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[東北地方] カテゴリの記事
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仙台出張帰りの喫茶店巡り その2
東北本線の上り各駅停車に乗り込みますが、さほど距離も稼げぬうちに白石駅止まり。1時間近く待ち合わせがあります。当然、途中下車して町を歩いてみることにしました。 いきなり結論を言ってしまうと、白石駅前で見かけた喫茶店はすべてお休みだったのですが、どうにも気掛かりな喫茶店が数軒あったので備忘のために記録に留めておくことにします。駅前ロータリーにある「コーヒー&スナック パオリ」はスナック度が高そうですがサイコロ状のキューブを組み合わせた看板が洒落ています。駅から5分位のシャッター商店街で見た「ベルベル」はパン屋でしょうか。駅前ビルにひっそりある「ドルフィン」は古臭いコーヒーショップみたい。駅前通りに面した「多憩」は検討もつきません。「コーヒー 軽食 停車場」、ここ気になるなあ、真新しい置き看板があるんで営業してるんだろうけど。それにしてもこの店は一体どういう造りなんでしょう。細い廊下もしくは階段を登っていくと思いがけぬほどに広い空間が広がっているのでしょうか。それとも築地場外のとある喫茶店みたいに5人も入ると目一杯の狭さなのか、空想が膨らみます。 ついで福島駅にて下車。あまり長居する時間がないので大急ぎで町を散策。何度も着ているので、それなりに土地勘はあります。商店街を通り抜けると何軒かの気になる喫茶店あり。引き返し際にお邪魔することにします。商店もまばらになってきたので左に折れると「パン 洋菓子 喫茶 オジマ」がありました。洋菓子店の奥に喫茶コーナーがあるのってなんかクラシカルで、懐かしい気持ちになります。今風では全くないグラタンパンを喫茶で食べさせていただきました。とても気の良い奥さんでした。喫茶室も写真では捉えきれない渋くて暖かなムードでした。 せっかくなので呑み屋街を一瞥することにして、目抜き通りに並行して伸びる通りまで100メートルほど北に向かいます。昼日中の呑み屋街はさすがにうらびれて見えますが途中の脇道の呑み屋の密集地帯を見ると福島で夜を待って帰郷は明日にしたいとの気持ちに傾きそうになります。とは言えそんな訳にもいかないので目を付けておいた「珈琲 グルメ」に立ち寄ることで気を紛らわせることにします。某コーヒーショップの2階という環境にありながら大変な繁盛振りです。船内を思わせるランプシェードにクロスに彫り抜かれた純喫茶に定番のチェアと本格的な珈琲専門店の装いがやや生硬ながらもよい感じです。家族連れやデート中の生徒カップルなどで大変な賑なのが言ってはならないと思いつつも騒がし過ぎるのが残念でした。
2014/06/29
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仙台の呑み屋横丁を呑み歩く その5
政岡通りの「鳥紀 本店」を出ると雨はかなり小振りとなっていました。それでもまだまだ歩くにはやや辛い状況です。仙台の町は東西の中央通り、南北は一番丁通りというアーケードのある商店街が伸びているので天候にさほど振り回されることなく移動が可能です。 そういうこともあり、昨夜に引き続いて一番丁通りに面した壱弐参横丁にまたもややって来ました。と言っても本当に目指すべきはもっと先にある先日行きそびれたお店です。ここへ来たのは、いつなくなってしまっても不思議ではないこの横丁を記憶に刻み込んでおこうという趣旨があっただけ。なので酒場にはさほどこだわらず目に付いた「仙壱屋」に手っ取り早く飛び込んだのでした。このお店、店に入ってしまうと横町の風情など消し飛んでしまうくらいにごくごく平凡なお店です。