時間のショーのあと、お父さんは奥様に「なんでこんな人と知り合えたん???」とずっと興奮してました。ここまで喜んでくれると思わなかった・・・。たまにはマジシャンになるのもいいかも。大道芸と違う面白さや不思議さ、世界があります。そもそもマジックを始めようと思ったのが人を驚かせようとか、モテたいとかまぁ、ありきたりの動機。でも実際にマジックの世界に入ってみると想像を遥かに超えた世界でした。ものすごく広くて深い。長い長い歴史と文化、技と理念、それらが複雑に絡み合った世界。その世界にどっぷりハマり、そこで行き着いた理想のマジシャン像は・・・『マジックは常に魔法でありたい』今までに散々下手クソなマジシャンに出会いました。どこで仕入れたか知らないけど斬新で最新のマジックネタ。目の前で起きてる現象は誰も見破れないトリック・・・でも演出がダメダメ・・・。はっきり「あなたのマジックは魔法ではない」そう言ってあげたくなる。単に技法とトリックを羅列しただけのマジック。技が完璧でもマジックで魔法を演出する力量がなければそれはマジックとは呼べない。楽しくないマジックほどつまらないものはない。世界中のマジックを演じる皆さん、「あなたのマジックは魔法ですか?」だとすれば私はあなたのマジックを心から楽しみたい。
October 8, 2006
市内から小一時間北に行った所にあるその町にはおよそ、その町に似合わないほど大きな多目的ホールが建っていた。週末の空いた時間にここを訪れたのは、来月行われるイベントの打ち合わせのため。ホールの下見も兼ねてだった。わざわざ自宅から遠出した割には打ち合わせ自体あっさり終わり、この日ホールで行われているイベントを少し覗いてく事にした。「まーさん?」不意に名前を呼ばれる事にもすっかり慣れ、振り返ると高校時代の同級生カオリがいた。「おぉ、久しぶりやんか。何やってんの?」「まーさんこそ何やってんのよ!私はこのイベントの実行委員で来てるの。」人なつっこい感じの性格と憎めない笑顔は高校時代とちっとも変わらない。ふと壁のポスターに目をやった。『第26回子供会お楽しみ会』「子供会?それにしちゃ結構大きいホールでやるんやね。」「そうなのよ。主体は地元の高校生がやるんだけど私たち役場のスタッフもお手伝いって訳。まーさんは何してんの?」「え?あ、仕事仕事。」ふとステージスケジュールを見て気付いた。「何か、バンド演奏ばかりじゃない?子供会ってみんな小学生やろ?出演者は高校生?こうもバンド演奏ばかりでよくもつなぁ」そう言いながら通路から大きなドアを開け、中を覗き込んだ。とたんに響く大音響のバンド演奏。「これ、対象年齢高くない?」「そうなのよ。地元高校生が子供達に披露したいって言うから任せたものの、てっきり演劇でもやるのかと思いきやバンド演奏とダンスショーばっかり。だから子供たちもこの有様。」ふと見回すとロビーでは多くの子供たちが走り回っている。まだ昼前だと言うのにプログラムは15時まで組まれていた。「あららぁ・・・ご愁傷様。じゃ、帰るわ。用事も終わったし。頑張って!」「うん、じゃあまた。」カオリは少し怪訝な顔で言った。「ねぇ、まーさんってこういう仕事してるの?なんか場慣れしてるっていうか・・・なんとなく。」「ん?あ、まあ・・・ははは。また。」カオリは僕が大道芸人であることを知らなかった。あえて言う事でもないし適当に答えを濁した。喫茶"さめうら"取って付けた様な名前の喫茶店がホールに一階にあった。空腹を満たすには丁度の時刻。店内に入るなりランチセットを注文した。上の階からはホール内のバンド演奏のせわしいリズムが響いてくる。一服したあと店を出た。ふとカオリの声に気付く。さっきとは全く違う荒々しい声を上げていた。「何言ってんの!すぐに連れてきなさい!!すぐに連絡とって!!」怒鳴っている相手は高校生2人。高校生は携帯を取り出したが電話の相手は中々でない様子だった。カオリがますます苛立つのがわかった。「すぐに探してきて!あと30分しかないのよ!!」どうやら出演メンバーが揃っていないようだ。苛立ちを抑えられず振り向いたカオリと目が合った。「よぉ。大丈夫?」「信じられん!次に出演するバンドがメンバー同士が喧嘩してヴォーカルが帰ったんだって!絶対ナメてる!小学生相手のイベントだと思って!まったく!どうすんのよ!」今まで見たことのない表情のカオリに少々驚いた。苛々しながらも今取れる対策を必死で模索しているようだった。「高校生に頼むんじゃなかった。ちゃんとした人に出演してもらうんだった。こうなるんじゃないかと思ってた。次のバンドを繰り上げるか、ホール内を休憩にするか・・・」込み上げる怒りに遠慮なく愚痴った。「あ、ごめん、なんか今日、こんなのばっかり。