成定 竜一~高速バス新時代~

成定 竜一~高速バス新時代~

2010.07.22
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カテゴリ: 高速路線バス
昨日、新幹線が事故で長い時間ストップしていた。本当はよろしくないのかも知れないが、電車が止まったというニュースを聞くと実は今でもドキドキする。腕まくりして現場に手伝いに出たくなってしまうのだ。電車が止まった時に気分が昂ぶるのは、私自身の中では大きく二つの理由がある。一つは、単純に「忙しい現場」に身を置くのが大好きだということだ。たぶん今頃、営業所やバスターミナルが「大騒ぎ」になっているんだろうなと想像すると、乗り場での列の整理係でも、着発のクルマの車内清掃でも、何でもいいから現場に手伝いに出たくなってしまう。ホテル勤務時代も、宴会場の運用がタイトで、昼の結婚披露宴が終わってから1時間で夜の立食パーティに宴会場をセットしなおさないといけない、などという日があると、自分のデスクワークそっちのけで上着を脱いで現場に手伝いに出たりしていた。

もう一つ、電車が止まった日にバスターミナルに押し寄せてくるお客様というのは、裏を返せば、こんなことが無ければバスを使っていないはずのお客様、という点も魅力的(?)だ。もちろん中には高速バスのことをよくご存知の方(例えば「休日のプライベート利用ではよく高速バスを使うけど平日の出張は新幹線」など)もいらっしゃるが、「高速バスのことなど知らなかった」「遅くてキツイ、という印象があるから、存在は知っているけど使ったことはない」「かつて高速バスを使っていたけど、何らかの理由で最近は新幹線ばっかり選んでいる」というような、高速バスの潜在需要、わかりやすく言えば「見込み客」が、向こうからわざわざターミナルにやってきてくださるのだ。

復旧作業に追われた新幹線のスタッフの人たちや、商談やレジャーの予定を狂わされた乗客たちには心苦しいが、競合する鉄道がストップした日というのは、単純にその日に何台の続行便を出せるかという単発の売上増が見込めるとともに、上記のような見込み客に、高速バスの存在を、その快適性や運賃の安さを体感してもらい高速バスのファンになっていただく最高のチャンスでもある。当然、そんな日の現場は忙しく、そんなときに限って高速バスに不慣れな乗客も多い。時に運輸にたずさわる者は、そういう目が回るほど忙しいシーンでは妙に使命感を覚え「バスを無事に走らせること」を優先するあまり乗客に厳しい口調で当たってしまいがち(私自身がそうだったからよくわかる)で、ついつい放送や案内の口調も無愛想になってしまうものだ。しかし、目の前で押し合い状態になっている乗客のうちのほとんどが、「本来なら高速バスを選ばなかった人たち」だと考えると、少しでも愛想よく、初めての人にもわかりやすいようにご案内しよう、と思い直すはずだ。「潜在需要」「見込み客」などというと高速バスをビジネスとしてしか見ていないと言われるかも知れないが、単純に「初めて高速バスを使ったお客様」が、ご乗車後「やっぱりバスはダメだったよ。乗り方もわかりづらいし係員は無愛想だし。次からはやっぱり新幹線」と思ったりそれを家族や友人に話したりすることを想像すると、それは非常に悔しいという、ただそれだけのことである。

「阪神大震災で長期間不通になった新幹線の代替バスとして運行したものがそのまま高速バス路線として定着した」という例もある。「片道1,000円」というような期間限定ながら話題性のある極端な割引キャンペーンを機に、乗車率が以前より上がったという例もある。これらの事実が示すものは、「一度使ってもらえればさえ、高速バスはほどほどの満足感を与えることができ、ほどほどのリピート率を維持できる」タイプの商品だということだ。言い換えるなら、「一回でも使ってもらうきっかけ」さえ見込み客に与えることができれば、高速バスはまだまだ成長するということである。

高速バスに欠けているのは「商品力」では決してなく、今不足しているのは「販売力」である、という私の信念の原点がどこにあるのかというと、中央線の特急電車がストップ(それも当時は中央線の駅で人身事故が発生することが「流行って」いて、しょっちゅう電車が止まっていた)する度に、どこからか山ほどの数がターミナルに現われ、高速バスに乗るのは初めてとばかりに「へえ、こんなに本数出てるんだ」などと会話する観光客や出張ビジネスマンの姿なのだ。「トイレ休憩はあるの?」とたずねられ「トイレは車内に付いています」と答えた時の、お客様の驚いた顔と、何となく誇らしげな気分。「へえ、福岡行きもあるんだって」「え、福岡? 何時間かかるんだろうね」という会話と、どれだけ快適な車両か本来なら説明したくなりながらも忙しくてそこまで手が回らない歯がゆさ。そんな、バスターミナルでのアルバイト時代に「現場」で感じた「もっと知ってもらえればさえ、高速バスはもっともっと使ってもらえるのに」という素直な願望が、インターネットという、マーケティング史上もっとも効率的なツールと出会って今の私の仕事に繋がっている。

私個人の希望だけ言うと、今のような「販売」「マーケティング」という側面からだけ高速バスにたずさわる立ち位置は本来ではない。運行にも、車両にも、接客にも、事業者の経営にも、口出ししたいことは山ほどある。しかし、「販売力」こそが高速バスに不足していると考える以上、幅広く業界全体に対しそれを補うことができる立場にいることには満足している。悔しいのは、これまで高速バスのことを知らなかった人たちに私たちがウェブマーケティングによって認知を高めているバスのほとんどが、高速ツアーバス業態に偏っているという点だが、それは時間が解決してくれよう。いずれにせよ、高速ツアーバス各社と、既に取扱が始まった一部の高速路線バスについてもっともっと結果を出し、「販売力」さえ補えば高速バスにはまだまだ成長の可能性がある点を、他の事業者の皆様にもご認識いただくことを一歩一歩重ねていくしか道は無いのだ。それまでは、「現場」に手伝いに出たいという希望も、ぐっと我慢、である。





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Last updated  2010.07.23 17:58:07
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京帝117@ ご参考まで この度 K電鉄バスの取締役安全技術部長に…
京帝117@ 残念でした 他にメッセージをお送りする方法を知らな…
成定竜一@ Re[1]:中央高速バス~ふたつの路線~(02/24) 京帝117さん、コメントありがとうございま…
京帝117@ Re:中央高速バス~この風は、山なみの遙かから~(03/02) 86年に私と、その後KKKに入社したH君の2…
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