成定 竜一~高速バス新時代~

成定 竜一~高速バス新時代~

2010.10.04
XML
カテゴリ: 高速ツアーバス
先週末に取扱開始した東北急行バスだが、さっそく全国450万通配信のメールマガジンで大きく取り上げたこともあり滑り出しは好調だ。乗車対象日が1週間以上先であるにもかかわらず続々と予約が入っている。一例だが、往路(夜行)は東北急行で復路(昼行)は高速ツアーバス、あるいは何度も高速ツアーバスを繰り返し利用しているリピータが今回は東北急行、という使われ方が目立ち、従来から東京と仙台の間をバスで移動していたが、高速ツアーバスの存在しか知らなかった(あるいは、東北急行バスやJRバスの存在は知っているが、予約の利便性その他の理由でそちらを選んでいなかった)利用者が今回の移動からはサイト上での比較検討の結果、東北急行バスを選んだ構図がはっきりと出ている。

さて、では利用者はどのような基準で高速バスを「比較」「検討」しているのだろうか? 様々な基準があろうが、例えば、「3列シート(2列を含む。以下同じ)」か「4列シート」か。皆様はどれくらいの割合と想像するだろうか? 首都圏-京阪神(「フライングスニーカー」号登場前のデータなので全て高速ツアーバス)で言うと、平日に関しては、人数ベースで約45%が3列、残りが4列だ(ここではトイレなど付帯設備やアメニティグッズなど付帯サービスの有無などは除外して、座席タイプだけの切り口のデータだ。また金額ベースでは3列の方が上)。ちなみに週末は3列が35%まで低下するが、これは、一般的な貸切バス車両が4列であるため週末には4列でどんどん続行便を設定できるが3列は続行便を用意できず早々に満席となり、結果として3列のシェアが低下しているのだ。逆に言うと週末には、本当なら3列希望だが満席で、やむを得ず他の交通機関(高速路線バスを含む)を選んでいるか、あるいは4列で我慢している人が約1割存在することを示している。

高速路線バスの場合、従来は乗車時間によって事業者側が車両タイプを決めてきた。2時間を超えるならトイレ付き、6時間を超えたら3列シートというあたりが平均的だろう。私が「第2フェーズ」と呼ぶ時期の初期はいわゆる「高速バスブーム」であり全国に高速バス路線が雨後の筍のように新設されたが、そのきっかけとして3列シートなど居住性に優れた専用車両の登場が挙げられる(共同運行システム導入により既存事業者が自ら高速バス運行に参入したことによる地方側での認知向上と、高速道路延伸という背景も大きい)。それゆえ、4列シートの貸切車で夜行運行することにネガティブな意見も多い。私自身、学生バイト時代、さらに実は今の会社に転職した時点でもまだかなり否定的だった。

もっとも、帰省ラッシュなどの繁忙日において4列シートの貸切車で続行便を設定するかどうかは事業者によって対応が分かれていた。高速バス繁忙日は貸切バス閑散日にあたるため各社ともできれば続行を設定したいのが本音で、私見だが、大都市側事業者のポリシーの違いによって夜行の続行に貸切車を持っていくかどうかの判断が分かれているようだ。ポリシーと言っても、その大都市側事業者が、夜行便よりも収益性が大きい短・中距離の高速バス路線を持っていれば続行便はそちらを優先するので夜行路線は専用車のみ、という程度であり、共同運行ペアの組み換えが続く今日、そのポリシーを巡って新しい共同運行先と意見が合わないとの愚痴も聞く。片や<続行便を設定し多くの方の役に立つのが我々の責任>と言い、片や<「高速バスは快適」というイメージを覆すリスクがあり目先の利益にはなっても長期的にはマイナス>と主張する。

しかし上記のデータを見る限り、その論争は終焉させるべきと言えそうだ。要するに<お客様自身が選べばいい>のだ。従来の「路線独占」認可時代は、誰からも不満を持たれない「最大公約数」的商品作りが、独占認可と引替にして強い責任感の元で進められた。首都圏-京阪神で言えば「片道約8時間だから3列独立トイレ付き」が標準とされ、どうしてもその枠をはみ出す繁忙日の続行便について、上記議論が事業者のプライドを賭けて行なわれたのは決して間違いではない。しかし、高速ツアーバス業態はもちろん高速路線バス業態においても座席タイプ別に価格設定が可能になり、かつウェブ上で乗車日と区間を指定するだけで空席便の詳細情報(画像やコピーワーク)と価格を一覧的に表示させることができるようになった以上、自身のニーズに合った商品をそれぞれの利用者がチョイスすればいいようになっただけのことだ。<高いけど快適だから3列シート><安い方がいいから4列シート。でも路上の集合場所よりは待合室のあるターミナルから乗りたいから少し高いけど「路線」を選択>といった判断を利用者自身が行なう環境が整ったのだ。

以前、酒販免許ががちがちに運用され、自宅でビールを飲むには近所の酒屋さんからラックで配達してもらうしかなかった頃、ビールの銘柄は限られ商品の個性も乏しかった。消費者が自ら選べない以上、極端に苦いとか軽いとかのビールが届けられれば不満を招くリスクがあったからだ。しかし酒販免許の運用が緩和されコンビニの冷蔵ショーケースから一人ひとりの消費者が自分の意思でビールを選ぶようになった今、価格の安い発泡酒や逆に高級なプレミアムビール、女性向けや健康志向などそれぞれの消費者のニーズに寄り添った多彩な銘柄が並ぶようになった。ウィラー・トラベルと平成エンタープライズを筆頭に高速ツアーバスの世界に起こっている商品の多様化は正にこの流れにあり、むしろ「所要8時間だから3列シート」などは事業者のお仕着せとされるリスクがある。

先日、学生時代の友人が<学生時代、遠距離恋愛していて、よく入場券だけで新幹線に乗り込みトイレに隠れて彼女に会いに行っていた>と思い出話をしていた。酒の席での話だからその行為の真偽もわからないし事実なら犯罪ではあるのだが、少なくとも「遠距離恋愛中の学生」という利用者には、少しでも安く移動を提供することこそ、一つの「責任」である(安全性の維持という別の責任との兼ね合いがあるとしても、だ)。そして私たち予約サイトとしては、利用者一人ひとりが自らのニーズに最も近い商品を選べるよう、サイトの導線やデザインを工夫することにその責任がある。しいていえば、高単価の商品が売れた方が満足度が上がり、かつ手数料収入も増えるので、上級車両から優先して売れるような工夫も忘れてはいないが。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2010.10.04 18:57:36
コメント(4) | コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

×

Profile

nalys

nalys

Comments

京帝117@ ご参考まで この度 K電鉄バスの取締役安全技術部長に…
京帝117@ 残念でした 他にメッセージをお送りする方法を知らな…
成定竜一@ Re[1]:中央高速バス~ふたつの路線~(02/24) 京帝117さん、コメントありがとうございま…
京帝117@ Re:中央高速バス~この風は、山なみの遙かから~(03/02) 86年に私と、その後KKKに入社したH君の2…
京帝117@ Re:新宿高速バスターミナル(02/21) 私がカウンターに座っていた時は、空いて…

Calendar

Archives

2026.10
2026.09

Keyword Search

▼キーワード検索


© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: