成定 竜一~高速バス新時代~

成定 竜一~高速バス新時代~

2009.10.16
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カテゴリ: 高速路線バス
JRバス関東が新宿-佐久・小諸線を新設 すると発表した。既に西武・千曲バス系の池袋-軽井沢・佐久・小諸・上田(長野三線)が定着している区間への後発参入だけに驚くが、何よりも内容(ダイヤ、運賃)を見て「本気」の度合いが伝わってくることにびっくりだ。私鉄系高速バスが定着している昼行路線にJR系が後発参入というと大阪-有馬温泉などの例もあるが、「本気さ」では比較にならない。

私もうっかり「新宿-小諸」「西武・千曲」のように、さも東京側が起点のように書いてしまうが、このブログで繰り返しているように実際の利用者のほとんどは小諸側の居住者だろう。「だからこそ、私のサイトが東京側の需要喚起をお手伝いするのだ」といういつもの主張はいったん置くとして、このような短・中距離の昼行路線において、早急に需要を喚起して、または既存路線から転移させて足元において事業として成立させるには、現地(この場合は小諸地区)側の乗客を取り込むのが早道であるのは明白だ。ところが多くの場合、西武・千曲のように私鉄系の高速バスが既に運行しており、業態が高速路線バスであろうが高速ツアーバスであろうが、この種の路線ではなかなか後発参入が成功しない。

後発参入が成功しない理由の一つが、既存路線が地域住民に十分に定着していることである。1980年ごろに「共同運行」制度ができたことで地元の老舗路線バス事業者が自ら高速バスを運行に参入して以降、彼ら自身の地元での存在感の大きさから地域住民の中で高速バスの認知度は非常に大きい。利用者は予約センターの電話番号を暗記する(最近では既存事業者のサイトをPCやモバイルでブックマークする)など習慣的にリピートするようになっている。もう一つが利便性の問題である。定着すればするほど既存路線の便数が増えフリークエンシーが向上する。「朝の東京行きは予約しておくけど、帰りは用件が終わってから乗り場に行ってその場で購入する」「とりあえず遅い便に予約しておいて、用件が早く終われば前の便に変更して帰る」といった利用が定着すると、後発参入組が恐る恐る1往復程度で参入してもなかなか転移しないし、事前予約・決済を必須とする高速ツアーバス業態ではさらに難しい。この種の短・中距離路線で、既存路線と新規路線が対等に競争(高速路線バス同士のダブルトラックも、高速路線バスと高速ツアーバスの業態間競合も含め)できている区間はほとんどない。

ただ、この小諸に関しては若干だが状況が違う。JRバスが現地に営業所を持っていたにもかかわらず諏訪岡谷線のような形で私鉄系路線に共同運行として参入していなかった(結果として弾を温存していたことになる…)という背景もあるが、既存の私鉄系路線に少し盤石さが足りなかったのも事実である。夜行と昼行をかませる長距離路線中心の西武系高速バスのスタンダードに合わせたのか、この種の中距離路線としてはポテンシャルの割りに便数は少ないし、覚えやすいパターンダイヤ(毎時●分発)でもないし、何よりも現地側の始発時刻が遅く終着時刻が早いため、現地側居住者の東京滞在時間が短い。「ウチの高速バスはこういうやり方」という思い込みの罠に誰しもが陥りがちであり(別に西武バスを非難するつもりではなく、どの業界どの会社でも陥る罠である)、性格の違う新潟線や富山線のやり方の延長線上で長野三線を運行しがちであったと言えるのではないか。さらに池袋が、東京側の起点としては新宿などに比べて少し弱いというのも不利な点だ。

制度上は乗合事業の新規参入が容易になったとはいえ、事実上、市内バスや短・中距離高速バスでは既存事業者による独占・寡占が続いている。それは既存事業者のここまでの努力の賜物であり私は心から敬意を払うのだが、一方で、それぞれの路線が、本来のポテンシャルまで需要喚起できているか、といった計測を難しくしているのも確かだ(完全な競争状態では、例えばトヨタが努力不足で特定の市場にアプローチできていなければ日産が掘り起こす、といったことにより需要は喚起されていくのだが)。我が国で高速バスをここまで育ててきたのは主に私鉄系の既存事業者であることは間違いないが、現状に満足してしまい、掘り起こし忘れた「余地」を市場に残してしまえば、いつか誰かがそれを掘り起こしに来る。

