成定 竜一~高速バス新時代~

成定 竜一~高速バス新時代~

2010.06.22
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カテゴリ: バス産業
人事の季節である。全国のバス事業者から、人事の話が伝わってくる。

ほとんどの事業者は、おおむね周りの推測どおりの「順送り」人事になるようだ。ある事業者は、社長の席は鉄道からの「行って来い」で、だから無事に鉄道に戻ることができるのはおめでたい話のようだ。またある事業者はバスが「本業」だから、現役の社長は「勇退」となり専務さんが後を継ぐ。一方、大きな若返り人事となる事業者もあるようだ。「え、このクラスの人が次期社長?」と驚くような話も伝わってきた。私の会社のようなベンチャー色の強い会社ならともかく、長い歴史を持つ老舗バス事業者の話である。「何人抜き」というような話はこれまで余り聞かなかった。

見渡してみると、バス「プロパー」の社長や鉄道からの天下り組みなど、「いわゆるバス会社の社長さん」といった面々ではない経営者の数も増えてきた。もっともわかりやすいのが、産業再生や民事再生などのスキームを経て新しい経営者を迎えた事業者たちである。彼らの多くは「バスのプロ」ではなく「経営のプロ」たちである。当初は現場からは微妙な雰囲気で迎えられたかも知れないが(まあ、厳しい言い方をすれば「一度つぶれた会社」である。現場の面々も、会社が存続し仕事があるだけでありがたいと理解するしかなかっただろう)、その中で新しい経営者たちはそれぞれなりに経営改革を進め、皆さん結果を出しつつある。少なくとも、一度経営破たんし新しい経営者を迎えた事業者で、もう一度行き詰ったという例は未だ聞かない。バス事業を取り巻く環境が難しさを増している状況の中でだから、さすが、と評価すべきだろう。

また、目に見える経営破たんは迎えておらずとも新しい経営者を迎えた事業者もある。以前にも書いたが、地方の路線バス事業者という存在は、日本ならではの間接金融(地方銀行)の存在感の大きさと歩を一にしてきた。今の地方銀行に、従来までと同じような長いスパンでバス事業者との付き合いを考える余裕はないだろう(その意味では、いくつかの地方の路線バス事業者に引導を渡したのは、あるいはこれから渡すのは、バス業界の規制緩和ではなく、金融業界の「護送船団方式」の終焉、金融における規制緩和なのかも知れない)。後が無くなった地方の金融機関によって新しい経営者に代替わりを迫られたバス事業者もある。この場合は、全く地域に縁のない人を外から呼んでくるというわけではなく、地域の産業界で一目置かれた優秀な経営者にバス事業者の将来を委ねる、といったイメージだ。

バスが好きで(なにも「愛好家」でなくとも、地元の役に立つバスという存在に共感して)バス事業者に就職した若者にとって最終的なゴールの一つが「社長」であること自体はもちろん好ましいことなので、プロパー社長が多いほうが、それはいいだろう。ただ、あくまで傍で見ていての感覚的な話に過ぎないが、現時点では、新しい経営者の皆様方の動きを見ている限り「経営のプロ」を迎えることの意義の方が大きいような印象がある。何より、私の知る限り彼らは非常に勉強好きである。私などがお邪魔しても、まるで根掘り葉掘り尋問でもされるような感じで「成定さん、これはなぜ? こっちはどうなると思う?」と質問攻めに合う。私の会社が開催する戦略共有のイベントにも、お忙しい日程を調整してまで参加してくださる。「ツアーバスの話は聞きたくない」という姿勢を前面に打ち出す方の多い旧来の経営者の皆様とは、そこが対照的だ。

さて、いつも書いているように、路線バス事業者は典型的な「日本型経営システム」でここまで育ってきた。日本型経営システムとは、 会社が右肩上がりで大きくなることを前提 としたシステムである。同期入社した新入社員たちがやがて年を取っていく中で、「終身雇用」と「年功序列」を守り、やがて年配社員となった彼らに十分なポストと給料をあてがうには、管理職のポストを常に増やしていくしかない。管理職のポストを増やすには、会社の規模が常に拡大していなくてはならない。「エコノミックアニマル」などと揶揄されつつも「モーレツ営業」によって世界へ進出していったメーカーたちとは異なり、完全に内需型産業であるバスは、本来なら日本型経営システムでは立ち行かなくなることが明白な業種である。ただ、国全体で人口が増え、国全体で経済が成長していた時代には自ずとバス事業も成長した。だが、国全体が成長の歩みを止め、むしろモータリゼーションの進展など逆風が続く中で、これまでと同じやり方では路線バス事業者の経営が行き詰ることは素人目にも明らかだ。このような流れの中で新しいタイプの経営者が増えていくのはある種の必然なのだろう。

また業界全体で「終身雇用」の色が強いことの裏返しとして、業界内の転職が非常に少ないのも特徴だろう。どんどん会社を移っていくことだけが前向きな生き方だという気はないが、転職の可能性がない業界では、各社員が「仕事」「業務」に紐づくのではなく「会社」に紐づいてしまい専門的な業務知識が定着しないという弊害がある。いやむしろ、転職によるキャリアアップの可能性が閉ざされていることで、若手社員のモチベーションが、業務の専門性を極めることより社内政治をうまくこなすことに向きがちなのは残念である。○○バスにおいて高速バスの販売戦略で成功を収めた若手が、(もちろん本人の希望に応じて)別の県の△△交通に請われて移籍する、とでもいうようなダイナミズムがもう少しあれば、とは思う。もちろん全てのプロパー社員がその道を希望しているわけではないだろうが、そういう選択肢もあれば、ということだ。その意味で、今回の人事で、ある事業者で中途採用組が大抜擢で社長に就任するという噂をお聞きしたが、大きな大きな一歩であろう。

私個人としては、引き続き、どこか個別の事業者の経営建て直しをお手伝いすると言うよりは、「高速バス」(それも今の時点では、バス業界のこれまで弱点であった「販売」「マーケティング」の分野を優先して)業界全体の黒子でいようと考えている。ただ、勇気を出して自らの体にメスを入れ癌を取り出そうとなさっている新しい経営者の皆様には、特に精一杯お手伝いさせていただきたいのは当然である。





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Last updated  2010.06.22 21:24:48
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京帝117@ ご参考まで この度 K電鉄バスの取締役安全技術部長に…
京帝117@ 残念でした 他にメッセージをお送りする方法を知らな…
成定竜一@ Re[1]:中央高速バス~ふたつの路線~(02/24) 京帝117さん、コメントありがとうございま…
京帝117@ Re:中央高速バス~この風は、山なみの遙かから~(03/02) 86年に私と、その後KKKに入社したH君の2…
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