こういう横丁って造りや間取りなんかがほぼ一緒なのでどうしても似たような雰囲気になりがちな傾向がありますが、この横丁は開設時に激しい縄張り争いでも繰り広げられたのではないかと想像を膨らませてくれるほどに変化があってそこにこそこの横丁の特異さと愉快さがあるのですが、このお店ではその多様さが逆に凡庸さへと作用してしまったようです。まあ誤解のないように付言しておくと別にこちらは全然悪いお店ではないことは言い添えておきます。 一番町商店街の突き当りを右に折れ，灯りもまばらな南町通りをほんの少し歩くと「明眸」があります。戸を開けると目が眩むほどのくらいの暗さです。もう少し暗闇に目を鳴らしておくべきだったかもしれません。徐々に目が慣れてきて、ぼんやりしていた店内の様子が輪郭を明らかにしてくると意外な調度のセンスに愕然とします。カウンター席こそ正統派ですが、テーブル席はこれはむしろ喫茶店に置かれるべきものではないかと呟きたくなります。気を落ち着けて馴染のあるカウンターに座ります。これまた意外なことに店を守るのは品がありながらも陽気な女性でした。お客さんはさほど入っておらず、もう何十年と通い詰めているようなご高齢のお二人に若い常連、夫婦連れだけです。今では写真のみで確認することができる居酒屋というものが日本に確立した当時の和洋が折衷した現代では奇抜とも感じられる内装にじわじわと全身が馴染んでいくに従い、まさにこの雰囲気こそが酒場の原点であり本流であるとの確信さえ抱いてしまいます。聞くとこちらは昭和5年創業とのこと。これほどの歴史を生き伸びた酒場は都内でもごく僅かに留まるでしょう。ところでこちらの主力商品は、小柄な女将の丁寧に焼く大振りなもつ焼ときてはますます内装とのギャップが際立ちいつまででも腰を落ち着けたくなるのでした。 といつたところでこの度の仙台滞在はひとまずお開きです。帰りは東北本線の各駅停車。土砂降りの中、これまで下車したことのなかったいくつかの駅でよさそうな酒場を見かけました。石橋駅の「やきとり 大ちゃん」や蓮田駅の「せきね」など面白そうな酒場がありました。石橋駅はちょっと遠くてなかなか行けそうにありませんが、蓮田駅はいずれお邪魔したいものです。参考までに帰京時の下車駅:仙台―山寺―仙台―白石―福島―郡山―宇都宮―雀宮―石橋―栗橋―蓮田
2014/06/27
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仙台の呑み屋横丁を呑み歩く その4
歩き回るのがいやになるほどの大雨に襲われますが、もう次の店は決まっています。さすがにこの豪雨の中、あまり歩き回り気にはなれないので、全蓋式アーケードのある名掛丁センター街は雨なんぞ気にせずともなんとかなります。センター街に酒場はあまり見受けませんが、ここからそう離れなくても、1軒や2軒はよさそうな酒場があるはずです。というより実は先ほど目を付けていた酒場があったのでした。それにしてもこんな酒場以前はあったかなあ。酒場巡りを始めてからも仙台には何度か訪れていますし、センター街にもちょくちょく通っていますが、ここは記憶にありません。 迂闊にも記憶からは失われていましたが、その酒場は政岡通りの入口にある「もつ焼き 丸昌」というお店です。安普請な酒場らしい雰囲気が昨今作られた老舗酒場もどきなどとは一線を画していますが、どうにも思い出せないのが解せません。きっと居抜きで入ったのでしょうが、なかなかの雰囲気を漂わせています。まっすぐ伸びたカウンターだけでも20席以上は裕にありそうですし、所狭しと並べられたテーブル席も10席を越えていそうです。奥に続く通路さえ有効利用してビールケースを積んで2人掛けにしている卓が2卓ほどあります。これがなんと開店早々であるにも関わらずほぼびっしりと塞がっています。かろうじて空いているのはカウンター1席のみ。その席をなんとか確保して着くことにします。ふと見上げると、お疲れさまセットなるものがあって、飲物に肴がセットになった例のものです。面倒なのであまり考えずに注文します。