misty247

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2006.12.25
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カテゴリ: 西国三十三ヵ所
 駅のポスターに魅入ってしまうことがある。沿線観光地へのお誘いだ。広い用紙いっぱいに魅力的な写真。一枚でも広いのにパノラマ風につなげたり組み写真風に並べたり。一本後の電車の乗降客に押し流されるまで、憧れや、行こうと思いつつ行かずじまいでいる悔いの淵から抜け出せず、じっと眺め入ることもしばしば。
 そういうレール脇の動かない車窓に、幾たび長谷寺を見てきただろうか。桜に埋もれる舞台造りの大伽藍。牡丹に花やぐ山間の寺。遠近を感じさせる長い廊のパースペクティブ。その形象は長谷寺の文字以上にそこが長谷寺であることを伝える。

 三十三所巡礼を始めた徳道上人の師にあたる道明上人開基の寺であることから、第一の巡礼地とした時期もあったとか。今では、というか昔からそのようだが、三十三ヵ所を巡る順番はとかく問われない。
 後ろの山をも凌ぐ巨きな山門をくぐり石段を上がる。廊が「くの字」なのはつづら折りと同じで急登を緩めてくれる。花の香は近くへ、雨や陽射しは遠くへ。柔和な木目に囲まれた柱廊は、ゆっくりと踏む一歩ごとにおわします方の慈しみの添うようで、石段に温もりをも感じさせる。
 四季を通じ花にも増して人の多い寺だが、大晦日も間近に迫ったこの日、境内には千両か万両か赤い実のなる木と椿が所々に咲くのみで人影はさすがに疎ら。その分大悲閣は神さびる。木像としては日本最大になるという十一面観世音菩薩。その前に独り立てば炯眼に射られて暫くのあいだ動けない。かすかな冬の風に灯明がゆらぐ。心做しか刹那潤んで見えた慈眼に寛宥を授かった心地して一礼し、静寂の本堂を後にした。

 竜王山は長谷寺の北に位置する。585mながら奈良盆地を一望できる城跡の山と聞いた。
 参詣の後に登るつもりで来たが、寺でのんびりしすぎたのと崇神天皇陵を抜ける道がわからずに169号線を何度も行ったり来たりしたのとで、ようやく登山口に辿り着いたときはすっかり日は落ちて、奈良盆地を距てた向かいの二上山ははや赤くその際を染めはじめていた。
 せっかくだからと少し登ってみる。上まで行くつもりはなかったが歩き出すと踵を返すきっかけも得難くなるもので、登りながら困ってしまった。雨水に削られて足場が悪い。落ち葉と暗闇に紛れ見分けにくくなった水溜りを踏み、片足が浸水したのを機に引き返すことにした。
 また来よう。いくたびでもと、寺も山も変わらずに待っていてくれる。




~ いくたびも参る心はつせ寺山もちかいも深き谷川 ~

長谷寺にて





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Last updated  2006.12.29 01:24:19
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