中高年の生涯学習

中高年の生涯学習

2023.06.25
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​​1946年(昭和21)シンガポールから帰還した小津は野田市に疎開していた 母の元に落ち着いた 。5年に空白を経て発表された「長屋紳士録」、「風の中の牝鶏」評価されなかったが、小津の人間観、社会観が表現されているとされ、再評価されている。野田市から大船撮影所まで遠かったので、脚本執筆、その他の生活の拠点担ったのが 茅ケ崎館 という旅館だ。中二階角部屋の「二番」が小津や脚本家の野田の部屋だ。ここで七輪、火鉢、タンス、食器を持ち込み、自炊して、煙草、洋酒が用意され、朝は海岸まで散歩、こんな生活の中から映画のテーマが浮かんできた。海岸付近は「戸田家の兄妹」「晩春」「麦秋」「早春」のロケ地になっている。​​
​1953年公開の 「東京物語」 は小津の代表作だ。前回紹介した「大全集」というDVDにも入っているし、DVDを貸しているお店もあるので、ぜひ見てほしい。​
​紀子(原節子)が中心の物語。「晩春」、「麦秋」も名前は同じ紀子だった。「東京物語」では義父母につくす未亡人だ。戦争で夫の昌二を失って、8年がたっている。小さな会社で事務員として働いている。昌二と暮らしていた長屋のようなアパートで独り暮らし。そこへ尾道から昌二の両親(笠智衆、東山千恵子)が訪ねてくる。子どもたちを訪ねて東京に来るが、子どもたちは妙に冷たい。医者や美容師になって東京で暮らしているが、生活の余裕がない。その中で両親にとって他人である紀子だけが、まともな接待をする。紀子は会社を休んで、両親を東京見物のバスに乗る。 紀子の部屋には何もない 。食べ物、酒を隣の住人に借りに行く。事務員として働いているのに、不思議に感じる場面だ。​
​美容師の杉村春子は両親を熱海へ追いやる。熱海は俗物の巣窟だ。夜中まで麻雀の音で騒がしく、ネオンが光り、ゆっくりと寝てもいられない。二人は防波堤の上でゆっくりする。 とみ 演ずる東山は防波堤の上で、クラっとする。とみの運命を、ここでチラリと出す。​
とみは紀子に再婚を勧めるが、紀子は取り合わない。老夫婦は尾道へ帰るが、とみが急死する。葬儀の場面で美容師の杉村春子は本音の欲望を露骨に表現する。「お母さんの形見をいただいていくわ」、と。
東京人は日々の生活で精いっぱいなのだ。そして欲望だけが極端に大きくなっている。紀子は、 欲望のままに生きていけないことを、自分の偽善 と気付いている。「あたし狡いんです」というセリフにはそんな意味がある。しかし紀子には愛がある。まごころで両親に接している。
​東京人、すなわち近代人と大きく捉えてもいい。それに対する反近代人(尾道の老夫婦)の人間観が対照的に描かれている。小津は、これを 善悪で判断しないで、 淡々と、そのまま流れるように提示する。判断は観客にまかせる。​
とみ(母、東山千恵子)の葬儀が終わり、東京へ帰る紀子に周吉(父、笠智衆)は再婚をすすめる言葉は、
「やっぱりこのままではいけんよ。何にも気兼ねはないけ。ええとこがあったら、いつでもお嫁にいっておくれ。もう昌二のこたあ忘れてもろうてええんじゃ。いつまでもあんたにそのままでおられると、かえってこっちが心苦しゅうなる。…こまるんじゃ」
自分が独り身になることを忘れて、他人のことを気遣っている。しかし不思議な安心感に支えられている。隣のおばさんが窓から顔を出し、「おさびしゅう、なられましたね」と声をかけてくれるコミュニティーが尾道には残っている。
先月(令和5年5月20日)の朝日新聞夕刊に、こんな記事が出ていた。
カンヌ映画祭で小津監督2作品上映 ーー フランスで開催中の第76回カンヌ国際映画祭で18日夕、小津安二郎監督の「長屋紳士録」(松竹、1947年)と「宗方姉妹」(新東宝、50年)のデジタル修復版が上映された。今年は小津監督の生誕120年、没後60年にあたる。
「長屋紳士録」は戦災孤児を引き取って世話を焼く長屋の温かな人々を描いた。「宗方姉妹」は古風な姉と勝気な妹を通じ、戦後日本で変容していく家族の在り方を描いた」
おわび
入院治療のため、ブログ更新が遅れたことをおわびします。R5.5.28





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最終更新日  2023.06.25 10:01:56コメント(0) | コメントを書く


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