成定 竜一~高速バス新時代~

成定 竜一~高速バス新時代~

2010.10.18
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カテゴリ: バス産業
『日本経済新聞』朝刊、経済教室面の連載「ゼミナール」、今月は「新時代の公共交通」というテーマで財団法人運輸調査局が担当なさっている。局のお立場柄、また媒体の性格柄、好き勝手に書くわけにはいかず大変だろうが、適度な政策提言も盛り込まれている。本日のお題は「国際展開」。まずは海外(先進国)の公共交通サービスの経営形態の紹介から入っている。つまり、公共交通は赤字であることを前提に地方自治体がサービスに責任を持ち、運営は地域ごとに事業者を選定しその事業者に独占的に委託する形が一般的とのことだ。<運賃を収入の柱とする従来型の公共交通サービスに比べ、事業者にとっては収益性は低いが低いリスクで事業を展開できる>メリットがあり、一方で地域や自治体にとっては<事業者同士が運賃引き下げなどで過度な競争に走ることを回避し、交通サービスを確実に提供する>というメリットがある。本稿では「自治体主導・1社独占・運営専業」モデルと名づけている。

ここであらためて日本の(路線)バス業界の歴史をざっくりと振返ってみる。

【1】戦前においては乱立状態だったが、いわゆる「戦時統合」を経て一地域一社の体制ができた(地方銀行や地方新聞社など我が国の多くの産業で同様の現象が見られる)

【2】戦後、急激に路線バス事業の重要性が高まる中、地域独占認可の制度によることで、競争的参入を制限することと引替にユニバーサルサービスの提供を事業者に事実上義務付けた。バス事業におけるユニバーサルサービスとは、内部補助理論に基づき赤字路線も事業者の責任で黒字路線と同様のサービスレベル(具体的には運賃水準)を維持することである。なお維持すべき路線網や利便性(運行本数)までレギュレーションで規定されているわけではなかった(撤退手続きのハードルの高さと各事業者の使命感により自主的に路線網を維持する努力がなされた)。

【3】1960年代まで路線バスの輸送人員は順調に伸び、各事業者も企業として大きく成長した。越後交通の田中角栄を筆頭に保守系政治家と関係が深い事業者が多く、地域開発など様々な側面で「地域を代表する名士企業」「地元経済の牽引車」としての役割を果たした。

【4】1970年代から路線バスの輸送人員は下降を始め、従来の「多数の黒字路線で少数の赤字路線を維持する」モデルから「少数の黒字路線で多数の赤字路線を維持する」モデルに代わり路線バス事業が赤字化する事業者も生まれたが、【3】で挙げた付帯事業(既に「付帯」の枠を超えていた)における利益がその赤字を相殺しても余りあったため内部補助によって乗り切り、従来のモデルが維持された。また1980年代後半から高速バスを路線バス事業者が自ら運行する例が一般的となり新しい「内部補助の原資」となった。

そして現在、である。各種統計を見ても路線バス事業の収支はますます悪化している。付帯事業の多くも、時代の変化に対応しきれず収益力は低下している(地方のバス事業者の経営による都心部のバスターミナル併設のショッピングセンターで、郊外型店舗に客を奪われテナントの空きが目立つ例は全国共通の現象だ)。民間企業であるにもかかわらず使命感を持って過疎地の赤字路線をなんとか維持しようとする努力には大いに共感するが、事業者側ではなく地域、自治体の側から見た場合、事業者の「美学」によって公共交通がなんとか維持されているという現状が健全と言えるかどうか(現実に、ショック療法かのように一気に路線撤退が進んだ鹿児島県のような例がある)。

さらに「運営」のみならず「経営」という側面にも大きなインパクトが広がりつつある。「バスの乗客が減る」「テナント収入が減る」など事業そのものの不調に加え、ファイナンス面でのハードルが上がりつつあるのだ。各事業者は地元金融機関との間で間接金融による「長期的視野に立った」共同体的関係を築いてきたが、その金融機関の側に、長期的に物事を考えるだけの余裕がなくなってきている。またこれまで日本企業の株主は「物言わぬ」ことが前提だったが、かといって事業者の株主や、事業者の生殺を事実上握っている金融機関の株主らが足元の利益のため赤字路線の撤退を叫ばないとは限らず、株式会社である限りそれを断れる理由はどこにもない。さらにやがて国際会計基準がバス事業者にも適用されれば、会社存続に影響する事業者さえ少なくないだろう。内部補助を背骨とした従来のバス事業者の経営モデルは、特に地方部においては限界に見える。

かといって、現業部門まで官が丸抱えすれば「国鉄」の二の舞は必至だ(各地の公営バス事業が民間事業者に管理委託または譲渡されることで多少ながらも効率性を取り戻していることがそれを示している)。すなわち、公共交通のネットワーク維持に誰かが(足元の利益を抜きに)責任を持ち、一方で効率性を担保するため多少の競争原理を導入することが求められているのだ。必ずしもそれは、欧州や北米で一般的な「自治体主導・1社独占・運営専業」モデルではないかも知れぬ。我が国の実情を鑑みれば異なるモデルがあるのかも知れない。しかしこのまま何も議論をしなければ、皆で座して死を待つようなものである。






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Last updated  2010.10.18 19:08:37
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京帝117@ ご参考まで この度 K電鉄バスの取締役安全技術部長に…
京帝117@ 残念でした 他にメッセージをお送りする方法を知らな…
成定竜一@ Re[1]:中央高速バス~ふたつの路線~(02/24) 京帝117さん、コメントありがとうございま…
京帝117@ Re:中央高速バス~この風は、山なみの遙かから~(03/02) 86年に私と、その後KKKに入社したH君の2…
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