星の髪飾り

星の髪飾り

2007/10/18
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 日本に高度経済成長の兆しが見えはじめると、人々の暮らしにも変化が現れ、テレビ、冷蔵庫、洗濯機は多くの家庭に入り込んだ。
元気になろうとしている日本の気流に、茂夫の会社もなんとか乗った。

 その日も、真沙は多希子の入院先の病院へ向かった。                    多希子の病名は急性腎不全だった。
お遊戯会も出られないまま、即行入院になった多希子は、安静と言われ、天井の木目模様を見ながら過ごしていた。 

 真沙は持ってきた折り紙と塗り絵をバックから出した。
「これは、お父さんからだに」 

 すでに折られた鶴は、様々な形で多希子の寝床で戯れていた。 

 真沙は、トンネルのようになった蒲団の脇にある一枚の絵を手にとった。 
「これはタッコの傑作だに。 看護婦さんが壁に貼ってくれるんな」
「タッコ? ここにいるのはお父さんと・・・」
「チンドン屋を追いかけて迷子になった時に、タッコを家に連れてきてくれた魚屋のおじさんな。 長い前掛けをしとるら? 」
「ああ! あの時の・・・」
「お父さんが、ありがとうのお辞儀をしとるんな」
 クレヨンで丁寧に塗られた絵には、父親の後ろで泣きべそをかいている少女が、小さく描かれていた。 

「そろそろ蒲団に入らんと、注射の時間。 ペニシリンは針が長くて痛いし、お尻にするで、タッコは恥ずかしいんな。 ブドウ糖はお父さんの親指より太いに」   
注射の名前を覚えた多希子の頬を撫でながら、真沙は多希子の着替えを袋に詰めた。       



 日没が早い冬の病室で、注射を終えて眠った多希子を確認した真沙は、静かに部屋を出て行った。
多希子は足音が消えた頃、そっと目を開け左右に寝返りを打った。                 












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最終更新日  2007/10/18 08:48:58 PM コメント(7) | コメントを書く


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