従来、乗合事業者と貸切専業者の間で、一つの大きな断層が存在した。例えば日の丸とかKMといった老舗の貸切専業者は、貸切バスの品質的な部分では鉄道系の乗合事業者と大きな差は無い。ただ両者には明確な違いがあって、「B to C」(個人向けの販売)をするノウハウの有無である。乗合事業者は、高速バスにせよバスツアーやスキーバスにせよ、車内吊り広告などのプロモーションによって認知を高め、予約を受け付け窓口で発券する手法を持っている。それに対し貸切専業者は、どんなに老舗でも、原則、それらを持っていない。わかりやすく言うと「1人いくら」で販売できるノウハウがあるのは乗合事業者で、専業者は「1台いくら」でしか売れなかった。だから、仮に20年前に高速ツアーバスというビジネスモデルが認められていたとしても、ヤサカや帝産が自らそれに進出することは容易ではなかっただろう。中小旅行会社に過ぎないオリオンツアーや西日本ツアーズ(現・ウィラートラベル)らが高速ツアーバスに参入した当初も、中小旅行リテーラーの限られた販売力と極端な価格訴求に頼るしかなく成長も限界があったし、そう考えると、今日の高速ツアーバス「以前」における高速バス新規参入の挑戦(古くは銀嶺バス、最近では富士交通/桜交通など)が、口コミで集客できる地方都市マーケットに集中していることも納得できる。