『赤い指』
ごく普通のサラリーマン、前原昭夫の家族は、息子を溺愛する妻と、
15歳のひきこもりの息子と、痴呆症の母親の4人。
嫁姑の不仲は息子が生まれて以来ずっと続いており、昭夫の妹が、
母親の面倒を見に通っている。
問題だらけで、とっくに幸福とは言えなくなっていた家庭に、
ある日、さらに事件が起こる。
息子が見ず知らずの少女を、自宅のリビングで殺してしまったのだ。
息子の将来を守り、自分の身を守るために、両親は必死で知恵を絞る。
そして、恐ろしい計画を考えつく。
「この家には、隠されている真実がある。
それはこの家の中で、彼等自身によって明かされなければならない」
刑事・加賀恭一郎の謎めいた言葉の意味は?
なんとも悲しいお話。
最近の、亡くなったかも分からない老人、亡くなってるのにも関わらず、
家族が年金をもらっていた老人に比べたら、いいのか…?
いや、比べるもんでもないか。
母親は息子に対してやや過保護気味だけれど、ごくごく普通の家族。
そんな普通の家族を襲った、思いもよらない事件。
時折世間を騒がせる少年犯罪のニュースなんてものはまるで他人事、
まさか自分が、自分の息子が、こんなことに巻き込まれるなんて、
夢にも思ってもいない普通の家族が、もしその当事者となったら…。
息子を守りたいという親としての情動と、自分自身の保身というエゴが、
息子の罪を罪と認める気持ちと葛藤する。
隠し通せるわけでもないのに、息子の罪を隠そうとする。
そして思いついたのは…。
自分の親と、自分の子。
どちらも大切に違いないけれど、天秤にかけなければならないとすれば、
どちらを取るか…。
多分、どの親も、子を取るんじゃないかなぁ。
そして、その親は、そんな子を許すんじゃないかなぁ。
孫可愛さ、息子可愛さもあったと思う。
未来ある彼らの罪を、老い先短い自分が被ることができるのなら、
そうしたいと思うのが親心だろう。
だからと言って…。
私じゃないよ、私は見て知っているよ、と言うこともできたはず。
だけども、無言で訴え続けていたお祖母ちゃん。
そんなお祖母ちゃんの気持ちを、実の親を罪人にしようとしてまで、
自分を守ろうとした親の気持ちを、この息子も分かる日が来るのだろうか。
ミステリーとしての仕掛けもさることながら、
色んなことを考えさせられる一冊でした。
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