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大島和隆の注目ポイント

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2011.09.30
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<ギリシャ、ギリシャ、ギリシャ……>



<欧州の南北問題>

一般に経済用語で南北問題とはやや違った意味で使われるものですが、今回の問題はギリシャを含む南欧諸国と、ドイツなどの北方の欧州と言う意味で、正にこれは欧州の南北問題です。別な言い方をすると「アリとキリギリス」問題。自由奔放に人生を謳歌するタイプの南欧の文化と、一生懸命勤勉に働く北側欧州、問題の発端は、文化も考え方も、働き方も違うこの南北欧州をユーロ圏と言う理想概念でひとつの経済圏に無理やりにまとめようとしたところから始まっています。その無理が、ここまで何とか辻褄を合わせて綻びが出ないようにしてきたものが、どうにも収拾のつかない事態になってしまったのが今の状態です。誰だって自分が一生懸命働いて作ってきた蓄えを、食べたい時に食べ、昼寝をしたい時には寝て、好き放題にしてきた怠け者が急に冬に向かって蓄えが無いことに気がついて泣きついて来たからと言って、「はいはい、大変ですね」と言って援助したいとは思いませんよね。よほど慈悲深い神様のような信仰心でも無い限り、おいそれと援助の手を差し伸べたりはしないものです。ましてやもうそれでも何度かは援助はしたのですし、本人も改心して真面目に働くと言ったのですから。

<ドイツの本音はどこにあるのか?>

そもそもユーロというのは大実験通貨だったと言って過言ではありません。勤勉さと技術力を合わせ持ったドイツがヨーロッパの中で再びあまり強大な経済力を持たないように押さえつけるという意味合いもあったのかも知れません。またドイツと言う国の褌を借りて、力の無い他の国が何とか生きながらえようと考えたからなのかも知れません。その当初の意図は別にして、異なる財政基盤を持つ国々が、地域的に密接な距離感になるからという理由でひとつの統一経済圏をつくろうと考えたのが通貨ユーロの始まりです。

ドイツ自体も東西ドイツの統合により疲弊していたところでもあったので、この通貨統合という施策に渡りに船とばかりに飛び付く要素が一部にあったのも事実です。経済力の強いドイツの通貨マルクは、放っておけば他の欧州各国の通貨に比べて強くなってしまいます。しかし通貨統合をしてしまえば、ユーロ域内であればいつでも同じ値段で商品を仕入れて、販売することが出来ます。また本来ならばマルク高によって是正されるべき貿易不均衡も、ドイツにとっては好ましい状況としてせっせと外貨を稼ぐことが出来ます。そしてまずは域内でせっせと稼ぎました。

しかし、結果として起こったことは、ユーロが他の通貨に対してどんどん高くなり、ドイツのユーロ域外への輸出は思うほどに儲けが出なくなってしまいました。しかし、当然域内では想定通りに稼げています。その積み重ねが結局南欧諸国を弱くしたのです。逆にユーロがギリシャ問題で崩れて弱くなるこの2年程度の過程では、ドイツは域外でも散々稼ぐことが出来ました。これが正に株価に素直に表れています。だからこそ、ドイツはギリシャにハード・ランディングはして欲しくないものの、適当に問題視されながらいることに、ある一定の居心地の良さを感じているように思います。

<同じ金融政策に別々の財政政策>

そもそも金利政策に代表される金融政策だけはECBの判断に委ねる形にして、その一方で財政政策は個々の国々に任せるとしたら何が起こるでしょうか?怠け者はより怠けるようになるという、とても単純な答えが返ってきただけのことです。

もちろん、通貨の相互保証と安定性のために、ユーロ圏諸国は安定・成長協定を尊重しなければならず、この協定は赤字額や国債発行に上限を設け、違反に対しての制裁規定も定めていました。協定ではもともとユーロ圏各国に対して毎年の赤字額の上限を GDP の 3% と設定し、この額を超過した国には罰則金を科すとしていたのですが、残念ながら途中から財政赤字額の基準は加盟国の経済情勢やそのほかの要因を考慮することを含む改定が採択されてしまいました。これが間違いをより大きくしてしまいました。結局は財政赤字を垂れ流しながらも、ユーロ圏全体の信用力を使って国債を発行する借金体質から逃れられない状態になってしまったということです。

サラ金に行かないとお金が借りられない人に、もし銀行がプライム・レートでお金を貸してくれると言ったら何が起こるでしょうか? それも金額枠はかなり自由に無制限な感じだとしたら。答えは恐らく余程克己心の強い人でない限り、働いて稼いで借金を返しながら慎ましやかに暮らすということよりは、適当に働いて、足りない分は低利の借り入れに依存するという結果を招くと思います。言い方は悪いかも知れませんが、今のギリシャ問題の本質はこれです。同じ金融政策で別々の財政政策という仕組みがうまく機能するわけが無いのです。

<ギリシャ問題とリーマン・ショックの違い>




当然のことながら、その正解はそうした事態が実際に起こってみて、蓋を開けてみないと解らないのは事実です。ただ一つだけ言えることは、仮に万が一ギリシャが破綻するというようなことがあったとしても、それは市場にとっては想像を超えるいきなり降って湧いた災難では無いということです。NYのワールド・トレード・センタービルにジェット旅客機が2機も突っ込んだような事件とも違います。正直、あそこ(ギリシャ)に大問題が潜んでおり、いつ爆発してもおかしくない状況にあるということは資本市場関係者たちの誰もが知っていることです。またUBSのトレーダーの起こした事件は、その上司さえも知りませんでしたが、ギリシャが危ないということは、今や誰もが知っていることです。

<言い訳の仕様が無い>

もしこの問題が実際に不可避な状態になってしまった場合、「まさかギリシャが破綻するとは想定していなかったので、これだけの大損を出してしまいました。」という言い訳が通じるかと言えば、少なくともまともなケースの場合、その一次被害の言い訳はかなり苦しいものになると思われます。勿論、それにより2次被害、3次被害と連鎖して行くような場合はこの限りではありませんが、通常、例えばファンドマネージャーたるものこういう局面では可能な限り“予めの手段”を講じておくのが普通です。むしろ、予めギリシャが破綻したら収益になるようなポジションを組もうとするかも知れません。

<材料出尽くしになる可能性>

もちろん、準備に怠りない慎重派だけでは無いので、実際にことが発生した時にパニックが起こるかも知れません。想定したシナリオを超える速度と規模でダメージが拡散することだってあり得ます。しかし、往々にして市場は突発的に不意を突かれることには脆いものですが、予め可能性が示唆されているものに対しては、仮に瞬間的にはネガティブ・リアクションを起こすことがあっても、案外立ち直りは早いものです。当然、その逆もよく起こります。期待されたことが現実になった時に天井を付けるという話です。私は楽観論者なのかも知れませんが、最悪な事態と思われる時が本当に来たとしたら、それは材料出尽くしの時になるような気がしています。

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楽天投信投資顧問株式会社
CEO兼最高運用責任者 大島和隆
(楽天マネーニュース[株・投資]第105号 2011年9月30日発行より) ==========================================================






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最終更新日  2011.09.30 12:55:18


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