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January 9, 2006
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カテゴリ: 映画
副題に「史上最強の武器商人と呼ばれた男」。

悔しいほどに「面白い」映画でした。



ニコラス・ケイジの前口上から始まり、明るい音楽にのせて、カメラは弾薬の製造現場で、一つの弾丸を追っていきます。

火薬を詰められ、検査を受け、箱に詰められ、どことも知れない国に運ばれていきます。

『チャーリーとチョコレート工場』を思わせるような映像ですが、違うのはこれが人殺しの道具であるということ。

箱が開けられる度に、きな臭い空気が濃くなっていき、観ているこちらの不安は高まります。
そして、銃に込められた「彼」のたどり着く先は…。





銃に魅せられた日の事、「レストランが食事を出すように、必要な人間に武器を供給するのだ」という哲学。

彼を執拗に追う、イーサン・ホーク演じるインターポール刑事との頭脳戦。
ライバルの武器輸出業者との駆け引き。
暴力的な独裁者との、命を賭したやり取り。

手に汗握る見せ場の連続。
観ているうちに彼の「成功」を期待してしまう自分に気付きます。

彼を「絶対悪」として一方的に描くのではなく、彼の言葉を借りれば、たまたま武器の取引に「商才があった」、フツーの男として描いているからこそ。

その部分のリアリティを支えているのが、弟の存在であり、家族の存在です。
それに対する深い愛情が、彼に血の通った弱い人間としてのリアリティを与えているのです。

彼は、兄として「戦友」である弟が何かから逃げようとしている理由を理解できません。
夫として、妻に自分の本当の仕事を伝えることが出来ません。





ラスト、イーサン・ホークに「事態の深刻さを理解していない」と言われて返す言葉は、だから、それだけに重い。

全てを失った彼は、これから先、どう生きていくのでしょう。
イーサン・ホークの言う通り、「既に地獄に落ちている」彼の歩む道は、死に場所を見つける道行にならざるを得ないのかも知れません。

そして映画の最後に提示される事実は、皆が知っていながら、決して語られることのない本当のこと。


これだけの重い現実を背景にしながら、映画として、エンターテインメントとして、純粋に面白い映画でした。

音楽の使い方も絶妙。
目をそむけそうになる、残虐なシーンにかぶせて、軽快な音楽をのせる、ハリウッドの悪ノリを逆手に取った演出で、最後までエンターテインメントの姿勢を崩しません。



さて、今回、この文章を書くにあたり、松本仁一さんの『カラシニコフ』を再読しました。

カラシニコフ

世界で最も人気のある銃「カラシニコフ」=AK47 が世界で生み出した、いや、生み出しつつある悲劇を追った迫真のルポ。

世界の紛争地を体験して回った作者の感想。
「一番ほっとしたのは、その中に日本の自動小銃がなかったことだった。」

それは、「性能が悪いから」でも「値段が高いから」でもありません。
「輸出をしていないから」です。

ところで、現在、経団連では、「製造コストを下げるために」武器輸出三原則を見直そう、という動きを取っており、一部の政治家もその動きに乗って動いています。
詳しくは こちら

そんなに人を殺したいのなら、自分が殺されてみれば?

「国防」の問題と、「武器輸出」の問題は全く違います。
そもそもこの考え方は、「国防」の前に「外交」ありきであることが考慮されていません。

安く銃を手に入れ、国際評価を上げたければ、失敗国家から日本が銃を買い取って、代わりに教育などを提供するというのも一つの選択肢。
ま、現実的でないことは重々承知。

でも、武器輸出を行って、日本人の作った武器が他の国の人を殺すことに比べれば。



『ロード・オブ・ウォー』
 - "LOAD OF WAR "
2005年 ギャガ・コミュニケーションズ 122分

http://www.lord-of-war.jp/index2.html

監督:アンドリュー・ニコル
出演:ニコラス・ケイジ/イーサン・ホーク/イアン・ホルム/ジャレッド・レト/ブリジット・モイナハン

★★★★★





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Last updated  July 8, 2006 10:23:50 AM
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RonaldBus@ Transforming your landscape with gorgeous blue stone slabs. Understanding the Benefits of Choosing …
mrtk@jp @ Re[1]:本と共に~「ぼくらはそれでも肉を食う」(06/19) >そらねこさん コメントありがとうござ…
そらねこ@ Re:本と共に~「ぼくらはそれでも肉を食う」(06/19) はじめまして。本の題名につられてお邪魔…
浅葱斑@ 心のハレっていいですよね? こんにちは。 誕生日の暦から今の自分、未…
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