今日はちょっと忙しいので、夜には書けると思うんですけど、隙間の時間でちょっとだけでも書いておこうと思います。
でも、この時間で終われるかな?
佐伯の事情聴取は続いていた。
「「家の中で一晩過ごし、それから車で東京方面に逃げるつもりでした。・・・・人質は途中の弦他の中においていくつもりですから、殺すつもりはありません。」
さっき包丁を突きつけられたときは、生きた心地もしなかったのですが、佐伯の話ではそういうことでした。
「家の中で聡君がなぜかいたんですが、それには驚きました。・・・・彼は私が以前勤めていた会社の社長の息子なんですが、10年間住み込みで働きましたから、ずいぶん可愛がりましたけど、私の家が脇野沢にあって、使ってないから、そのうち遊びにつれてくるって話してましたし、きっと夏休みのキャンプででも来て私の家を見つけたんだと思いました。」
佐伯は強盗事件を起こしてから、恐山に潜伏していたので、児島の交通事故の話は知らなかったのかもしれない。
「ところが・・・・彼が現れると・・・・家中が真っ暗になったんです・・・・まるで皆既日食でもあったように突然真っ暗になって・・・・私は怖くなりました。」
佐伯には霊の仕業とは思えなかったのでしょう。
「逃げようと思い玄関に走ったのですが、部屋から出ようとすると、まるで透明なアクリルの板でもあるように、はじき返される・・・そしてそれが私に向かってくるように思えました。」
佐伯はこのとき、ごくりとつばを飲み込んだ。
「まるで、狐にでも化かされているような気持ちでしたが、その男の子が、そのアクリルの板を通り抜けたのを見て、もう一度体当たりしてはじき返されました」
彼は、私を指差しそういった。
「これはだめだ・・・押しつぶされると思ったとき、窓を突き破ろうと思ったんです。」
そして、これからが、私の知らない世界だった。
「窓を突き破り、山へ逃げました。・・・・・このまま山に逃げても、その子を残してきたのできっと山狩りされると思いましたが、あとはどこにも逃げられません・・・・とにかく山へ逃げたんです。」
逃げた佐伯は、窓枠を破ったのであちこちにガラスで切って血がにじんでいた。
その匂いをかぎつけたのか、じぶんのまわりにいろいろな動物が近づいてきたのだそうだ。
日本猿、カモシカ、猪、狐、いたち、そして熊・・・・・・・空にもトンビやからすが集まってきた。
その動物達に追いやられる形で、山の頂上のほうに向かうと、そこに小島が腰掛けていて、ニコニコ笑っていた。
家の中にいたはずの小島が、山の頂上に先回りしている・・・・・さっきの不思議な出来事を思い出し不用意には近づきたくないと思ったらしい。
「動物の中を突っ切って逃げよう」・・・・そう思って振り返ると、その動物達が笑ってるように見えたのだそうだ。
その中にいっぴきの犬がいて、前に出て来て、佐伯の足元になついてきて・・・・そうしているうちにたちまち小島の姿の変わった。
目の前にいつの間にか小島が立っている。
「佐伯さん、あんた優しい人なんだから強盗したなんて、なんかの気の迷いだよ」
そういうと左手を指差し、2本の木を指差す。
そしてその木が言葉を話し出したのだ。
「お前は優しい子だ・・・・・このまま悪いことを続けるのはやめておくれ」
その木は、彼の両親の姿に変わったのだという。
慈愛に満ちた両親の姿を見て、佐伯は自首しようと思ったのであった。
その時突然雨が降ったという。
しかし、私のいる、このふもとには雨は降らなかった。
その雨は、佐伯のこころからなにかを流し去ったような思いがしたそうだ。
そのなにかが流れ去った後、佐伯は気を失った。
その気を失いかけたときに、小島の声が聞こえた。
「これで佐伯さんも後藤君も・・・・死ぬことはなくなった・・・・・これで安心して行けるから、・・・・もし、来年の今日にでもお墓に来れたら来て下さいね・・・佐伯さん」
そしてしばらくして気がついた佐伯は駐在所まで自首しに来たというのだ。
おりしも今日は8月13日・・・・・お盆である。
「迎え火」をたく、あちこちの明かりが私の目に映った。
終わりにさしてくれ!
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