お通しにキャベツが出されるのは邪魔臭いなあなんて思っていると、飲物に続いて、まずは煮込み、次いでおでんに枝豆、さらに塩辛にもつ焼、さらにもう一品出てきたような。とにかくサービス過剰な位のおつまみの充実っぷりに目眩がするほど。これが味はともかく量もたっぷり。このセットは二人でひとセットで十分。それで800円だか、888円とは驚愕させられます。勘定の値段がなんだか計算と合わないけどまあいいかと思える、大繁盛も納得の酒場でした。 表はまだ激しい雨が降りしきっています。政岡通り沿いにどこかいい店がないものかと雨宿りを繰り返しながら進んでいくと、老朽化したビルの地下に焼鳥屋らしき看板を見つけました。地下に向かう階段を下りる際に視界におさまってくる、ビールケースなど乱雑に置かれた散らかった様子や何やら得たいのしれぬものが付着したべたついた廊下や引き戸を見ただけでも相当な年月を経ていることが見て取れます。「鳥紀 本店」という屋号です。店内は想像以上の広さで楽に60人や70人は収容できそうです。が、時間が早くこのひどい天気もあってか、中年の男女3名がいるばかりです。店の方もかなりの高齢でなんとも言えぬ侘びしさがたまらなくいいのでした。こちらのお通し、なにやらやたらめったら酸っぱくて、その食材も怪しい食感で珍しく橋をちょっとつけただけで残してしまいました。昔の居酒屋では山クラゲなんかの怪しいお通しが出されて辟易したものですが、今時こんなに旨くないものを出すのは珍しくて思わずほくそ笑んでしまいました。ここでは肴は単なる飾りだと思いこの汚くて懐かしい空間をひたすら楽しみたいものです。
2014/06/26
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仙台の呑み屋横丁を呑み歩く その3
国分町の外れで1日目を終えるつもりでしたが、ホテルまでが思っていた以上に遠い。都内ではどんなにべろんべろんに酔い潰れてしまっても、どうにかこうにか自宅にはたどり着けるのですが、多少馴染があったにしろ、普段暮らしていない町では、日中の疲労も通常以上となっているでしょうし、なにより距離感が出鱈目になってしまうようです。先日甲府を旅した際の過ちをまたもや繰り返してしまいました。ホテルまで目前というところに来ているのに、これほど歩くはずはないと、これ以上進み遠くまで行ってしまうことに若干の恐れのようなものを抱いてしまうようです。この夜も後から考えるとこのパターンに嵌っていて、あと信号ひとつ渡ればさほど歩かずともホテルに辿り着いていたはずなのに、ちょっと大きい通りを渡ることを億劫がってしまって、引き返してしまったことを覚えています。なかなかホテルに辿り着かず、自らにぶつけるしかない怒りとわずかの焦りにうんざりしてしまったので、こういう場合は呑むしかないと悪いループに嵌ってしまうのも定番のコースです。 そういうわけで、なぜかまたもや国分町に引換し、とは言っても中心からはかなり離れた場所にある「もつ蔵 国分町店」にお邪魔することにしたのでした。国分町はまだまだ宵の口といった時間ですが、まだまだ旅の途上にある身にとってはけっこうなよい時間帯です。それこそえり好みしている場合ではありません。新しい店内はさほど魅力があるわけではありませんが、くたびれた身にとっては清潔で安心して入れるお店です。客層は、早い時間帯は仕事帰りのサラリーマンを想定しているようですが、店を終えた同業も当て込んでいるのでしょうか、なかなかしたたかな商売振りのように見受けました。ぼくの貧困な観察経験では、クラブなんかに入り浸る客はかつてはアフターに店の女の子を同伴して焼肉店や寿司屋へ繰り出していたという印象ですが、景気が上向きとかいうこの現況でもやはりもつ焼店のようなお手軽な方に流れるのも増えているようです。むろん、仕事を終えたちゃらちゃらした服装の客引きのお兄さんたちも多く目に付きます。店は限りなく平凡でこれと言った特徴もないのがむしろ好まれるのかもしれません。