「 明日への遺言 (2008) 」 <ネタバレに相当する部分があります>
「私は必ず法戦には勝ってみせる。判決は御勝手にだ 」
監督は、「雨あがる (1999)」、「博士の愛した数式 (2005) 」の小泉堯史。
主演は、映画、TVシリーズ「てなもんや三度笠 (1967~1968)」、「必殺仕置人 (1973) 」などライフワークではないかと思える程の大ヒットシリーズの 「婿殿」 こと中村主水(もんど)を長年に渡って演じて来た藤田まこと。
共演は、 フェザーストン主任弁護人役にロバート・レッサー。
バーネット主任検察官約にはスティーブ・マックイーンの息子、フレッド・マックイーン 。
妻岡田温子役に 富司純子。
そのほか、法廷での証人役に蒼井優、田中好子など・・・
Story : 1945年、東條英機元首相らA級戦犯が東京裁判で裁かれる中、横浜地方裁判所では、戦争犯罪行為の命令者であるB級戦犯、及び実行者のC級戦犯の裁判が行われていた。東海軍司令官だった岡田資中将と部下19名は空襲の際、パラシュートで降下した搭乗員を捕虜として扱わず、正式な手続きを踏まずに処刑したことで殺人の罪に問われていた。フェザーストン主任弁護士の弁護のもと、岡田は、すべての責任は自分にある事を主張した…。
「2008年3月1日公開 」ー 作品情報 より ー
パソコンが思うように動かなくなって来たので、メモリを増設するより新しいのを買ってしまいました。もろもろの工事や設定や変更が済んで今週やっと通常通りの生活に戻れそうです。
19日に試写会で見せていただい本作でしたが、公開日の今日ようやくアップすることができます(笑)
コメントいただいていた方や、TBいただいていた方にはお返事が遅くなって大変申し訳ありませんでした。
さて、本作は、GHQ横浜BC級裁判で捕獲搭乗員38名の処刑の責任を争う岡田資(たすく)中将の戦犯裁判~処刑までの実話です。
ちなみに、「司令部において適当に厳重処分せよ」との私信を出した憲兵司令部外事課長は、「処刑せよという命令は出していない」と逃げ切り、無罪となっています。その結果、部下である現場の直接の責任者が多数有罪判決を受ける事になったのです。
その中で第十三方面軍司令官兼東海軍管区司令官東海軍司令官の岡田資中将は、自らの死をもいとわずに信ずるところを貫き通し、原作者大岡昇平に「 最後の武人 」と言わしめられるほどの高潔な人物でした。
岡田は、裁判の冒頭「私個人の弁護は考えないで貰いたい」と挨拶し、自分の下した命令のみならず、罪に問われている部下の行為に対する全責任を負おうとする態度を貫き通したため、その心情に対し判士団も検事団も、深く敬意を表したのです。
そのため、他のA級のみならず、B級、C級戦犯裁判でも実現し得なかったきわめて公正な裁判が行われたのです。
*参考 ) 「公廷でも降下B-29搭乗員を調べた結果、無差別爆撃を行った者のみを処刑した、と主張した。国際法に違反して、軍事目標でない都市爆撃を行い、多くの非戦闘員を殺傷したことを立証した。これはA級戦犯の市ヶ谷法廷、また横浜法廷でもなし遂げられなかったことである (「ながい旅」より抜粋)」
ほとんどが法廷シーンという静かな展開が続きます。
冒頭ではイラストや実写を織り交ぜながら終戦直前の空襲や焼夷弾により東京の辺り一面が火の海になり、一瞬にして灰と化し、そこにあったのは焼けただれた10万人とも言える無数の死体の山。
犠牲になったのは、逃げ遅れた病人、老人、女、子供の無力な人々・・・・・
一夜にして10万ともいわれる捕虜の数とは比べものにならないほどの多くの市民が一瞬にして死体の山になり。身内が目の前で殺された一般市民感情としても八つ裂きにしても足りないほどの憎い敵であるのは当然の事。
しかし、法廷では身内を亡くした岡田の部下大西が斬首に自ら志願しして直接処刑を行ったことにより大西がまっ先に名指しされます。岡田はその責任問題をすべて自分にあると主張します。
そして、裁判のメインテーマとなったのは、「ハーグ国際条約において禁止している非軍事施設や一般民衆を爆撃して、家を焼き非戦闘員を殺傷している国際法違反の容疑者への正統な処刑」と言う岡田側の主張に対して、パイロットなどの空爆に関与していない捕虜を略式裁判による斬首の刑に処した残虐性と国際法に対する違反との検察側の主張との争いでした。
つまり、処刑された捕獲搭乗員38名が国際法に基づく 「捕虜」 としての扱いを受けずに斬首された残虐な不法処刑として主張する連合軍の検察側と、非軍事施設や一般民衆無差別殺戮をした 「重罪人」 の処刑であったとの岡田主張との戦いでした。
「勝てば官軍、負ければ賊軍」・・っと私の祖父が口癖のように言っていたのを思い出しました。
通常なら敗戦国としては、これほどまでの公正な裁判は行われることなく戦犯として裁決され処刑されているのが現実。
藤田まこと演じる岡田の法廷での信念に基づく証言の一言一言に説得力を感じます。
検察側からの尋問はこの裁判には無関係な「パール・ハーバー」」にまで及びますが、まったく動揺することなく、あくまでも本法廷での岡田の一貫した主張に反しない、軍事施設への攻撃であったことで国際法においての正統性としての観点からの意見を述べるのです。
今の社会は、しっぽ切りというか、偽装事件が発覚しても部下や従業員のせいにして自分はのうのうと経営者として居座っている某事件の料亭や、怒りを感じ得ない醜いトップのあり方を日々当たり前のように目にしているだけに、この岡田のような高潔な精神がまぶしくさえ感じられます。
今国会で騒がれているイージス艦問題等でも、堂々巡りな答弁を繰り返しているくらいなら、その時間を割いて、議員全員がこの映画を見て少しでも見習ってもうらうほうがよっぽど国のためになりますね。
明日への遺言 オリジナル・サウンドトラック
■大岡昇平 『ながい旅』(新潮社刊)
~ おしまい ~
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