私の会社の、コンサルティング部門のスタッフは、主に高速ツアーバスの企画実施会社に対して、商品設定や価格、ウェブ上での商品の見せ方などについてアドバイスをするのが仕事である。やはりその柱は、レベニューマネジメント概念に基づき、詳細なデータ分析から各社に適切な台数と価格を提案することである。余談だが、高速ツアーバスの企画実施会社は、私のサイトに販売を委託する座席数を、日ごと便ごとに、インターネットでつながった管理画面を通してリアルタイムに変更することができる。「今週末は自社サイトの販売分だけで満席になりそうだから」「別の販売サイトの方が手数料率が低いから」、逆に「このままだと絶対に売れ残りそうだから」など、各社は常に自社の判断で委託席数をコントロールするわけで、私たちも「頼りにしてもらう」ために情報提供に手を抜くわけには行かない。そういった現在の取引先へのコンサルに加え、自社で旅行業免許を持つ中堅以上の貸切バス事業者に対して、自ら高速ツアーバス事業に参入しないか勧誘?に回り、業態全体の規模を大きくするものコンサルティング部門の業務である。
一方、私の会社のマーケティング部門は、高速バスを予約しようとしている人たちをサイトに集客するのが仕事、ということになる。これも大きく二つに分けられる。一つは、「今まさに高速バスを予約しようとしている」人たちを、一人でも多く私のサイトに誘導することである。その大きな柱は、検索エンジン対策だ。利用者が、YAHOO! やGoogleといった検索サイトで「高速バス」「高速バス 名古屋」などと検索した際、なるだけ上位に私のサイトが表示されるよう工夫するのだ。
『運輸と経済』に掲載いただいた論文でもご紹介したが、YAHOO!で「高速バス」というワードを入力して検索される回数は、月間で約60万回ある。「ホテル」というワードで検索される回数が約30万回、「航空券」が15万回というのと比較すると、その数は驚くほど多いと言えるだろう。高速バスを予約する人の数が日本中のホテルを予約する人より多いとは思えないのだが、検索回数は高速バスの方が2倍もある。理由はカンタンで、ホテルや航空券を予約したい人は、最初から「帝国ホテル」「ANA」といった風に目的の社名ブランド名で検索するのだ。対して高速バスの場合は、高速バスを運行している会社名もブランド名もよくわからないから、一般的な「高速バス」「夜行バス」といったワードで検索する。地方在住者の場合は、地元の路線バス事業者は基本的に1社しかなく、その事業者が東京行きも大阪行きも一手に運行しているから話はまだカンタンだが、大都市在住者にとってバス事業者の存在感は極めて小さい上に高速バスの事業者も行き先別にバラバラで、上記のような検索行動につながっているのである(ちなみにこの検索エンジン対策について、JRバスグループは非常に積極的であり、かなりのコストをかけておられると思われる)。
検索エンジン対策が「プル型」(高速バスに乗ろうとしている人を自社に誘導する)マーケティングの代表だとすれば、「プッシュ型」(高速バスの認知度を上げ需要を喚起する)の代表がメールマガジンだ。昨日も、四国地区在住の会員に対象を絞ってメールマガジンを配信したばかりである。顧客に会員登録を促し、ポイント還元などでリテンションを図りつつ、属性(居住地や年齢、性別など)をデータベース化しセグメントごとにダイレクトメールを送付して需要喚起する、という手法は世の中で広く行なわれているが、実際のダイレクトメールが印刷や郵送に費用が発生するのに比べると、電子メールなら直接費用はほとんど発生しない。
しかし当然、「送り放題」という訳ではない。興味の無いメールであればすぐに「ゴミ箱」に直行だろう。あえて、四国地区とか青森県とかいったように地域分けして送信するのも、メールの「件名」(タイトル)に、「高知」とか「八戸」など親しみ深い地名が入っていると実際に目を通してもらえる率が上がることが証明されているからだ(本物のダイレクトメールであれば、郵便受けに届いた葉書を実際に読んでくれているのか捨てられているのかさえわからないが、電子メールならクリックした人の率まで計測しそれを元に開封率を上げる工夫もすることができる)。
このほかにも、ポイント還元によって利用を促すキャンペーンや、パブリシティ(新聞やテレビのようなマスメディアへの露出)など、マーケティング部門の「打ち手」は幅広い。
ただ、上記のような手法は、あくまで「いま」の姿でしかない。マーケティングに供される技術もアイデアも、驚くべきスピードで進化を続けている。そのうち、私のサイトのような中間業者をかませなくとも、利用者が乗りたい日の乗りたい区間の空席を一覧的に見られるようになるかも知れない。「予約」「発券(決済)」のあり方も、どんどん変質していくだろう。従来のやり方に固執することなく、新しい技術と利用者のニーズに常に敏感にアンテナを張り、バス業界を変革するお手伝いを続けられれば、と考えている。
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