酒も肴もごく標準レベルで、ただ店のお兄さんたちが軽そうな見掛けながら、案外生真面目そうなのも仙台人の人柄なのでしょうか。 ほうほうの体でホテルに帰還し(たらしい)、なんとか起床、ようやく準備を整えて人心地つこうと思ったところにK氏から連絡あり。喫茶店でモーニングを摂ってから、一番町通り、中央通り、名掛丁を経由し、仙台駅に到着。天候はいまひとつですが、仙山線に揺られて山寺(立石寺)にご案内です。(中略)観光を終え、仙台駅には14時頃に帰還、お土産を見繕いますがK氏の帰りの新幹線にはまだ時間がたっぷりとあります。それでは一杯やりますかねと向かったのは、昔から変わらぬ横丁風情をかろうじて留める数少ないエリア、名掛丁です。 仙台駅東口すぐの名掛丁センター街は、多くの横丁が消滅した仙台市街地の中では、壱弐参横丁が若者向けの酒場へと新陳代謝しているのとは対照的に居抜きは、ありながらも昔からの古い飲食店がかろうじて残される一角です。まだ夕方にもならぬ午後3時過ぎですが、雨脚も強くなっているので辺りも暗く、これならまあ呑み始めてもあまり罪の意識を感じずに済みそうです。何軒かはすでに営業を始めています。そんな中で名掛丁のアーケード側と路面の政岡通りをまたぐビルには、抜け道風に酒場が軒を連ねるビルが2つあります。その抜け道のひとつに「味なかくれ処 いな穂」があります。カウンターにテーブル2卓のこぢんまりしたお店を中年のご主人がひとりでやっているようです。瓶ビールを注文するとお通しには思いがけずも稚鮎などの気の利いた肴が3種盛合されていました。カウンターのネタケースの上には月山筍とあり、ネマガリダケのことのようです。これはぜひともいただきたくて注文しました。皮ごと炙った筍に塩もしくは味噌をつけただけのものですが、ほろ苦くて香ばしくて酒が進みます。主人は風貌は料理人風ではありませんが、どこぞやできっちり修行されたのかもしれません。雨脚があまりにも強くなったので、K氏は帰りの新幹線を早めることにしました。勘定を済ますと入れ替わりに高齢のオヤジさんがお二人入られてきました。駅に向かう途中で傘も役に立たぬほどの大雨になりました。そんな時なのにK氏は店にお土産を忘れてしまったらしく、取りに戻ると店にはさらにお二人が入られていて、この方たちもかなりご高齢なのでした。
2014/06/25
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仙台の呑み屋横丁を呑み歩く その2
壱弐参横丁の老舗酒場で長居してしまいました。かなり年長のK氏は、横丁の雰囲気を堪能したものの相当へばってしまったようで、先にホテルへとご帰還することになりました。これからは独りきりの時間を過ごすことになります。人と一緒も愉快ですが、やはり独りにならないとその町を十分には知りえぬのではないかと思うのです。 仙台駅前の目抜き通りである青葉通りと一番町通りの交差点にある「たから屋」という立呑み店の店先でK氏とはしばしのお別れです。独りになったわずかばかりの寂寥感と解放感がなんともいえず心地よく感じられます。明るい清潔感のある立呑み店でけして好みのタイプの酒場とは言えません。ああ、これこそが旅なんだなあなんて柄にもなく気取ってみたりしますが、これまで喋くりまくっていたのもあって、独りが退屈になってきます。先客のカップルが帰ると若い主人も暇を持て余したような表情を浮かべています。なかなか感じの良さそうなお兄さんだったので、話しかけてみることにしました。って言っても話題はこの辺りの酒場の話。どこか古くからやっているお店はないか伺ってみたところ、いくつかの有力な情報の中でもとりわけ気を引く酒場がありました。わざわざ伝票の裏に書き込んでくれたところによると「明眸」と書き「めいぼう」と読む酒場がお手頃価格で古くからやっているらしいと店の馴染の客から聞いたとのこと。さもあらば行ってみないわけにはいきません。