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May 6, 2006
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カテゴリ: 美術
水戸芸術館

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人間はどこまで残酷になれるのだろう。
人間はいつまで愚行を繰り返すのだろう。

「宗教」が人を殺すなら、私はそんな「神」を信じない。
「権力」が人を殺すなら、私はそんな「政治」を認めない。
「利権」が人を殺すなら、私はそんな「会社」を許さない。
「民族」が人を殺すなら、私はそんな「民族」に属さない。
「思想」が人を殺すなら、私はそんな「言説」を肯定しない。

私は「不偏不党無所属」。
神にも悪魔にも喧嘩を売って、それでも私は生き抜いてやる。

私は「不偏不党無所属」。
権力にも世論にも喧嘩を売って、それでも私は幸せに生きてやる。


 初出; 『大アンコール・ワット展』@そごう美術館
 改訂; 『ホテル・ルワンダ』

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好評は聞いていましたが、これほど密度が高い美術展だとは…。
心にズシンと響く、剛速球の展覧会。

水戸に足を運んだ甲斐がありました。

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作品数自体はさほど多いわけではないのです。
谷川俊太郎 先生、、 茨木のり子 先生、、 トルストイ の「言葉」が、展覧会を引き締め、統一感を与え、深みを加えています。

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第1室前半は、 アントニー・ゴームリー さんの作品。

硬質で重量感のある金属片が組み合わされ、デジタル化された人物像として立ち上がります。
組み合わされた破片の間から、向こう側が透けて見えるその空疎さ。

うずくまったもの、直立しているもの、寝て起き上がろうとしているもの。
人間という存在から「何か」を剥ぎ取った後に残る「何か」。

次の作品や、 オノ・ヨーコ

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第1室後半。
マイケル・ライト さんの≪ 100の太陽 ≫。

新聞などで、この作品について「最初美しいと感じてしまった」という評を聞いていたのですが、私は、最初から凍り付いてしまいました。



湧き上がるきのこ雲。
「もう一つの太陽」は、太陽とは別の「もう一つの影」を地面に落とします。
そして、それを無邪気に、あるいは真剣に眺める米軍兵士たち。

彼らは、後遺症とか、大丈夫なのでしょうか?

写真ではなく、小さな文字がびっしり書かれた作品が。
各実験兵器に付けられた「愛称」なのだそうです。
その数、名前に込められたユーモア…「 やつら 」の耳元で、声を大にして ふざけるなっ! と叫びたくなります。

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あわせて、 橋本公 さんの≪ 1945-1998 ≫も紹介しましょう。

何かの近未来ゲームのような世界地図が、投影されています。
右上のカウンターが1945年から時を刻みます。
それに応じて、地図の一部が点滅し、各国の国旗の横の数値がカウントアップされます。

そう、これは世界で行われた核実験の動的地図。
最後に地図はフルスピードで再度点滅します。
その数、2053回。
世界中が光り輝くその様は、背筋が凍る程に凄絶。

淡々と冷静に、ただ「事実」を映像化した作品。
しかし、この抑制の効いた距離感は、作家の「凄み」を感じさせます。
伝わる静かな怒り。

=====
核兵器は、人間の愚かしさの証明のような兵器です。
そして、この星を何度となく滅ぼせるだけの兵器が、この世界には存在しています。

しかし、これを美しいと感じ、力の象徴として、叡智の結晶として、崇める人たちが、この世界には多勢いるのです。

その残虐さを知ることもなく、この兵器を国の科学力と国力の証明だと無邪気に信じて熱狂する国々だってあるのです。

唯一の被害国は、唯一の加害国に遠慮して、その非人道性を世界に訴えることをしません。
それどころか…


=====
ジェームズ・ナクトウェイ さん、 広河隆一 さんの作品は共に「戦場」を舞台にした写真作品。

中にルワンダの子供の写真がありました。
頭にざっくりと残る三本のナタの跡。
生きていることが不思議な程の深い傷。

我々は忘れてはなりません。

「正義」という名の狂気は、子供の命すら簡単に奪ってしまうのだ、ということを。

そして。
我々もまた「正義」という名の狂気の下に、人を殺す可能性を常に抱えているのだ、ということを。

目の前で家族を奪われた少女が見せる、強烈な“無”表情。

チェルノブイリに漂う虚無。

宗教、民族、性別、差別、優越感、嫉妬、蔑視、暴力…

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オノ・ヨーコ さんの≪ 絶滅に向かった種族2319-2322 ≫。
「発掘された 滅んだ人類」というSF的着想をもとにした作品。

べンチの上で、まるで生きているかのような姿で「発掘」された家族。
2319-2322は西暦ではなく「それら」の分類番号。

作者は、それぞれの叫びを、夢を形にします。

「やめて 助けて」と繰り返される墓標の形をした石板。
鷲掴みにされ、えぐられる胸。
その恐怖のイメージは、しかし、親の世代のもの。

出色なのは、「娘のイメージ」とされる脚の石膏作品です。
最初は、真っすぐ膝が揃えられた両脚。
次では、片足が心もち持ち上げられます。
最後は、標本箱の外へ右足が一歩踏み出されます。
力強い、未来への一歩を感じさせる表現。

仏像(立像)の足が、一歩前に踏み出して表現されることが多いのは、仏は衆生を助けるために前に踏み出そうとしている、その表現なのだそうです。
そんなことを想起させてくれます。

そして、オノ・ヨーコさん自身による詩。

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その他の作品もあわせて、心に響く、ハイレベルの企画展でした。
ただ、語り続けると長くなるので、そろそろ筆を置きましょう。

最後に、展覧会に掲示されていた 谷川俊太郎 さんの「 くり返す 」を引用させて下さい。

くり返すことができる
あやまちをくり返すことができる
くり返すことができる
後悔をくり返すことができる
だがくり返すことはできない。
人の命をくり返すことはできない
けれどくり返さねばならない
人の命は大事だとくり返さねばならない
命はくり返せないとくり返さねばならない

私たちはくり返すことができる
他人の死なら
私たちはくり返すことはできない
自分の死を


いまぼくに
(谷川俊太郎詩集『いまぼくに』理論社 2005年)


=====
『人間の未来へ - ダークサイドからの逃走』
- To The Human Future
  Flight From The Dark Side

水戸芸術館 現代美術ギャラリー

[会期]2006.02/25(土)~05/07(日)

作者:-

★★★★★





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Last updated  May 29, 2006 12:24:12 AM
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RonaldBus@ Transforming your landscape with gorgeous blue stone slabs. Understanding the Benefits of Choosing …
mrtk@jp @ Re[1]:本と共に~「ぼくらはそれでも肉を食う」(06/19) >そらねこさん コメントありがとうござ…
そらねこ@ Re:本と共に~「ぼくらはそれでも肉を食う」(06/19) はじめまして。本の題名につられてお邪魔…
浅葱斑@ 心のハレっていいですよね? こんにちは。 誕生日の暦から今の自分、未…
I read your post and wished I'd wrtietn it@ I read your post and I read your post and wished I'd wr…

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