成定 竜一~高速バス新時代~

成定 竜一~高速バス新時代~

2009.12.01
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カテゴリ: 高速路線バス
既存事業者の皆様から「規制緩和が悪かった」という意見を聞くことは多い。まあ、「平場の路線バス」(地域の路線バス)については、「結果として退出が容易になり、過疎地路線の多くが廃止された」という主張は理解はできるし※、同様の例で郵政民営化に至っては国会の場でまだ議論が続いているくらいだから、「どっちが正しい」と完全に決め付けられるものではないだろう。
研究者のブログ によると「規制緩和後に路線撤退が増えたというのは誤解」とのことではあるが。データを見れば一目瞭然で、規制緩和以前の方が路線廃止が多いのだという。この手の「実際には違うのだが、一見正しいように見える論理」はけっこう多いだろう。自分も注意しないと。

さて高速バスについては、制度的な需給調整撤廃以降(あるいはそれを待たずに行政の運用により)、高速バスの新規参入の例は若干見ることができる。ただその多くが、「旧来の事業エリア以外で高速バスの路線を開設する」「既に他の既存事業者が運行していた路線に、後発参入してマルチトラック化する」という例がほとんどで、趣味的にはその過程はずいぶんと興味深いものの、ビジネスとしては「同じムラの住民同士の問題なので、勝手にやってくれ」とでも言いたいところだ。一方で、意外なところで事実上の新規参入が進んだ。高速ツアーバスという新業態が生まれ、行政もその存在を追認するに至ったのである。これは、直接的には乗合バスの規制緩和とは関係無い。しいて言えば、貸切バスの需給調整が撤廃され貸切バスの単価(チャーター代)が下落したことで、それまで冬場の閑散期に限定して運行されていたスキーバスのモデルが通年化したことによって誕生しており、「お隣」の貸切バス業界の規制緩和が間接的に高速バスに影響したということである。ただ、それまで「乗合類似行為」と呼ばれていたモデルを行政が認めたことによって新規参入が増加したという点、広い意味では「規制緩和」と言えるかも知れない。

この「広い意味での規制緩和」に対しては、当然のことながら既存事業者の愚痴が途絶えることは無い。先週お話したある大手事業者の方も「まあ、おカミが認めちゃったんだから、ウチらは何も言えないけどさ」というような言い方だった。既存事業者の立場を考えるとそのお気持ちはよくわかる。ただ私が問いたいのは、いま高速バスを巡って起こっている変化は、本当に制度的な変化、あるいは高速ツアーバスに関する行政の判断といった問題だけなのか、という点なのだ。

従来、乗合事業者と貸切専業者の間で、一つの大きな断層が存在した。例えば日の丸とかKMといった老舗の貸切専業者は、貸切バスの品質的な部分では鉄道系の乗合事業者と大きな差は無い。ただ両者には明確な違いがあって、「B to C」(個人向けの販売)をするノウハウの有無である。乗合事業者は、高速バスにせよバスツアーやスキーバスにせよ、車内吊り広告などのプロモーションによって認知を高め、予約を受け付け窓口で発券する手法を持っている。それに対し貸切専業者は、どんなに老舗でも、原則、それらを持っていない。わかりやすく言うと「1人いくら」で販売できるノウハウがあるのは乗合事業者で、専業者は「1台いくら」でしか売れなかった。だから、仮に20年前に高速ツアーバスというビジネスモデルが認められていたとしても、ヤサカや帝産が自らそれに進出することは容易ではなかっただろう。中小旅行会社に過ぎないオリオンツアーや西日本ツアーズ(現・ウィラートラベル)らが高速ツアーバスに参入した当初も、中小旅行リテーラーの限られた販売力と極端な価格訴求に頼るしかなく成長も限界があったし、そう考えると、今日の高速ツアーバス「以前」における高速バス新規参入の挑戦(古くは銀嶺バス、最近では富士交通/桜交通など)が、口コミで集客できる地方都市マーケットに集中していることも納得できる。

その断層を突き崩したのが、インターネットに代表される「販売力のフラット化」である。ウェブマーケティング(予約サイトでの代売もそうだし、SEOに代表される自社サイトの集客力向上もそうだ)の活用により、「老舗」「大企業」のアドバンテージが磐石なものではなくなった(完全にアドバンテージがなくなったわけではないが)。近年、リアルな広告媒体(テレビCMなど)のコストが全体的に下がっていることで、積極的な広告展開をすることも容易になった。今日の高速ツアーバスの成長は、単に制度的な(厳密には行政による運用の)変化という背景だけではなく、流通構造の変化に大きく支えられているのである。

「販売力のフラット化」は、何もバスだけに起こっている現象ではない。大手商社などによって形作られた硬直化した流通が、ユニクロのような新業態やウェブ販売の成長によって揺らぎつつあることは間違いないし、私の古巣である宿泊産業(ホテル・旅館)においても、ウェブ予約の普及により大手旅行会社の呪縛からようやく解き放たれつつある。そのような中での高速ツアーバスの成長である。「バス事業者は国の方針に振り回されている」「俺たちにはついこの間まで、乗合許可を取れって言ったくせに」という気持ちはわからないでもないのだが、そういった制度面の変化だけで高速ツアーバスを捉えようとすると問題の本質を半分しか見ていないことになる。

我が国では既存の商店街を保護するために「大規模小売店舗法」がかつてあり、それに基づき各地の商店街でGMS(ダイエーなど)の出店が制限された。今日では同法は廃止されたが、そのとき既に消費者の志向が郊外型大型ショッピングセンターに移っており、当初は反対運動と調整してまで出店したGMSも中心市街地から撤退をしようとする今、「商店街の人通りが減るから撤退しないでくれ」と逆に泣きつかれてもどうしようもない。その間、商店街は真剣に生き残りの方法を探ってきたか。クルマ社会の到来やワンストップショッピング志向といった消費者の変化に目を背け続けた結果、多くの商店街が、たとえ温かい保護があったとしてもシャッター通り化は免れえなかったのである。





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Last updated  2009.12.01 18:20:43
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京帝117@ ご参考まで この度 K電鉄バスの取締役安全技術部長に…
京帝117@ 残念でした 他にメッセージをお送りする方法を知らな…
成定竜一@ Re[1]:中央高速バス~ふたつの路線~(02/24) 京帝117さん、コメントありがとうございま…
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