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2025.11.09
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カテゴリ: 坐禅
「禅談」沢木興道述(沢木興道全集第2巻)

坐禅の本領  その8

 ただこうやって坐ってみればよい。一切経は博士論文である。坐禅を論文に書いたまでで要点は要点は坐れればよい。そこが、「教外別伝」である。坐禅は思うことではない。書くことでもない。坐禅は仏道すること、仏法することである。また教外別伝、不立文字である。歩兵操典の「右向け!右」はいくら読んでも文句だけではなかなかわからん。「左に向きを変え」というのもどういう具合に文章に書いてあるか、三十年むかしにはわたしも講義したけれどもいまは忘れている。そんなことは講義じゃない。「右向け!右」実際やってみればよい。仏道することである。実際することである。そうすることが仏道の正門であり、坐禅である。
 仏教というものは、坐禅の中から見るものである。坐禅をすることは成仏することである。するとある人は「イヤ坐禅しにきておりますけれども成仏しておりません」とこういう。そこのところがお経にある。
 盗人でなければ人の物を盗らん。正直者が人の物を盗るから盗人である。また盗人だから人の物を盗るのである。そうすると、成仏せぬと坐禅はせぬものである。だから、ここで坐禅していると、そのままそれが成仏である。偉いものじゃとこう思う。
『法華経』に長者の窮子というのがある。
 ある長者が一人の子供を持っていた。その子供が、家を飛び出して長い間流浪している。よくよく根性がひがんで、ルンペン根性になっていた。父は一日も子供を忘れることなく、子供のことばかり思っておった。ある日のこと、向こうをその子供が、見すぼらしい姿で歩いていた。さっそく家来に命じて追っかけさせた。ところがその流浪の子供は、これは、殿様の怒りにふれて、家来が自分を追っかけているのだ、と思って逃げ出した。一生懸命逃げるのをやっと捕らえると、「わたしは悪いことはしない。どうぞ勘弁してください」と、とうとう気絶してしまった。それを見た父の長者は、もっともみにくい顔をした風采の悪い男にいいふくめて、水をかけて、気絶している息子に活をいれさせた。
 それからその家来に「どうもおれはお前を兄弟のように思う。おれと一緒に歩かんか」といわせ、表門からいれるとまたこわがって逃げるとこまるから、馬小屋の方からいれさせた。さらに家来は、「どうだおれと一緒に、この馬小屋の糞掻きをしないか。この糞掻きをしていれば、うまい物を食わせてくれるんだよ」とはじめは弟子の食べさしの残りをやった。「これよばれてよろしゅうございますか」「うん、いいからしっかりお食べよ」こんな具合にしてだんだん教育してきた。

 そこで父の長者は、ある時親戚一同の人を招待して、「みなさん、わたしには一人の子供がある。実はこうこういう具合に五十年の間考えた。はじめ子供を見つけて、家来を遣わして追いかけたら気絶した。そこで家来にいいふくめて、それをさそいこんで裏口からいれ、馬小屋の糞掻きから段々と仕上げていって、一番番頭にまでしたけれども、まだ自分の給金以外のものは、自分のものでないと思っている。そこで今日隠居して、この財産を全部この子供に渡しました」といった。はじめてこの家中の物が、みな息子の物となった。
 成仏ということは世界中一切のものが自分の物になってしまうこと、自己に親しむということは一切世界のものが自分になることだ。「聖人無己、靡処不己、天地同根、万物与吾一体」この気持ちがすなわち成仏である。正しい坐禅が仏道と波長があうということは、己をむなしくしておのれがなくなることである。自分で考えるところがなければ、一切の物がそのままである。
  坐禅せば四条五条の橋の上往き来の者を深山木に見て
 非思料ということは、無理せんこと、ありのまま、一切世界がそのまま、一切の物がそのままである。好いて眺める、嫌うて眺めんというのではない。(『禅談』p.219-222)





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最終更新日  2025.11.09 11:30:05
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