おっとその前にこちらのお店の感想を。正直まだまだ店として枯れていない感じで模索中というところのようですが、若い主人の人柄の良さがあれば、韓国風にアレンジされた肴も悪くなさそうなので、あとは頑張り次第で長続きすることを期待したいものです。ただ、値段が立呑みとしてはちょっと高めなのが気になりました。 「明眸」を目指します。一番町商店街の端っこを右に折れてちょっと行ったところとのことです。アーケード街を抜けて街灯もまばらになった場所にその店がありました。外観はさほど古くは感じられませんが、大きな袖看板に店名が几帳面な書体でくっきりと記されている辺りに店の歴史を認められなくもありません。これは後日なんとしても訪れたいものです。 くたびれ果ててはいますが、せっかくの仙台の夜をこれで終わらすわけにはいきません。次は仙台最大の歓楽街として名高い(?)国分町に行ってみることにします。国分町は居酒屋というよりはスナックやキャバクラ、その他風俗店が目立ちますが、客引きの呼び込みなどに惑わされずに気をしっかり持ってじっくりと目を凝らすとちらほらとちょっとよさそうな居酒屋やバーなども潜んでいることがわかります。でも時間も時間なのであまり選り好みしていると明日に差し支えます。それでも国分町をざっと2巡ほどしてから、意を決してお邪魔することにしたのが「いわき」でした。いかにも歓楽街の片隅で身を潜めるように商売を続けてきた典型のようなお店で哀愁が色濃く感じられます。恐らくはホステスさんなんかをはじめとした水商売の方たちを相手にしたお店なのでしょう。店内はカウンターせいぜい10席程度の狭さで、先客は男性客1名だけ。見たところちょっと強面でどこか女の子を置くようなお店の用心棒というわけでもないのでしょうが、それなりの修羅場を踏んできたといったまるっきり表情も変えず、ひと声も発せず、ひたすらTVの画面に見入り、何を考えているのかわからない方でした。主人もまた必要最小限な言葉以外は発することなく、こうした町の光と影の影の一面を数多く見てきたといった様子です。まあこんな観察は一見のよそ者がどこか身勝手な期待含みでの推測でしかなくて、日頃はまったく違った表情を見せられるのかもしれません。そうそう、そろそろ仙台のお楽しみを肴にしようと頼んだのはホヤなのでした。仙台で過ごした当時は呑みこむようにしか食べれなかったこの肴が今や仙台を訪れる愉しみのひとつになるとはと流れた歳月の思った以上の長さに酔いは一段と深まるのでした。
2014/06/24
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仙台の呑み屋横丁を呑み歩く その1
なかなか遠方くへの出張がない職場なので，そのチャンスが巡ってくるといつもだと1カ月も前からうきうきしてみっちりと下調べやらスケジュールを立てて，実行不可能なほどの充実したプランが出来上がるのですが，今回は珍しく立て込んだ仕事に追われ，ほとんどノープランで仙台に向かう羽目になったのでした。といっても仙台は小学生、中学生にかけて2年と少しの期間、暮らしたこともある町でその後もちょくちょく訪れる機会があって、このブログでも何度か報告させていただいてるくらいには勝手知ったる町です。その余裕もあって、下調べが楽しみというよりは、すでに自分が知っている以上の発見などあまり期待できないという諦念めいた気分で旅に出ることになったのはなんとももったいないことでした。しかもその前夜には如何ともしがたい会合に出席しなければならず、酒は極力控えめにしておこうと思いつつ、そんな思いがどうにかなるわけもなく、いつものように痛飲してしまったのでした。 そういうわけで仙台での用事が昼過ぎから夕方ということもあったので、午前中はフルに自分の好きなように使えるという絶好のチャンスを活かすこともできず、珍しく乗車した東北新幹線の途上でも―大抵、鈍行か高速バスを利用する、トホホ―うつらうつらと過ごしてしまい、到着したのは用事の約束した時間のわずか2時間ほど前だったのでした。