成定 竜一~高速バス新時代~

成定 竜一~高速バス新時代~

2011.06.17
XML
カテゴリ: 高速ツアーバス
「バス事業のあり方検討会」中間報告についての第4回。

では、「新高速」に『移行しなければならない』のだろうか? 今回、法的には高速ツアーバスは禁止されなかった。理由はいくつかある。まず、そのためには法改正が必要で省令以下のようにすぐ改正できないので、アクション優先という考え。次に禁止対象の定義が技術的に難しい点。スキー場、上高地や尾瀬、テーマパークや 温泉 。どこまで禁止か。

まさか<既存事業者の高速バスと競合しなければ、あるいは既存事業者の貸切車を使えばシロ>などと法には書けまい。報告書にある通り、2002年の道路運送法改正以前は、路線バス事業者の経営保護のため高速ツアーバスは禁止されてきた。今はそうでなくなった代わり、「平場」の路線のうち赤字のものについて系統単位で公的補助が行なわれている。再び路線バス事業者の経営を保護するため競争を制限するよう法律を再改正すれば、今度は公的補助が受けづらくなってしまう(今日の欠損補助という手法が正しいかは別として)。

それでも、高速ツアーバス各社には「集中移行期間」(おそらく3~4年)が設けられ、事実上「移行」を求められる。キーの一つは、やはり「乗降場所」である。

高速ツアーバス集合場所の現状が胸を張れる状況でないことは確かだが、既存事業者が集合場所の件を問題にすればするほど、<バス停の再配分機能がないのはおかしい>とおうむ返しされるのもまた事実。たしかに、道路運送法と同時期に同趣旨で法改正があった航空では、羽田などの発着枠について調整会議が設置されスカイマークなどに優先配分される「アファーマティブ・アクション」が導入されている。今回、一部関係者は、本当に新宿などターミナル周辺の既存事業者のバス停が一律20%返上させられ新規側に配分されるとか、数年に一度、定期的に「●●地区バス停留所調整会議」が開かれ新規参入希望者にバス停が自動的に配分されことが制度化されるといった「悪夢」を一度は見たことだろう。

たしかに、一度設置されたバス停が強制的に返上させられない現状では、明らかに使用効率が低いものも存在する。それらについては返上、または早朝深夜のみ高速ツアーバスからの「移行組の新高速」との共用を受け入れざるを得ないかも知れない。一方、駅前ロータリー内に多くのバス停があって、例えば新宿のモード学園前やセンタービル前にバス停が立っていないのは、もともとバス停とは「平場」の路線バス用であり、10分の乗車時間のために駅から5分も歩かされてはニーズに合致しないからに過ぎない。これから大阪へ、福岡へ向かう利用者にとっては、その5分など、羽田空港で歩かされる距離を考えれば知れたものだ。高速ツアーバス各社が現状において集合場所として使用しているエリアは、実は高速バスのバス停としては適地なのだ(詳細に見ると要件はいろいろあるが)。

本当に物理的限界にある羽田の発着枠と違い、バス停についてはもう少し新設の余裕がある。しかし配分のルールが決まっておらず、設置権限者も、誰に与え、誰に与えてはならないのかわからず、新規設置は一律で認めず、という暗黙のルールが定着していただけである。<お宅の会社にバス停をあげたら、他の会社にもあげないと。そんなことしてたら道路が全部バス停になっちゃうからさ、わかるよね>。これが決まり文句だ。2002年、法律は需給調整撤廃を目的に改正されたが、バス停という重要なファクターについては(意図したかどうか別として)新規参入を導く運用改正を行なわなかったのである。

高速ツアーバスを運行する事業者の相当数が高速路線バス化を目指し、バス停の確保でいわゆる「前さばき」(正式な書類を受ける前に根回し時点で断られること)に会って断念せざるを得なかったのは、これが原因である。一方、今回「誰に与えるべきか」は明確だ。



もちろん、今日の高速ツアーバスの会社数、台数を発着させるには何本のバス停が必要でどんな運用が適切なのか、あるいは駅前ロータリーの貸切バス乗降スペースを集合場所として利用している地方都市においてどうするか(蛇足ながら、国鉄時代からの流れでJRが管理している駅前広場が多く、私鉄系事業者の高速路線バスが駅広にバス停を設置できない都市も多い中、「移行組」だけが堂々と駅広に入るのは現実的ではないだろう)、など考えないとならない点は少なくないが、そこは事務方どうしで粛々と進んでいくことだろう。

「乗降場所」は、高速ツアーバス各社に「新高速」移行を促す最大の要素であるが、報告書をよく読むと、それ以外にも多くの要素が散りばめられ、高速ツアーバス(どう定義するかにもよるが)をその業態のまま継続することは事実上困難になることが予想される。もちろん、身を隠し細々と事業継続することは不可能ではないが、「細々」程度のバスサービスの手法なら いくら でもある のだ。既存側も、モグラたたきよりずっと重要で前向きな仕事があるはずだ。

今回は「実質一本化」に私も協力するが、本来なら、新業態の開発もまた重要なイノベーションのはずだ。今回の件から、双方が学ぶことは多いはずである。
さて明日は「中間報告書」解説の、いったん最終回。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2011.06.17 07:10:54
コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

×

Profile

nalys

nalys

Comments

京帝117@ ご参考まで この度 K電鉄バスの取締役安全技術部長に…
京帝117@ 残念でした 他にメッセージをお送りする方法を知らな…
成定竜一@ Re[1]:中央高速バス~ふたつの路線~(02/24) 京帝117さん、コメントありがとうございま…
京帝117@ Re:中央高速バス~この風は、山なみの遙かから~(03/02) 86年に私と、その後KKKに入社したH君の2…
京帝117@ Re:新宿高速バスターミナル(02/21) 私がカウンターに座っていた時は、空いて…

Calendar

Archives

2026.10
2026.09

Keyword Search

▼キーワード検索


© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: