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万里一空~すべての高校球児に贈るメッセージ 夏の甲子園開催可否が正式に決まる5月20日をどのように過ごそうか、思案した。 「記者」という仕事柄を考えれば、どこかの野球部に「取材」に行って監督や選手の話を聞き、記事を書くのが本分だろう。実際「高校野球ドットコム」から取材依頼があった。だが正直なところ「そっとしておいてあげたら?」という葛藤もあった。 ふと「取材」よりも、高校球児の気持ちになって「野球の練習」がしてみたいと思った。20代後半から30代前半にかけては「体験取材」「ペンとノートをグローブとバットに置き換えた取材」と称していろんな学校の練習に参加したことがある。 さすがに40代になってからやる機会はなかったが、またやってみたくなった。いくつかの学校に問い合わせたら、鹿児島の上之薗大悟監督が「いいですよ」と承諾してくださった。 鹿児島市犬迫にある鹿児島のグラウンドは、個人的な思い出がある。鶴丸での現役時代、練習試合の代打で1打席、守備は9回の1イニング守ったことだけが私の「試合経験」だ。守備についたのが鹿児島のグラウンドで対戦した菊池(熊本)戦だった。 ユニホームを着て、グローブとスパイクを野球バッグに詰め、自転車で犬迫に向かう。グラウンドに上がるのに勾配のきつい上り坂がある。高校生の通学用自転車ではとても登れない斜度があるが、今乗っているのは長距離ライド用にも使用しているクロスバイク。テクニックと根性で何とか上り切った。 練習はすでに始まっていて、アップをしていた。上之薗監督が鶴田康太主将(3年)を指名してキャッチボールやトスバッティングの相手をしてくれた。「甲子園、なかったら辛い?」「辛いです」そんな会話を交わした。内面の葛藤は表に出さず、笑顔で突然現れたおっさんの相手をしてくれた。 1、2年生がシートノックをしている間、3年生はウエートトレーニングをやっていた。あえて野球の練習をさせず、1、2年生のやっていることを見させていたという意図があったことは、後で上之薗監督が話していた。 顔は笑っていても内面に葛藤があるのは鶴田主将と同じだ。「1年冬に亡くなったおじいちゃんと約束したんです」。加治屋翔太は言う。練習熱心で「春の県大会ではエース番号を背負うはずだった」と緒方勝副部長が教えてくれた。 緒方副部長は高校の後輩にあたる。遅れてやってきた緒方副部長に受けてもらってブルペンで投球練習をした。一通り投げ込んで肩を作ると、やはり1、2年生が1本バッティングの練習をするので志願してマウンドに上がった。 カウント2ストライクからだったが、思うようにストライクが入らない。ごまかしながら何とかアウトを重ねる。途中四球を連発した時は三塁で守っていた選手がタイムをとって寄ってきた。 「上之薗監督から『上半身と下半身がバラバラで投げている』だそうです」 ふと我に返ってまずは下半身を意識して投げてみた。それでも思うようにストライクが入らなかったが、4イニング分ぐらい投げて、1失点だったから急造投手としては及第点だろう。打者にしてみれば「練習にならない」と思ったかもしれないが、ストライクの入らない投手を攻略しなければならない場面も試合では必ず出てくる。 マウンドを緒方副部長、さらに遅れてやってきた佃雄太副部長に譲った。佃副部長は先日、地元放送局の動画サイトの企画で「私が選ぶベストナイン」を担当した際、遊撃手のベストナインに選んだ。(※画像をクリックすると放送がご覧になれます) 振り返れば01年3月、小学生のソフトボール大会の取材の合間に、当時6年生で以前から知り合いだった彼とキャッチボールをしたことがある。「グローブを見せてください」というので見せると「手入れをしていませんね? 毎日磨かないとだめですよ」と笑顔で言われた。 小学6年生に「説教」されたのは後にも先にもこの1度きりだ。「道具を大事にする選手」ということで武岡台時代の彼をベストナインの1人に選んだ。「今、鹿児島で指導者になっている。道具の大切さを高校生に教えていることでしょう」と動画でコメントした。 マウンドの佃投手と2度勝負して、ライト前とセンター前、2本のヒットを放った。投げ終わった後、19年ぶりにキャッチボールをした。 練習も終盤に差し掛かった。ちょうど日本高野連の発表があった。甲子園の中止は予想されたことだったが、地方大会も中止が決まるとは予想外だった。 「野球がつないだ縁、この仲間を大事にせんといかんよ」 上之薗監督が3年生に向けて語った。その後で私にも何か語って欲しいと言われた。監督自身も気持ちの整理がつかず、涙を流す3年生を前にして言葉が出てこなかった。僭越ながら私が語ったことは、この夏「甲子園」という舞台がなくなったすべての高校球児に贈りたいメッセージなので、要約して紹介する。・私からのメッセージ 1週間前の5月13日、鹿児島県高体連の会見があり、県高校総体の中止が発表された。高体連の石田尾行徳会長に「集大成の場を失った高校生に大人として何かアドバイスがありますか?」と質問した際に石田尾会長が紹介した「万里一空」という言葉が胸に染みた。 世界のすべては同じ一つの空の下にある。今、高校球児が目指していた「甲子園」という空、「県大会」という空さえ見えなくなった。辛いことであり、悲しいことだ。「切り替えて次の目標に」と軽々に言えるものではない。今は心に芽生えた感情を思う存分味わって落ち込む時間があっていい。 しかし、いつまでも下を向いたままでは何も変わらない。現実を受け止め、勇気を出して見上げたら新しい空が見えてくるかもしれない。その空は甲子園ではないかもしれないが、きっとどこかで甲子園とも1つにつながっている空だ。 「マスターズ甲子園」という大会がある。昨年、元PL学園の桑田真澄投手が出場して話題になった。あの大会を作ったのは鶴丸の先輩・長ケ原誠さんだ。神戸大教授の長ケ原さんは生涯スポーツの場として大人の甲子園大会を思いついた。 6年の準備期間を経て04年に1回目の大会を開いて以降、毎年秋に開催されている。6年前の14年に鶴丸は鹿児島大会を制し、甲子園出場を決めた。私も甲子園の土を踏み、打席に立って守備についた。40歳になる年にそんな経験ができるとは、高校時代想像すらできなかったことだ。 今、高校3年生で同じ仲間と甲子園に行くことはできなくても、マスターズ甲子園なら何度でもチャレンジができる。無論、現役高校生として甲子園に行くこととは比べ物にならないが、少なくとも「甲子園で野球をする」という「空」が決して閉ざされたわけではないことは伝えておきたい。・「集大成」としての地区大会を! 甲子園、県大会も中止となると、3年生にとって「集大成」の場をどう作るか。 「中止を決めるのは簡単。でも我々は終盤、どんなに負けていても『絶対あきらめるな』と子供たちに言い続けてきた。簡単にあきらめず、何かできることを考えるのが大人の責任ですよ」 昼間電話で話したある高校野球指導者の言葉を思い出す。現実的に考えられるとしたら「地区大会」の開催だろう。 鹿児島市、南薩、北薩、姶良・伊佐、大隅、熊毛、大島、県内には7つの地区がある。7月か8月で集大成となる各地区大会を開催する。それぞれの地区ごとの大会なので、例えば離島のチームが県本土にフェリーで上がってくるような移動のリスクは軽減できるだろう。 晴れ舞台を見られない保護者や応援者には恐縮だが無観客での開催。報道陣もシャットアウトした方がいいかもしれない。あるいは観戦できない人たちのために放送局やそれぞれの地元ケーブルテレビなどが協力し、試合の模様をネット配信するサービスなどはあってもいい。 いずれにしても「準備」のために残された時間があまりない。いろんな想いはあっても「3年生にとっての集大成の場を作ってあげたい」気持ちは誰もが持っているだろう。「出来得る限り安全に」という難しいタスクがあるのを承知の上で、早めの決断を鹿児島県高野連に期待したい。 「このことで野球が嫌いになったやつがいるか?」 最後に3年生に聞いた。誰1人手は挙がらなかった。その気持ちがある限り、きっと彼らには新しい空が開け、彼らの中からこの閉塞した日本社会を打破する「逸材」が出てくるに違いないと希望が持てた。(文写真 政純一郎氏)
2020.05.24
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高校野球 改革のチャンス! 本日付けの朝日新聞鹿児島版「かごしま聞きたい」に「スポかごNEWS」編集長・政純一郎が登場しています。 甲子園、地方大会中止を受けての感想や、高校球児へのメッセージ、集大成の舞台に向けての提言などを語っています。90分ほどのロングインタビューでしたが主張がよくまとめられています。ぜひご購読ください!(文写真 政純一郎氏)
2020.05.24
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フルタイム働きながら目指す日本一そうしん野球部 MBCラジオで毎週日曜日の午後6時からある「MBCスポーツ」で「つかじゅんのスポーツ深掘り」のコーナーを担当しています。番組でお話したことやスタジオの様子、お伝えしきれなかったことなどを更に「深掘り」して「スポかごNEWS」でお伝えします。 鹿児島相互信用金庫(そうしん)軟式野球部について深掘りしました。(※画像をクリックすると放送内容が分かります。) そうしん野球部については約2カ月前、トレーナー髙司譲さんの活動を取り上げた「心身一如への道」の連載で取り上げたことがありました。※記事はこちら! 「意識が高くて、中高生の見本にしたいチーム。素敵な選手たちの集まり。ぜひいろんな人に鹿児島にもこんなチームがあることを知ってもらいたい」 髙司さんは言います。本来なら5月16、17日は今年の鹿児島国体の出場をかけた県予選が予定されていました。予選は7月末に延期になりましたが、「国体を目指しているチーム、選手たちが今、どんな思いや様子なのか、紹介して欲しい」というMCの下山英哉アナウンサーのリクエストにもお応えして、そうしん野球部を取り上げることにしました。 そうしんは1997年大阪国体(2部)優勝、2004年埼玉国体(一般A)準優勝と国体でも輝かしい実績があるチームです。郡山にある総合グラウンドの野球場は外野にふかふかの天然芝が張り巡らされ、電光掲示板もあり、充実した設備が整っています。 NPO法人スポーツかごしま新聞社としても18年に日中友好少年野球交流や日米親善野球交流のイベントを主催した際、使用させていただきました。「こういう球場が県内にあと2、3あればもっと県内の野球環境は良くなる」と思える見本のような球場です。 04年の準優勝以降、初戦敗退が続いてきましたが、18年の福井国体で久しぶりとなる6位入賞を果たしました。昨年は残念ながら県予選で敗退しましたが、地元国体での日本一を目指し、意識高く取り組んでいるチームです。 部員は20人前後。甲子園経験者はほとんどいません。鹿児島商、鹿児島南、大島、れいめい、尚志館など県ベスト4、8クラスのチームの出身者が多いです。 都市対抗に出るような硬式の社会人チームは「午前中仕事して午後練習」、いわゆる「ノンプロ」の環境で野球に取り組んでいます。そうしんの野球部員は月曜日から金曜日まで一般行員と同じようにフルタイムで働きながら、土日に練習や試合をしています。 「仕事も100%、野球も100%頑張って結果を出す」(松元健作監督)ことにこだわっています。いわゆるオフがない状態であるにも関わらず、部員の大半が意識高く野球に取り組んでいるのは、何より「野球が大好き」という純粋な気持ちが強いからです。 最年長40歳の中原彰仁投手は「高校なら3年、大学なら4年というしばりがなく、幅広い年代の選手と野球がやれる」ことを一番の魅力に挙げています。バッテリーを組む奥村斗捕手は同じ鹿南の9つ下の後輩になります。 鹿児島国体は確かに大きな目標ですが、「地元国体が最終目標ではない」とも松元監督。会社の看板を背負って野球をやっている以上、結果を出し続けることへのモチベーションはノンプロの硬式チームに負けないものがあります。 そういう意識で野球をやっていることが、学業との両立を目指す「中高生の見本になる」と髙司さんは話していました。 放送終了後、私の父から電話がありました。父はそうしんの出身です。「放送予定を話してくれればいろんな人に宣伝したのに!」と残念がっていました。単に思いつかなかっただけなのですが、そういう細かい気配りもできて損はないと思いました(笑)。 16年前の5月17日は拙著「地域スポーツに夢をのせて」(南方新社)の出版記念パーティーがあった日です。5月4日に鹿児島新報が廃刊になり、今後の道を模索していた中で「鹿児島のスポーツを発信する」ことを生業にする決意宣言をした思い出の日です。 冒頭で下山さんがその話にも触れてくださり、「鹿児島のスポーツを盛り上げる スポーツで鹿児島を盛り上げる」というスローガンを掲げた原点に返ることができました。(文写真 政純一郎氏)
2020.05.18
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政編集長が選ぶ、22年間のベストナインは誰か?(※画像をクリックすると放送がご覧になれます) 1998年から2019年まで22年間、管理人・政純一郎が見てきた鹿児島高校球児の中からベストナインを選ばせていただき、最後に高校球児に向けてメッセージを贈りました。※KAPLIのダウンロードはこちら!(文写真 政純一郎氏)
2020.05.16
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11年夏・準決勝、「世紀の番狂わせ」を振り返る!・最終回(※画像をクリックすると放送がご覧になれます) KKBの「KAPLI」で福田アナウンサーと9年前の夏準決勝・鹿実vs薩摩中央についてトークしました。全6回の最終回です。「世紀の番狂わせ」がもたらしたものを語っています!※KAPLIのダウンロードはこちら!(文写真 政純一郎氏)
2020.05.11
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11年夏・準決勝「世紀の番狂わせ」を振り返る!・第5回(※画像をクリックすると放送がご覧になれます) KKBの「KAPLI」で福田アナウンサーと9年前の夏準決勝・鹿実vs薩摩中央についてトークしました。全6回の5回目です。「世紀の番狂わせ」のクライマックスを語っています!※KAPLIのダウンロードはこちら!(文写真 政純一郎氏)
2020.05.08
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11年夏・準決勝、世紀の番狂わせを振り返る!・第3回(※画像をクリックすると放送がご覧になれます) KKBの「KAPLI」で福田アナウンサーと9年前の夏準決勝・鹿実vs薩摩中央についてトークしました。全6回の3回目です。※KAPLIのダウンロードはこちら!(文写真 政純一郎氏)
2020.05.04
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鹿実vs(文写真 政純一郎氏)薩摩中央を語る・第2回(KAPLI) 11年夏・準決勝、世紀の番狂わせを振り返る・第2回(※画像をクリックすると放送がご覧になれます) KKBの「KAPLI」で福田アナウンサーと9年前の夏準決勝・鹿実vs薩摩中央についてトークしました。全6回の2回目です。※KAPLIのダウンロードはこちら!
2020.05.01
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