一番入手しやすいのは岩波文庫の飯田訳であろう。お気づきだろうがタイトルが微妙に違う。原題は「Walden;or Life in the Woods] である。主タイトルが「ウォールデン」、副タイトルが「森の生活」である。ちくま学芸文庫の酒本訳では副タイトルは「森で生きる」になっている。酒本は「あとがき」で、この問題を指摘している。「従来の邦訳ではほとんど「森の生活」という訳題が定着している。つまり副題のほうがなぜか選ばれてしまっているというわけだが、この作品が自然愛好者のいささか風変りな自然生活の記録として、少なくともわが国では読まれる傾きがあるのも、訳題のこのありようが微妙にかかわっているからではあるまいか」。読者はキャンプ生活のノウハウを書いた本と勘違いして、この本を買ってしまう。読んでみて、ちっとも面白くない、むしろ思想書ではないか、と気づいて、先を読み続ける根気のある人と積ん読本にしてしまうかの分かれ目になってしまう。