成定 竜一~高速バス新時代~

成定 竜一~高速バス新時代~

2010.05.12
XML
カテゴリ: 高速ツアーバス
『トラベルビジョン』で、 ゴールデンウィークの送客実績

この種の話題を取り上げるたびにいつも同じコトを書いている気がするが、上記記事を読んでいただいてわかるとおり、成長率だけで見ると大都市と地方都市を結ぶ路線の方が、大都市同士を結ぶ路線よりも成長率が大きい。首都圏~京阪神が2割増、首都圏~名古屋が3割増、首都圏~仙台が4割増だったのに対し、首都圏~北東北(青森/秋田/岩手)が5割増、首都圏~四国や首都圏~九州は2倍以上といったくらいだ。記事には無いが、首都圏~山形県も約3倍、福岡~鹿児島も約2倍と地方路線の伸びが大きい。これまで、そのような成長率の差について「地方路線がまだまだひよっこだから」とご説明してきたが、さあ、そろそろ既存の高速バスに本気で影響を与えるレベルには成長してきただろうか。

何度も書いているが、これまで高速ツアーバスは大都市間路線を中心に成長してきた。中心に、というよりは、ごく一部の例外を除けば大都市間路線“だけ”だったと言っていいくらいだ。大都市と地方都市を結ぶ夜行路線(例えば東京~青森、大阪~鹿児島など)で既存の高速バスに全く影響が無かったといえば嘘になるが、本当に既存の高速バスに大きな打撃を与えたのなら、高速ツアーバスがある程度の存在感を得て以降でも高速路線バスの便数が増えた東京~鶴岡/酒田や東京~岡山のような例は生まれなかったはずだ。

もちろん、地方の既存バス事業者が「ツアーバスに乗客を奪われた」と主張する気持ちはよくわかる。これまで無風だったところに、微風とはいえ風が吹いたことは事実だからだ。地方の事業者は(何らかの「不条理感」がそれを増幅させることもあり)、「ツアーバスに攻め込まれている」という相応の危機感というか被害者意識を既に持っているだろう。しかし、高速ツアーバス全体の数字を見ることができる私の立場からすれば、とにかく高速ツアーバスの地方都市路線などこれまで本当に「ひよっこ」に過ぎなかった。一方で高速ツアーバス各社は、大都市間路線の成長率が上記のとおり鈍化していることを受け、これから本気で地方路線を攻め始める段階にある。

そこに、私は何かしらの危惧を感じている。地方の既存バス事業者は、もしかしたら「ツアーバス慣れ」してしまっているのではないか。もちろん彼らの被害者意識は相当なものだろうし、政治的なアピールも含め既存バス事業者が「ツアーバスに乗客を奪われ困っている」と声高に主張していることは、その矢面に立つ私自身がよく知っている。しかし現実には上記のように、高速ツアーバス各社が(一部の例外を除き)地方路線に本気だったというか、地方路線において「勝ちパターン」を把握していたわけではない。いや、首都圏~京阪神のような大都市間路線においても、(もちろん、高速ツアーバスの乗客の一部が既存の高速バスから転移した乗客であることを否定はしないものの)おおむね、既存の高速バスと「戦って」乗客を「奪った」わけではない。ウェブマーケティングを本格活用してきたのが高速ツアーバスだけだったから、ウェブマーケティングによって高速バスの存在を知った「新しい乗客」は、既存の高速バスについてはその存在さえ知らず高速ツアーバス“だけ”を高速バスだと思い込んで利用していただけだ。「がっぷり四つ」に組んだことは実際には無いのだ。

だがこれからはそうではない。大都市間路線と異なり、地方路線においては既に高速路線バスが一定の存在感を持っている。高速ツアーバス各社が地方路線での事業拡大を本気で考えるなら、新しくマーケットを拡大する余地はさほど大きくなく、これまでから高速バスを利用していた乗客を奪う方が簡単なことは目に見えている。これから、本当の意味での競合関係が生まれるのだ。しかしながら既存の各社は、従来からの「かりそめの競合関係」をもって、高速ツアーバスと競合してきたと勘違いしているのであれば、それはよろしくない。これから本気の競合関係が生まれたときに対応できない……

本音を言うと私は、大都市間路線で高速ツアーバスが主流になっても、地方路線では高速ツアーバスは苦戦するだろうとタカをくくっていた。それなら、(大都市路線を運行していた一部の既存事業者には申し訳ないが)大都市間路線で高速ツアーバスを徹底的に育て上げればそれに比例して既存事業者各社に危機感が生まれ、地方路線において高速ツアーバスが本気を出す前に、既存の高速バスがちゃんと「武装」を始めるだろうと、そして結果としてそれが既存の高速バスの成長につながるだろうと、そう考えてきた。だが、これから起ころうとしている現象は残念ながらそうではなさそうだ。もしも(私が愛してやまない)既存の高速路線バスが長距離夜行路線から順にズタズタになっていくとすれば、A級戦犯は私、かも知れない。一つだけ言い訳をすれば、(高速ツアーバスの成長が私の予想より早かったわけではなく)既存事業者が危機感を持ちそれに真摯に対応することが、私の予想より遅かった、という点だ。もっとも、彼らの速度感がどれ程なのか、理解していたつもりで結局はわかっていなかった私自身が悪いのだ、きっと。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2010.05.12 18:57:53 コメント(2) | コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

×

Profile

nalys

nalys

Comments

京帝117@ ご参考まで この度 K電鉄バスの取締役安全技術部長に…
京帝117@ 残念でした 他にメッセージをお送りする方法を知らな…
成定竜一@ Re[1]:中央高速バス~ふたつの路線~(02/24) 京帝117さん、コメントありがとうございま…
京帝117@ Re:中央高速バス~この風は、山なみの遙かから~(03/02) 86年に私と、その後KKKに入社したH君の2…
京帝117@ Re:新宿高速バスターミナル(02/21) 私がカウンターに座っていた時は、空いて…

Calendar

Archives

2026.10
2026.09

Keyword Search

▼キーワード検索


© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: