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2025.02.23
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カテゴリ: 坐禅
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p.65-68

その頃、恐ろしい事件が起こった。
文吉のうしろについて商売見習いのため椋本という村へ行く途中だった。
足袋無しの素足で、膝の抜けた股引をはき、13歳の少年には大きすぎる提灯張替えの道具類を肩にかついでいた。文吉は手ぶらでぶらぶら歩いていた。
 突然大勢の人の叫び声が聞こえた。たちまち何十人もの斬り合いが始まった。
文吉は顔面蒼白になって腰が抜けたか、その場でへなへなになった。
よく見ると侠客どもは眼をつむってめくらめっぽうに刀をふり回していた。

 才吉は生来の豪胆さで、70人ばかりの乱闘をじっと眺めていた。

「そんなところで腰を抜かしていると、危ない、危ない」とおどかした。

 何人か死人が出て、乱闘は一段落ついたらしく侠客どもは刀をしまって散っていった。
 少年才吉は養父を励まし、知り合いの家に喧嘩の模様を知らせ、山へ逃げ込んだ男たちの今後の連絡方法を示し合す必要があった。
「よし、俺が行く」と才吉は提灯片手に傘をさし裸足で雨の中出て行って大任を果した。

 養父はあとで、「あのときほど才吉が気味の悪いことはなかった」と語った。
 そのとき以来文吉は今までのように才吉を殴らなくなった。
 才吉が出家して禅僧になったとき、文吉は「あいつは坊主になりよったが、じつは恐ろしい奴であのとき以来、わしはあいつをよう殴らなくなった」と語った。





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最終更新日  2025.02.23 07:00:14
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