NECは通信インフラが使用できない災害現場で緊急通信網を素早く構築できる携帯型無線機の開発に着手した。陸上自衛隊向けで培った可搬型ソフトウエア無線の先進技術を民需転換する。スマートフォン(多機能携帯電話)と組み合わせて利用できる「新ソフトウエア無線機(仮称)」として、2012年中に試作版を開発。13年度早々に製品化を目指す。防災のほか、通信インフラ整備が十分でない新興国向け需要も視野に入れる。
試作するのは送信出力が最大10ワットの車載型無線機と、同2ワットの携帯型無線機。ソフトウエア無線技術に加え、自律分散型の無線ネットワークを構築できるアドホック(自動中継)技術を採用。基地局なしで携帯端末同士で直接通信したり、複数の無線機を中継して遠隔地ともやりとりできるようにする。
ソフトウエア無線は制御ソフトを変更することで無線通信方式を切り替えられるのが特徴。幅広い周波数で多くの変調方式に対応できる。防災無線はもとより、異なる無線が相互に乗り入れている列車向けの緊急通信手段としても有効という。
民需展開はスマートフォン連携が目玉となる。新ソフトウエア無線機との組み合わせで、状況に応じて最適なネットワークを構築できる。「アプリケーションレベルのインターフェース(入出力)はすべてスマートフォンに一本化する」(航空宇宙・防衛事業本部)計画。
スマートフォン内蔵カメラで撮影した現場画像を簡単な操作で伝送したり、スマートフォンの地図情報を共有して各端末で危険箇所などを互いに確認できるようにする。
アドホックネットワークは全国規模で基地局を配置しなくても機動的に使える。センサーネットワークは近距離無線通信規格「ジグビー」が普及しつつあるが、新ソフトウエア無線機は遠距離に強い狭帯域の通信方式を採用する。自衛隊向けのシステムは車載利用も想定して、中継機能を半径3キロメートル程度にした。
ソフトウエア無線は日米で協調しながら開発している規格。軍事や防衛向けでは実用化されているが、業務向けの製品展開には至っていない。NECはここに挑む考え。スマートフォンとの連携が突破口となりそうだ。
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