成定 竜一~高速バス新時代~

成定 竜一~高速バス新時代~

2010.07.26
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カテゴリ: 高速路線バス
日本の高速バスは、1980年台前半に「共同運行」という概念が採り入れられたことで大きく成長した。それまでの国鉄バスあるいは高速バス専業事業者ではなく、起点側、終点側それぞれで路線バス事業を営む路線バス事業者が自ら高速バスに参入することが認められるようになったのだ。路線バス事業者、特に地方都市における彼らは正に「地元の雄」である。彼らが自ら高速バス事業に参入したことで、地方部において高速バスの認知は大いに拡大し高速バス市場全体が急成長した(ちょうどそのころ地方部において高速道路が続々と延伸開業した、といった他の要素もある)。私が 「第2フェーズ」

そして今、大都市間(首都圏~京阪神など)においては、その次のフェーズ「第3フェーズ」化がまもなくそろそろ完了しようかとしている。この「第3フェーズ」は、あらゆる面において「第2フェーズ」と対照的だ。上記「第2フェーズ」を象徴するキーワードが、「地方都市/共同運行/路線ごとの独占認可/地方部における路線バス事業者の販売力」だとすれば、「第3フェーズ」のそれは「大都市間/事業者同士の競合関係/乗車日や車両グレードによって細分化された多様な商品・価格設定/ウェブマーケティング」となる。

この「第3フェーズ」化進展の背景は二点ある。一つは参入要件の緩和(高速ツアーバス業態の容認も含む)であり、もう一つはウェブ化の進展である。参入要件の緩和は新規参入を促し、ウェブ化の進展は、これまで高速バスの存在さえ知らなかった、あるいは予約方法がわかりづらく利用を敬遠していた潜在需要(特に大都市圏の需要)を掘り起こすことに成功した。どちらも、ここ数年間で起こった事実である。しかし、この二つがお互いに無関係に別々の話として実現したのではなく、相互に作用し合ったことが重要なのだ。

例えば、参入用件の緩和だけが起こっていたらどうなっていただろう? いわば「仮に20年前に当時の運輸省が高速ツアーバスという業態を容認していたとしたら」という問いである。例えば、貸切バス運行については十分以上の実績を持ち、東京にも関西にも運行拠点を持つ老舗の貸切専業者(例えばKMとか帝産とか)が、高速ツアーバスに参入し成功していただろうか? 仮定の話ではあるが、おそらく成功は難しかったのではないか。運行はできても販売力が伴わなかったからである。ウェブ化の進展によって「販売力のフラット化」が実現したことで、路線バス事業者のように駅前一等地に窓口を持たずとも、あるいは車内吊り広告を低コストで展開できなくとも、貸切専業者や中小旅行会社が消費者に対し直接アプローチする術を得たのである。これはバスに限らない。この国の硬直化した流通制度の下では、その複雑な流通制度にうまくはまり百貨店など大手の販売網を活用できなければビジネスが難しかったのに対し、現在では、漁師の奥さんが手作りする魚の干物が、ウェブと宅配便さえあれば全国レベルの人気を集めるようになっているのだ。

さらにウェブ化の進展によって、予約時点で利用者が手にしているバスについての情報量が飛躍的に増加した。紙の時刻表を見ながら電話で予約するのが普通だった頃、座席グレードや乗車日によって価格が細かく異なっていても、それをオペレーションに乗せることが難しかった。各座席タイプの詳細を画像で確認できたり、木曜日の夜行便に乗れば金曜の便よりも数千円安いといった情報をウェブ上のカレンダーで確認できたりするからこそ、利用者も複数の商品や乗車日を比較してバスを選べるようになったのだ。さらに、A社の窓口ではA社の商品しか並んでおらず、B社の商品と比較するには徒歩でB社の窓口に向かわねばならないといった状況なら「立地」が利用者の選択を左右したが、ウェブでは「買いまわり」の負担は極小化し、商品そのものの価値が最大の選択基準になったのだ。消費行動は、従来の「AIDMA(注目→関心→欲求→記憶→行動)」から既に「AISCEAS(注目→関心→検索→比較→検討→行動→情報共有)」に移ったと言われているが、利用者の予約行動の中で「比較検討」という行為の重みは非常に大きくなっているのである。

つまり、単にウェブ活用によって需要喚起が進み、単に規制緩和で参入事業者が増えたことが「第3フェーズ」化を導いたのではない。その両者が有機的に結びついたことこそ「第3フェーズ」化の真因である。高速バスマーケットに多数の利用者が集まり、そこに多数の事業者の多様な商品が並ぶ。厳しい「比較検討」の目にさらされるなか、小さく細分化された個別のセグメントに対しいかに寄り添った商品を作れるかを各社が競い、その競争が「磁場」を生んでさらに新たな利用者を集めるのだ。考えてみれば、実は独占認可の時代から消費者ニーズは多様だったのだ。男性もいれば女性もいて、高級志向の乗客も低価格志向の乗客も以前からいたのである。独占認可の制度では、全ての人に不満を持たれない「最大公約数」的商品作りこそ望まれたが、「お客様自身がバスを選んで乗る時代」が到来した今、それぞれの商品が男性にあるいは女性に特化し、出張にあるいはレジャーに特化し、と、自らターゲットと定めたセグメントのニーズをきめ細かく実現することで、その「総和」(全体の合計値)としての高速バスマーケット全体を拡大させているのである。

大都市間路線においては、失礼ながら高速路線バスが(本来のマーケットポテンシャルに比べて)大した存在感を持っていなかったので「第3フェーズ」化は数年で完了した。しかし「第2フェーズ」の成功体験を強く持つ地方都市路線において、上記変化は今すぐには完了しないだろう。そのことは一定程度、路線バス事業者と既存の高速路線バスを守る。この種の路線で新規参入側が既存側を逆転するのは容易ではない。しかしだからこそ、既存側は自分たちの事業スタイルがレガシー(強固な旧来モデルの存在が、結果として変革を妨げ成長を阻害する原因となること)になっていないか、自らをシビアに検証する勇気を求められている。そのことを私は、彼らへの愛情が強いからこそ、彼らに必死で伝えていきたいのである。





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Last updated  2010.07.26 18:16:38 コメント(2) | コメントを書く


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京帝117@ ご参考まで この度 K電鉄バスの取締役安全技術部長に…
京帝117@ 残念でした 他にメッセージをお送りする方法を知らな…
成定竜一@ Re[1]:中央高速バス~ふたつの路線~(02/24) 京帝117さん、コメントありがとうございま…
京帝117@ Re:中央高速バス~この風は、山なみの遙かから~(03/02) 86年に私と、その後KKKに入社したH君の2…
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