*Muku* Blog
2025
2024
2023
2022
2021
2020
2019
2018
2017
2016
2015
2014
2013
2012
2011
2010
2009
2008
2007
2006
1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10月
11月
12月
全1件 (1件中 1-1件目)
1
「樹木たちの知られざる生活」を読んで印象に残った部分を抜粋した。樹木たちの知られざる生活 森林管理官が聴いた森の声 (ハヤカワ文庫NF) [ ペーター・ヴォールレーベン ](森林管理者が聴いた森の声) 著者:ペーター・ヴォールレーベン ドイツの西部アイフェル山地にあるヒュンメルという地方自治体で20年以上働いていた著者が、人間本位の営林方法に疑問を持ち、フリーランスで原生林の森を保護する活動を始める。自然の森を愛し、樹木の良き理解者となった彼がその生態系を執筆した。 樹木の叫び人間と同じく水分が不可欠な樹木は、長く続く強い日照りや干ばつなどで水分が失われると、超音波の声で叫び始める。このことは、スイス連邦森林・雪・景観研究所でも科学的に立証された。根から葉に向かう水の流れが幹で途切れることで震動が生じて超音波が発生するという。 木は痛みを感じ、記憶を持っている。木はまた、どんな害虫が自分を脅かしているのかも判断できる。害虫は種類によって唾液の成分が違うので分類でき、害虫の種類がわかったら、その害虫の天敵が好きなにおいを発散する。すると天敵がやってきて害虫を始末してくれる。森の中ではすばやい情報の伝達を確実にするために菌類があいだに入っている。菌類は、インターネットの光ファイバーのような役割を担い、細い菌糸が地中を走り、密な網を張りめぐらせる。この菌糸のケーブルを伝って木から木へと情報が送られることで、害虫や干ばつなどの知らせが森じゅうに広がる。樹木は冬に備え、日の光をいっぱい浴びて糖質をつくり、それを皮膚に蓄えておく。樹木もクマと同じ冬眠の準備をする。落葉は樹木にとってはトイレをすませる機会でもある。私たちが寝る前にトイレに行くように、樹木も余分な物質を葉に含ませてから体から追い出そうとする。冬眠に入る前にすませておかなければならない。活動期の疲れを癒すためにも、休息は絶対に必要で、睡眠不足が命にかかわる問題なのは樹木も人間も変わりない。 助け合い木は根が同じ種類の木同士をつなぐ複雑なネットワークをつくっている。ご近所同士の助け合いにも似た「栄養素の交換」は規則的に行われている。樹木に限らず植物というものは、自分の根とほかの根をしっかり区別している。樹木は自分と同じ種類だけでなく、ときにはライバルにも栄養を分けてあげる理由は、人間社会と同じく協力することで生きやすくなることにある。木が一本しかなければ森はできない。森がなければ風や天候の変化から自分を守ることもできずバランスのとれた環境もつくれない。たくさんの木が手を組んで生態系をつくりだせば暑さや寒さに抵抗しやすくなり、たくさんの水を蓄え、空気を適度に湿らせることができる。木にとっても棲みやすい環境ができ、長年生長を続けられるようになる。だからこそコミュニティを死守しなければならない。中央ヨーロッパの針葉樹の植林地では、植林のときに根が傷つけられてしまうので仲間とのネットワークを広げられない。たいていは一匹狼として生長し、つらい一生を過ごす。そうした植林地の樹木は100年ほどで伐採されるので、どのみち老木にまで育つことはない。すべての動植物の五分の一は朽木に依存している。数にするとおよそ6,000種類にのぼる。朽ちて柔らかくなった木材が水分をたくさん蓄え、菌類や昆虫による分解で養分が豊かになるからだ。数えきれないほどのたくさんの種類のたくさんの命がつながり合って、お互いを助け合っている。海洋科学を研究する北海道大学の元教授、松永勝彦氏は落ち葉から出た酸が川を伝って海に流れ、そこで食物連鎖の最初に位置するもっとも基本的なプランクトンの成長を促すことを発見した。本書は、樹木も私たちと同じように感情を持ち、社会的な生活を営む”生き物”だからよりよく共存する方法を探さなければならないと結ぶ。樹木も人間のような感情があることに気付いた。森は太古の昔から地球と共存し大きな気候変動を乗り越えて幼い私たち人間にもたくさんの恩恵を与えてくれている。きれいな空気や水を創り、心地良い日差しを降り注ぎ人間にとって安らぎの空間を提供してくれている。木々は長生きして深い根を地中に張り巡らし手を結んで地盤の緩みを守っている。樹木のストリートチルドレンを造らないような公園造りや都市開発が今ある人間の重要な役目だと思う。
2022.06.30