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小説「ゲノムと体験が織りなす記憶」 第 13 話
「会長から仰って頂いたので、確認させて頂きます。
さきほど、なるべく早いうちにと申しましたが、仕事を優先させて頂きますね」
「勿論です、すべて君に任せます」
ケンさんのリョウを見る目がいつもと違う光を帯びている
あれは、嫉妬のようなもの?
何しろケンさんは青木氏を親のように思っているから・・。
「それでは、次を紹介させていただきます。
これはぐっと若い年代になりますが、私の町には平家の末裔が住む地域があります」
これに、再び青木氏が身を乗り出した。
「君の話は・・・何とも私が興味を持つ事ばかりだが、大分県に平家の末裔がいたという、その手の話は聞いたことが無い。根拠を知りたい・・・すまない、話を途中で遮ってしまったね。どうか続けてください」
「はい、青木さんもご存じの通り、あの壇ノ浦の戦いで破れた平家の末裔の人達です。実は私も中学生の頃はまだ知らなかったのです。思うにやはり皆さん質素に暮らしておられたから町の人達もそっとしていたのでしょう。
あの方々に限らず、私の町には瀬戸内海の海賊が時の勢力者によって解散の憂き目にあい、瀬戸内海内外の場所に散らばって密かに住み暮らしていてその人たちが漁師となって住み着いたとされていますが、彼らの事も決して外部に漏らさず・・・。
なのに今私がその事に触れるのは、今ではもうあの地域に溶け込んでしまっていて詮索の方法もないといいますか、元々誰も噂にさえしてこなかった。
そういう性分と言いますか、私の町の者は、自分たちの町の気風や決まりを守り、溶け込み、穏やかに暮らしていれば、疎外しないという、そういう優しさを持っていたようです」
「そうだろうね。それだからこそ平家の人達も腰を落ち着ける気になられたのだろう・・・」
「はい、それでもあの人たち・・・後に僕と親しくなった彼もその地域で生まれ育ったのですが、海賊の残党の人達は土地の者と同じ平地で暮らしましたが、平家の人達はちょっと高い山の上で暮らしてましたね。多分その容姿が我々と違っていて目立つことを危惧したのでしょうけれど」
「容姿が違うとは?」
「はい、彼らは一様に色白で面長、一重瞼でおまけに眉が薄いのです。私を見ればお分かりのように、九州の人は色黒ではっきりした顔立ちが特徴的ですから、かれらはどうしても目立ちます。
今はもうそのくらいのことで偏見を持つ人は、私の町でなくともどこにもいないでしょうけれど、あの時代、あの容姿で歩いていれば、源氏の流れを汲む者にとっては放っておけない存在でしたでしょうから・・・しかし、遺伝子というんですか、何百年も九州で暮らしていても、お公家さんのような容姿が変わらないというのは、原因は大体予想できますが・・・。初めて彼の家に招待されて、ご家族やお隣さんとお会いした時には、失礼とは思いながらまじまじと顔の違いに見入ってしまいましたね・・・」
青木氏のみならず、マリまで横に座っていて俺の顔を見ながら話しに聞き入っている。
青木氏は一瞬言いよどんだ様子を見せたが、口を開いた。
「それは、恐らくは長い間、一族以外の人と婚姻関係を結ばなかったからかも知れないね」
「そうなのでしょうね。しかし、あの容姿の人達の中にいると、何かこう・・・時代を間違えているような、というか・・・まるで大河ドラマの中に身を置いたような、そんな風に錯覚したのを覚えています」
「ははは、大河ドラマは良かったなあ、でも私も歴史に興味あるから、ちょっと体験してみたかったね、うん・・・」
「歴史に興味のある人ならそう思うかも知れませんね。まだ他にも歴史上の人物の話がありますが、失礼してお手洗いに行ってきますね」
「なんだ、君もか?私も行くよ」
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