成定 竜一~高速バス新時代~

成定 竜一~高速バス新時代~

2010.06.25
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カテゴリ: 高速路線バス
いつも書いていることだが、高速ツアーバスはこれまで大都市間路線を中心に成長した。具体的には、首都圏~京阪神、首都圏~名古屋、首都圏~仙台である。その3路線で高速ツアーバス輸送人員の70%以上を占める。首都圏~仙台を「大都市間路線」と捉えるかどうかは難しいが、正しくは「大都市間」というより「第1フェーズ型」の路線というべきか。要するに「地元の主(ぬし)」のような路線バス事業者が自ら高速バスを運行していなかった路線である。首都圏や京阪神は市場規模が非常に大きく数多くの路線バス事業者がバラバラに路線バス事業を行なっていて、それぞれのバス事業者は「地元の主」といえるほどの存在感を持っていないし、名古屋や仙台で「主」である名鉄や宮城交通といった事業者は、東名急行バスや東北急行バスの存在の影響で、長らく、東京線の高速バスを自ら運行してこなかった。東北急行バスやJRバス(国鉄バス)といった「第1フェーズ」時代から高速バス運行に携わる事業者は、運行については十分な実績があるものの、地元に密着して需要を掘り起こす力には乏しかった。

その結果、上記3区間においては、本来高速バスが果たすべき役割(得るべき市場シェア)に遠く及ばない規模にしか高速バスは成長しなかった。ただ全体の流動量が非常に大きい区間だから、わずかなシェアを獲得しただけでバス業界では「ドル箱」だと認識されていた。しかし実際には「掘り起こしきれていない潜在需要」が大きく大きく残っていた。そこにウェブマーケティングという高効率なマーケティング手法が持ち込まれたことで、同区間の高速バス輸送人員は初めて適切な市場シェアまで成長した。そのウェブマーケティングをうまく活用したのが高速ツアーバス各社だったから、結果として高速ツアーバスだけが大きく成長した、という構図だ。

だから、私に言わせれば、高速路線バス各社ももっとウェブマーケティングをちゃんと活用していればこんなことにならなかったのに…となる。高速ツアーバスにも高速路線バスにも冷たい言い方を許してもらえれば、高速ツアーバスの成長とは「落ちてた財布を拾っただけ」に過ぎない、ということだ。落とした方が「盗まれた!」と叫ぶのも筋違いだし、逆に高速ツアーバスが高速路線バスと本気で戦って「勝ち取った」わけでもない。

しかし、財布はいくらでも落ちているわけではない。大都市間において高速バス(「路線」と「ツアー」の合計)輸送人員が「本来得るべき市場シェア」に達しつつあることで、高速ツアーバスの成長率は鈍化しつつある(それでも、上記3路線平均でまだ対前年20%前後では成長しているが、2年前くらいに比べると明らかに鈍化している)。ならば、私たちの会社として取るべき戦略は限られてくる。まずは、既に大都市と地方都市、あるいは地方都市同士を結ぶ区間において十分な存在感を持つ高速路線バスの取扱を開始し、彼らの乗車率向上に寄与しながら商品棚に並ぶ商品(区間)数を増やしていく戦略である。しかしそれがダメなら(あるいは同時に)、ウィラー・トラベルやオリオンツアーといった高速ツアーバス各社の地方路線進出を徹底的に支援する戦略だ。これまでのような「片手間」の進出ではなく、本気でローラー作戦を組み高速路線バスから乗客の転移を図る戦略を採らざるを得ない。いや、予約サイトである私たちでこそ、その気になれば(相手次第だが)高速路線バスの取扱をはじめ路線バス各社と果実を分け合うことができるが、高速ツアーバス企画実施会社にすれば、高速路線バスから乗客を奪うしかない。繰り返すが、これまで彼らがやってきたことは「落ちてた財布を拾っただけ」である。だがこれからは、本気で「がっぷり四つ」に組むことになる。ウィラーやオリオンの立場に立ってちょっと考えれば、それ以外に選択肢がないことはわかるだろう。

路線バス事業者の前で私がこんな話をすると、ある事業者の課長さんは「今日はケンカを売りに来たのか」と怒り出した。まあ、感情的には怒りたくなる気持ちも理解できるのだが、そこで怒ってしまえば誰が見ても「負け」である。「これから戦うべき敵」に比較的近い立場にいる私が、せっかく目の前にいるのである。一つでも多く情報を引き出すべきだ。一方で、先日来お邪魔したいくつかの事業者では、まさに質問攻めにあった。銀行から移ってこられたお年を召した白髪の社長さん、多彩なご経歴をお持ちで柔軟なタイプの比較的若い部長さん、とパーソナリティは対照的だったが、上記のような話をこちらが持ち出しただけで大学ノートを手に身を乗り出してくる。「もしウチの会社が成定さんのトコロと契約しなかったら、ウィラーやオリオンに対し具体的にはどのような支援をするのか?」「現実に、○○地区の高速ツアーバスの取扱は、足元の数字でどれくらい成長しているのか?」「もしサイト上に並べて販売したとして、どれくらいの比率でウチの便に予約が入ると思うか?」

私がお目にかかる路線バス事業者の皆様は、全員(当たり前だが)高速ツアーバスの存在自体は知っている。以前なら「乗合類似行為」に当たるとされたそれが、既にその非難の対象になり得ないことも頭ではわかっている。しかし、自分たちが育ててきた「第2フェーズ型」路線にまで高速ツアーバスが進出してくることを「現実」として受け止めそれへの対抗策を講じようと努力できる方と、「現実」を受け止めること自体を拒絶してしまう方がいる。

実は先日の出張で、朝食を採りにホテルの部屋から出ようとしたら、財布がなかった。ベッドもゴミ箱もひっくり返したが見つからない。「昨晩、向かいのコンビニではあったはず。いや、酔っ払っていたから落としたのか」。それでもあきらめきれずカバンをひっくり返し……「ああ、自分は財布を無くしたんだ」という「現実」を受け入れたのは、最後の手がかりと向かいのコンビニに行って「財布落ちてませんでしたか?」と勇気を出してたずねた正にその瞬間だった。「いやあ、届いてないですね」。それ以降は早かった。自分でも意外なほど冷静に、交番で届けを出し、現金なしで新幹線に乗せてもらう方法を確認した。十分に現実を受け入れ、これからするべきこと(今日これからのアポイントを断り、クレジット会社に電話をし…)を頭の中でリストアップしながらホテルの部屋に戻ったとき、ワードローブの隅に落ちていた財布を発見した。今度は、財布があったという事実を受け入れられるまで、少し時間がかかった。高速ツアーバスの成長を「落ちていた財布」などと例えるからバチが当たったんだ、と反省しながら、現実を受け入れることの難しさを知った。少なくとも、現実を受け入れようとなさっている方々には、そのことに敬意を払い最大限のお手伝いをしようと感じた瞬間でもあった。





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Last updated  2010.06.25 19:17:45
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京帝117@ ご参考まで この度 K電鉄バスの取締役安全技術部長に…
京帝117@ 残念でした 他にメッセージをお送りする方法を知らな…
成定竜一@ Re[1]:中央高速バス~ふたつの路線~(02/24) 京帝117さん、コメントありがとうございま…
京帝117@ Re:中央高速バス~この風は、山なみの遙かから~(03/02) 86年に私と、その後KKKに入社したH君の2…
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