成定 竜一~高速バス新時代~

成定 竜一~高速バス新時代~

2010.12.27
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カテゴリ: バス産業
「高速バス」、なかんずく「高速バスのマーケティング」についての講演やプレゼンならば何度も経験しているので、<今日は20分バージョンで>とか<60分あげるよ>とか急に言われてもソラで時間に終わらせられるだろうし資料も使い回しが聞くのだが、年明けすぐの日程でご依頼をいただいているある講演の場で、少し違う話をしてみようとたくらんだのが冒険過ぎたかもしれない。年の瀬も押し迫る中、月末や年末の定例の仕事に加え、足元の年末年始の出発ピークに向けた仕込みも加わりタダでさえ仕事が山積みなのに、その講演の資料、そして行政主催の「バス事業のあり方検討会」第2回に向けた資料とPCの上にはいくつものパワポファイルが開いたままになっている。まあそれでも、年末には「西口バイト」時代の仲間たちと1泊で高速バスに乗りに出かけるのは忘れていないけど。

その講演。聴衆は大学院(ビジネススクール)を出て第一線でご活躍中の皆様と伺っているから、単に当社(または高速ツアーバス業界)がこんな工夫で成長してきました、という話では済ませられないだろう。既得権益、とまでは言わずとも既成のビジネスモデルに抗することで成長したビジネスなど世の中では少なくない。業界団体から批判され続け<洗髪台が設置されていないから不衛生だ>と県によっては出店を制限するような条例まで制定されながらも全国展開した理髪店チェーンとか、既存店の店主たちによって出店予定地に座り込みされるなど嫌がらせを受けながら成長した酒販店チェーンとか、同様の事例は聴衆の皆様もご存知のはずだ。だから、もうちょっと背伸びしてみたい。戦後日本バス産業の長い歴史を踏まえ、いまバス産業が置かれている状況と今後の変革への期待、そしてその変革がこの国の中でどのような意義を持つのか。非常に長い講演の持ち時間を頂戴しているので、年末年始をかけて準備したい。

そんな風に新しい話をしようとすると、当然新しい資料がいる。資料を作るということは、頭の中で理解していることでも事実かどうかウラを取り、データも生の数字がいるということだ。そういえば小学生の頃、学習塾の宿題に「ノートまとめ」というのがあったが、感覚的に理解するのではなくちゃんと紙に書くことで知識を整理することが目的だったのだと今になって納得する(その習慣が大学まで続いていれば人生も違ったかも知れない)。昨晩、戦後の「乗合バス輸送人員の推移」をグラフにしていてハッとした。この「へ」の字型カーブは様々な先生の専門書やバス関係の勉強会の場で何度も目にしてきたが、自身で数字を調べ自らグラフを作成してみて初めて実感することがあったのだ。

1955年に35億人/年だった乗合バス輸送人員は、65年に約100億人/年に達しそれが10年続いた後は35年間も降下を続けている。だからこそ「へ」の字カーブと呼ばれるわけだが、その左端と右端の高さがどれほど違うのかについてはあまり深く考えたことがなかった。実は2008年時点で43億人/年にまで減っているのだ。ここ数年は下げ止まっているものの、少し何かあれば1955年当時の輸送人員へ逆戻りしてしまう。1955年と言えば終戦10年後。「武蔵野乗合自動車」が「小田急バス」と名を変えてわずか5年しか経っていない。大先輩たちが、1955年からのわずか10年間で3倍近くまで成長させ、さらに10年間の黄金期を味わったバス産業を、我々は35年かけて元のサイズまで食いつぶそうとしている。大学生だった私が「西口バイト」としてバスに出会ってから20年だから、シュリンクを続けた35年の半分以上に、既に立ち会ってしまっていることになる。

私たちがいま置かれているのは、<地方の事業者は厳しい環境の中よくがんばっている>などといった感傷的な評価で覆すことのできる軽微な逆境ではない。誰かのせいにしておけば神様が助け舟を出してくれるような甘い状況ではない。最近でこそ、研究者のみならず既存事業者の経営者からも、<公共交通の維持は「公」の役割であるのに、民間に「丸投げ」してきたのが間違い(そのような制度は先進国では日本だけ)>という声が上がるようになり、客観的にはそれは事実だから全く同意するものだが、もしも短期的な公的補助の増額のためにその論理を使っているだけだとしたら、周囲を敵に囲まれながらも「最後にはきっと神風が吹く」と信じて戦い続けたどこかの国となんら変わらない。

むしろ、<公共交通は「公」の役割であるのに、民間に「丸投げ」してきた>という表現を、せめて<公共交通は「公」の役割であるのに、民間が「丸抱え」してきた>とあらためることから何かが始まると私は信じる。政府や自治体が都合よく丸投げしてきたことは例え事実であっても、上記のとおり1975年まではバスの「黄金期」であり、バス事業そのものから大きな利益が上がっていたこともまた事実なのだ。さらに流通や不動産、観光事業など付帯事業とのシナジーを考えると各事業者は十分に「いい時代」を味わったのだ。輸送人員のカーブが下降に転じた際、早期に「大政奉還」をしておくべきだった。もちろん、なんとか持ちこたえようと高速バスや貸切バス事業、流通などの付帯事業からの利益を平場の路線バス維持に注ぎ込んだ使命感には共感もするし敬意も払うが、その結果、事業スキームの抜本的な変革をするずる後回しにすることを許してしまい、産業全体が後退する結果になったこともまた確かである。やれ行政が悪い、やれ旅行業界が悪いと他人のせいにし続ける限り、その後退は止まらない。バス産業の後退は、他の誰の問題でもない。バスにたずさわる一人ひとりの問題である。

本日、ある研究者の先生からのメールに有名な狂歌が添えてあった。<泰平の眠りを覚ます上貴撰 たった四杯で夜も寝られず>。お前も4隻の黒船のうちの1隻になれ、とのありがたいメッセージだ(他の3隻の顔ぶれはご想像に任せる)。既存事業者には、黒船とはいえ、青い目の人たちではなく「バス語」が通じる同国人の分、まだマシだと理解して欲しい。いや、そんな甘えさえ許さない異国人に乗り込んできてもらった方が、本当の意味ではバス産業のためとも思う。それとも、もしかしたら異国人が操る蒸気船はこの国に興味さえ示さず沖を通過するだけなのか。もしそうなら、私にはもっと悲しい。





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Last updated  2010.12.28 08:52:20
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京帝117@ ご参考まで この度 K電鉄バスの取締役安全技術部長に…
京帝117@ 残念でした 他にメッセージをお送りする方法を知らな…
成定竜一@ Re[1]:中央高速バス~ふたつの路線~(02/24) 京帝117さん、コメントありがとうございま…
京帝117@ Re:中央高速バス~この風は、山なみの遙かから~(03/02) 86年に私と、その後KKKに入社したH君の2…
京帝117@ Re:新宿高速バスターミナル(02/21) 私がカウンターに座っていた時は、空いて…

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