イヤになるよホントに。帰る所なんでしょ?ゴメンネ、急に愚痴ったりして。」「いや・・・出演者ドタキャン?」カオリは何も言わず頷いた。この日のイベントを全て任された上での度重なるトラブル。ドタキャンしたバンドへの怒りと自分の不甲斐なさに涙を浮かべていた。「あのさ・・・お節介かも知れないけど飛び入りでも出演OK?」カオリは涙を隠しながら向こうを向いたまま言った。「誰か穴埋め出来るの?あと30分しか無いのよ?今から誰か呼ぶなんて・・・」「わかってるさー、今は飛び入りOKかって事返事を聞いてる。」カオリは少し考え込んだ。久しぶりに会った同級生が代わりの出演者を連れてきてくれると言う。しかし、その出演者がどうしようもない者だったら?一抹の不安とぶっちゃけどうにでもなれという気持ちが交錯した。「連れてきて。今すぐ!」「了解!」カオリの返事を聞くなり駐車場に走り出した。曲芸の道具は幸い車に積んである。出演時刻が迫り緊迫したカオリの表情とは裏腹になぜかワクワクする感情を抑えられなかった。「あ、まーさん、ちょっと!出演者の名前は?何をする人なのよ!!」2分後、大きな革の寅さんカバンを引きずりながらホールに舞い戻った。「カオリ、控え室どこ?あ、いいやこのまま出よう。ピンマイクと・・・音源CDコレね。かけっ放しでいいよ。司会いないんでしょ?正確な出演時間教えて!衣装ないけどいいか。」「え?出演者もう来たの?まさか・・・あなたが出るの?」不安そうなカオリにフフっと笑いかけ、自信に満ちた笑顔でカオリをなぐさめた。不意に舞台袖をウロウロしていた小学生が気付いた。「あ、まーさんだ!!今日やるの?今から?本当に?」そういうとダッシュで観客席側に走って行った。「あなた・・・何?誰なの?」「ん?俺?大道芸人Mr.マーさん!」その頃、丁度前のバンド演奏が終わった。「あ、カオリ、ロビーにいるコたち、中に戻して。『まーさんがサーカスする』って言えばイイから。」「もういいの?準備やリハーサルは?」「大道芸はいつでも、どこでも、どんなときもがモットー。さ、行った行った!」幕の下りたステージの中心に立つと舞台袖のスタッフにOKサインを出した。幕が上がると同時に拍手が沸き起こった。さっきまでガラガラだった観客席はすっかり満席になっていた。「みんな!こんにちは!大道芸人のMr.マーさんです!」途端にざわめき立つ子供達。”見たことある!””会ったことある!”みんな思い思いに声をあげた。「さぁ、今日は思いっきりみんなで声を出して楽しもう!さぁいくよぉー!」退屈していた子供達は一斉にステージに釘付けになった。あふれんばかりの拍手と笑い声、大きな声援と共にホールは一つになった。わずか30分のショーだったがホールの中は最後まで無数の笑顔であふれた。「さて、短い間だったけどそろそろみんなとお別れです。また会おうね!バイバーイ!!」割れんばかりの拍手の中、幕が下りた。その時、ステージスタッフが誤って観客席の照明を点けてしまった。満足した子供達とその両親は一斉にホールを後にした。「お疲れ様。みんな帰っちゃった。」ふふっと笑いながらカオリが言った。「え?ウソ?ホントに?帰っちゃダメじゃん!まだ出演者いるんでしょ?」「いいよ。子供達喜んでたし。それにもうどうしようもないし。」さっきまで困惑していたカオリはすっかり笑顔になっていた。「凄い。凄かったよ!楽しかった。凄い楽しかった。まさかこんな事やってるとはね。ありがとう。助かった。」「こんなんでよかった?衣装なかったからTシャツ汗でビショビショ。このまま帰らないといかんな・・・。」「ねぇ、呼んだらまた来てくれる?」進行表を胸に挟んで腕組みをしたままカオリは言った。「え?あ、うん、もちろん!」「頑張ってるんだね。なんか羨ましい。好きな事出来て・・・」曲芸の道具を片付けながら上目遣いでカオリを見上げる。「好きだからやってける事だしね。じゃあ帰るよ。名刺渡しとく。」「うん、ありがとう。大道芸人Mr.マーさんか・・・また連絡するね。今度は”まーさん”の方に!」意味深げな笑みを浮かべながらカオリは手を振った。ホールを後にし駐車場にてもう一度後ろを振り返る。ホールは来た時よりもなんだか小さく見えた。数日後、カオリから遅い残暑見舞いが届いた。「残暑お見舞い申し上げます。好きな事が続けられるっていいね。私も探してみます。」幸せそうに白いドレスを着たカオリの写真には寄り添うように優しそうな男性が写っていた。そして写真にはもう一言書かれていた。「結婚しました!」(おしまい)
October 1, 2006
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