成定 竜一~高速バス新時代~

成定 竜一~高速バス新時代~

2010.11.05
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カテゴリ: 高速路線バス
「分かる」こととは「分ける」ことである。

例えば、私はよく<高速バス市場の「本丸」である短・中距離の多頻度昼行路線には高速ツアーバスの進出は難しい>とあちこちでお話しているが、なぜそうなのかを理解するには、この事象をいくつかの側面に分けて考える必要がある。第一に、市場環境である。ホワイトスペース(誰も開拓していない、潜在需要の大きい市場)として残っていた大都市間(首都圏~京阪神など)では、高速ツアーバスはウェブマーケティングを積極的に活用することでホワイトスペースの掘り起こしに成功したが、地方部、特に短・中距離路線では高速路線バスの習慣的利用が定着しており転移は難しい(※なお、「ウェブマーケティングによる需要掘り起こし」と「(電話予約から)ウェブ予約への転換」は明確に意義が異なる点、留意いただきたい)。第二に、高速ツアーバスという業態そのものの限界がある。短距離になればなるほど、また多頻度になればなるほど習慣的利用が増え当日発券の(要するに「気軽に飛び乗る」)ニーズが増えるが、事前決済や旅行条件書の手交を必須とする高速ツアーバス業態は不利である。第三に、事業者の規模。この種の路線ではフリークエンシーこそ重要であるが、中小の旅行会社および貸切専業者には一気に何往復もの運行は投資が困難である。

つまり、この種の路線で高速ツアーバスが成長しない理由だけを見ても、「市場」「商品(業態)」「企業(事業者)」それぞれの分野に分けて考えることができるのだ。<ツアーバスは安いから伸びたんだ>という感覚的な分析、<ツアーバスは自由度が高くて不公平>という漠然とした被害者意識、<金儲け主義でバス屋の流儀が通用しない新参者>という蔑視を伴う恐怖感からは何も生まれない。なぜ、そうなのか。一つひとつ冷静に「切り分けて」考える必要がある。実際、多頻度昼行路線への新規参入が成功している例として JRバス関東の新宿~佐久線 が挙げられるが、上記3つの条件のうち2つ(「乗合」業態であることと、「多頻度」であること)をクリアしている。逆に言えば、何らかの形で3つのうち2つの課題をクリアすれば、他の路線でも新規参入が成功しうる可能性を示している。

この「分ける」こと、かっこうよく言えば「因数分解」する手法は、高速バス業界全体の将来を考えるに当たっても有効だと思う。もう一度、これまで漠然と「高速バス事業」と捉えられてきたものを因数分解してみると、3つの要素に分けられるはずだ。まずは「運行」という要素である。車庫や車両などの設備を保有、乗務員や運行管理者などを雇用し教育して安全・安定輸送を行なうという要素である。第二に、「計画・企画」という要素。需要を見極め路線を設計し(高速路線バスであれば各種申請を行ない)、時刻や価格(運賃または料金)を決定する。第三は「販売」。これにはブランドの育成も、チラシやポスター、ウェブなどのプロモーションも含まれる。

従来、この3要素は路線バス事業者が一貫して担当してきた。いい意味でも悪い意味でも高速バス同士の競争が無かったころからの流れである。今、高速ツアーバスという業態の登場がそれを変えつつある。運行-企画-販売という垂直分業モデルが(課題は数多いにしても)一つの成功を示したのだ。ただ、これからも長く続くであろう我が国の高速バスの歴史の中で、誕生して10年、急成長を始めてわずか5年の高速ツアーバスのモデルなど、それがゴールだとはとうてい思えない。

先を見ようとする一部の会社たち(老舗の路線バス事業者も、高速ツアーバス企画実施会社も)は、従来の「一気通貫」モデルの長所短所と、高速ツアーバス型「3業態垂直分業」モデルのそれとを比較し、高速バスの新しい事業モデルの構築へ向け模索を続けている。彼らが強く意識しているのは、環境の変化である。高速バス同士の競争は(方法論に議論はあるとしても)既に始まった。そして、高速バスにはまだ潜在需要があり成長余地が十分残っていることが、この数年、証明された。それにより、高速バス経営の3要素(「運行」「計画・企画」「販売」)のうち後者2要素の重要度が一気に増したのだ。これまで「運行」に関して徹底した専門性が求められていたのと同様、「計画・企画」「販売」においても高い専門性が求められる時代になった。実際には法令の縛りもあり、彼らと出し合っているアイデア全てがすぐに実現するわけではない。しかし既存事業者が高速路線バスの販路拡大のため私たちのサイトを活用し始めたり、彼らが自社ブランドで高速ツアーバス事業に参入したりウィラー・トラベルやオリオンツアーらと提携したりという動きがその第一歩であることは間違いない。少なくとも、しばらく前の閉鎖的な雰囲気は消え始めている。これからも一歩ずつながら着実に進展があると思うので期待していて欲しい。

私としては、業界内の色々な立場の皆さんと(時にはお酒を飲みながら)新しい事業モデルについて模索し議論するのは本当に楽しい時間だ。そのような議論の中で、一つだけ、私がこだわっている点がある。それは、それぞれのプレイヤーが「安住」しない仕組みを作ることである。例えば「販売」に関して、「全国のあらゆる高速バスを取扱う」ことは私たちのサイトのゴールではあるが、「高速バスはある特定のサイトでしか予約できない」などという状況は望まない。競争が無くなった瞬間、成長が止まるからだ。「運行」サイドもそうだ。<お客様が何人乗ろうが、それは「企画」側の問題で「運行」会社には関係ない>と現場の乗務員がタカをくくるようなモデルでは、いいサービスができるはずがない。高速バス事業にたずさわる各プレイヤーが、それぞれの強みを持ち合ってより強い高速バス事業を育てる仕組みを作っていくのだ。もちろん、あらゆるプレイヤーの中で、従来から「三要素」全てを担ってきた唯一の存在である既存の高速路線バス事業者こそが、その中心的役割を果たせることだけは言うまでもない。ただし、環境に合わせて常に変化を模索し、試行錯誤を続けることができればさえ。





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Last updated  2010.11.05 18:33:34
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京帝117@ ご参考まで この度 K電鉄バスの取締役安全技術部長に…
京帝117@ 残念でした 他にメッセージをお送りする方法を知らな…
成定竜一@ Re[1]:中央高速バス~ふたつの路線~(02/24) 京帝117さん、コメントありがとうございま…
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