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2025.02.24
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カテゴリ: 坐禅
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p.76-78

才吉は大阪に逃れて連れ戻された後、また提灯張替えの仕事を続けていた。

その頃、聞いた坊さんの話に、親鸞聖人の「うらぎぬの御書」に、お袈裟の片端を得れば竜王も金翅の難を免れるとあり*、
世界で一番強い竜王も大敵金翅鳥には食い殺されるが、お袈裟のきれはしを持っていると、難を免れるということだった。
また、漁夫がお袈裟を得れば、風波の難から助かると、坊さんは面白く話してくれた。

才吉はどうにかして坊さんになってお袈裟を着たいと思った。どうしても坊さんになると心に決めた。
仏照寺の住職に相談すると「わしは浄土真宗の坊主じゃが、お前は門徒宗の坊主にはなりはんな」
「真宗は最初から妻帯を認めたが、後には妻を持たない僧は教えに反するように言われて肩身がせまくなった。ところが、わしのように女房を持って五人も子供ができ、まだ夜に小便するのが二人いるのに、女房が死んだので、えらい苦労じゃ。女房を持つ以前には、各地を廻り歩いた。一切衆生を教化するんだという意気込みだった。しかし女房持ったら、衆生のためは二の次になり、我が家のためにの方が第一になった。女房が死んだら、一切衆生は念頭になくなり、ただもう餓鬼を食わせて学校にやること、病気の気遣いすることだけになった。説法もお経も上手になったが、それはお布施稼ぎみないなことだ」

 わしは越前を説教して歩いたとき、永平寺に立ち寄ったことがある。あれは立派な禅寺じゃ。そこへ行ってみなはれ。」
「お前が行っても、寺に置いてくれるかどうか。それはわからんが、大きいお寺だから一人や二人ふえてもどうということはない。だから置いてくれんとは決まっていない」

明治29年6月10日才吉は夕闇にまぎれて家をとび出した。家から持ち出したのは小田原提灯一つ。ほかに身につけた縞の一重だけで、一銭たりともお金は持ち出さなかった。

仏照寺の和尚は才吉の悲壮な決心に胸を打たれ、その夜は寺に一泊させ、翌朝なま米二升と銭27銭を恵んでくれた。

なま米を食べながら桑名まで歩き、桑名から川船で大垣へ渡った。船賃15銭で12銭残った。
それで葉書を買って、養父と実の姉と兄、親類に家出を知らせ「坊主になる念願だから心配無用」と書いた。

残った4銭でソラマメの煎ったのを4合買って、琵琶湖の北のしずがだけに近い木之元まで歩いた。
地蔵堂で眠り、翌13日、今庄につきここでも地蔵堂で寝た。
翌14日、5日目にやっと福井に着き、夜中に永平寺に着いた。


*建暦元年(1211年)の冬、流罪を赦免されて地方教化に赴いていた親鸞聖人。
訪れた伊勢国(三重県)桑名では、漁師に対して念仏を勧めるため、袈裟の裏に法語を記して渡していました。


たとひ一形のあひだ悪をつくるとも、宿業(しゅくごう)のがれがたく、さりがたきは如何にせん。

龍王すら袈裟の片端を得れば金翅(こんじ)の難をのがれ、浦人(うらびと|漁師)袈裟を得れば風波の難なし。
いはんや万善所帰の法船、仏智施与の信帆、あに煩悩の風を恐れんや、あに妄念の波に沈みなんや。願力不思議なればなり。
ゆめゆめ、これさらに親鸞が私に申すことにあらず。六法恒沙の諸仏の証誠にて候なり。あなかしこ、あなかしこ。念仏往生証拠のため、予が袈裟の裏衣(うらきぬ)に記しはべる。

南無阿弥陀仏
建暦第二 十月九日
桑名の浦人へ
愚禿


今昔物語

今は昔、諸々の龍王は大海の底を以て栖とす。必ず金翅鳥の怖れ有り。亦、龍王は無熱池と云ふ池を栖とす。其の池には金翅鳥の難無し。大海の底に有る龍が子を生たるを、金翅鳥、羽を以て大海を扇ぎ干て龍王の子を取て喰んとす。

然れば龍王、此の事を嘆き悲んで、佛の御許に参て佛に申して言さく、「我等、金翅鳥の為に子を取られて、更にすべき方無し。何としてか此難を免るべき」と。佛、龍王に告て宣はく、「汝ぢ、比丘の着せる袈裟の片隅の地裂を取て、其の子の上に置くべし」と。龍王、佛の教の如く袈裟の片隅の地裂を取て、子の上に置つ。其後、金翅鳥来て羽を以て大海を乾して龍王の子を求むるに、更に見えず。然れば金翅鳥、終に龍王の子を取る事能ずして歸ぬ。

此の鳥をば迦楼羅(かるら)鳥とも云ふ。此の鳥の二の羽の廣さ、三百卅六万里也。然れば大さ・勢ひ、思ひ遣べし。亦、猶、袈裟をば貴び敬ひ奉べし。袈裟の片隅の地裂を上に置たるだけで、金翅鳥の難を免かる。いかに况や、袈裟を着せらん比丘をば佛の如に敬ふべし。譬ひ破戒僧也と云とも軽め慢づる事無かれとなん語り傳へたるとや。





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最終更新日  2025.02.24 13:00:09


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