今回のJRバス関東のダイヤを見ると一気に8往復からスタート。午前の上りと午後の下りに集中しており、小諸側から東京往復に便利な、いわゆる「現地ダイヤ」。上り始発便の新宿着は朝8時、下りの最終は新宿を22時40分に出て小諸着が深夜1時半と東京での滞在時間は十分だ。また、新宿-佐久地区で言うと高速ツアーバスは既に6往復(週末)まで成長している。全国の既存事業者は、佐久・小諸を対岸の火事と見てはならない。難しい時代が来たと頭を抱える事業者もあるだろうが、答えは簡単だ。どの事業者も、自らの商品の内容(ダイヤ、運賃・料金、車両タイプ、発着地、安全性への配慮など)と、その商品の告知・販売手法が、本当に利用者の方を向いているかどうかを常に振り返る。ただそれだけのことである。





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Last updated  2009.10.16 17:41:28
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JRバス参入  
basukeiei さん
ご指摘の通り、後発組の成功例は少ないと思いますが、JRバスの8往復運行は、先発の西武千曲にとっては、脅威ですね。追い抜かれるかもしれませんね。
興味深いです。
(2009.10.16 23:40:23)

(続き)  
basukeiei さん
現役だと、気合が違いますね。
先週、JRバス関東のHPを見たのですが、気がつきませんでした。
しばらくあとになりますが、バス経営情報でも、JRバス関東の小諸・佐久線のニュースをのせさせてもらいます。 (2009.10.16 23:55:48)

Re:千曲の流れは「たゆたう」か?(10/16)  
経済人@尾張藩 さん
いつも、返信をいただきありがとうございます。
さて、JRバス関東の最近の動きは長距離路線の開設には消極的で、どちらかといえば大都市間を結ぶ路線以外は撤退したいのではないかと推察しています(例:ラ・フォーレ号の撤退)。
その代わり、東京からの短中長距離路線の充実に力を入れているようですね。昼行便の高頻度輸送は路線バス業者の特性が一番活かせることが理由だと思います。
ただ、現在では考えられる路線はほとんど開設済みですから、今回の小諸線のような事象が多くなるように思います。各バス事業者間の切磋琢磨に期待したいと思います。 (2009.10.17 11:43:15)

(誤字の訂正)  
経済人@尾張藩 さん
>「短中長距離路線」は間違いで、「短中距離路線」が正当です。
ごめんなさい。 (2009.10.17 12:43:55)

Re:JRバス参入(10/16)  
nalys  さん
basukeieiさん、経済人@尾張藩さん、いつもコメントをありがとうございます。
そうですね…高速バスを取り巻く環境は変化していますね。需給調整規制の撤廃(路線権の消滅・内部補助概念の否定)、上限運賃制度導入(運賃割引の事実上の自由化)といった制度サイドの変化だけでなく、販売サイドでも、プロモーションから予約受付までの手法の多様化(従来は車内吊りポスターなどで告知⇒電話予約だけだったのがウェブマーケティング⇒ウェブ予約が普及。IP電話の発達で電話予約センターも地元以外で集約対応、など)も起こっています。
「大都市の大手私鉄系+地方の老舗」という共同運行ペアは、制度サイド(路線権)、運用サイド(地上設備の相互使用)、販売サイド(地場での販売力)それぞれにおいて理想的な組み合わせだったわけですが、いま必ずしも「地盤・看板・カバン」の三種の神器は必須ではなくなってきている…その象徴がJRの小諸線ですね。この路線が生まれた背景は、決して規制緩和だけではなく販売環境の変化もあると思います。おっしゃるとおり、この路線の今後を見守りたいです。
追伸:basukeieiさん、ブログ2周年おめでとうございます。 (2009.10.19 18:26:46)

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