用事というのは一応仕事なので遅刻する訳にもいきませんから、あまりぶらぶらしていてうっかり遠くまで行ってしまうなんていう失敗をやらかすこともできません。やむを得ず、会場のある仙台駅東口―住んでいた頃には駅裏と呼んでいた―を歩いてみることにしました。昔この界隈を遊び場にしていた当時の思い出を辿る散歩となりそうです。二日酔いのぼんやりしたときには、こういうおセンチな行為も悪くなさそうです。といってもこんな私的なことをつらつら綴ってもしょうがありません。歩いた経路だけを備忘のために記しておくことにします。東口は寺町です。立派な寺社が点在しており、その中心には新寺小路という2車線道路が伸びています。この通りをちょっと南に入ると、当時仙台一校に通った若き日の井上ひさしが可憐な美少女時代の若尾文子の暮らす駄菓子屋(だったかな?)に通った連坊小路があります。ここにある小学校にぼくもかつて通ったのでした。ところが新寺小路こそかつての面影のままですが、小学校が見つからない。まあさほど未練があるわけでもなし、かつての中学校を目指しました。こちらはさすがにすぐに見つかります。この一帯にはかつては喫茶店が数軒ほどあったはずですが、まるで見かけません。時間もないことなので、楽天Koboスタジアム宮城―当時はごく単純に宮城野原球場だった―を眺めつつ、仙台駅方面に引き返すことにします。過程で1軒の喫茶店を目にしました。ここの存在はまるっきり記憶にありませんでしたが、残念ながら閉店してしまったようです。かつての面影のまっくなくなった榴ヶ岡駅―かつては地上駅でした―とその沿線風景をしらじらとした気分で眺めていると早くも仕事の時間が迫っています。軽く食事を取ろうと東口のかつてはごちゃごちゃした呑み屋街だった辺りに行ってみることにしました。これまで迂闊にも知らなかったのですが、名掛丁って駅の東西を連ねいていたようです。こちら側はすっかり整備されて、でも寂しく数えるほどの飲食店があるばかりです。そこを進むと元寺小路と名掛丁を交差するように架けられた通称X橋と呼ばれた―正式には宮城野橋だったようです―レンガ造りの古い橋があり、この周囲は戦後、赤線の指定を受けていたことを知ったのは、ずっと後のことですが、今にして思うと、怪しげなスナックや呑み屋の跡が数多く残されていたことが思い返されます。《仕事につき中断》 仕事を終え、簡単な宴席を中途にて退出、ようやくフリーとなります。といっても今回の出張は同行者ありです。20歳近く年長のK氏が一緒です。K氏は最近になって急激に親しくなった方で、この人の口添えもあって今回の出張が叶ったわけですから感謝しなくてはなりません。酒はさほど強くありませんが、その席は大好きなようです。せっかくの仙台なのでその名店にまずはお邪魔することにしました。取りあえずホテルにチェックインしようと向かうは青葉通りを西公園方面まで歩かねばなりません。K氏には予告編として立ち寄る酒場の片鱗を眺めてもらって気分を高めることにします。一番町通りを通過しながらその呑み屋街を案内すると気分がかなり高まったようです。青葉りを交差する国分町通り晩翠通りを越えてようやくホテルにチェックイン、休む間も惜しく早々に一番町に取って返しました。 この夜の一軒目は文化横丁から始めることにしました。仙台に在住の呑兵衛の方や酒場マニアの方であればすぐさまああ、あすこかと思い至るに違いない名酒場を目指します。青い電飾看板が下がるアーチを越えると呑み屋や寿司屋が軒を連ねています。そんな通りをしばらく進むと「源氏」と控えめに灯る看板があります。わずか1間ほどの小路に入り込み、さらに左にそれるとその酒場の入口に辿り着きます。この入口までのアプローチだけでも行ってみる価値が十分と思わせるすばらしい雰囲気。昭和25年創業という仙台でも最古参の一軒で、よくよく見ると2階建ての思った以上に大きな家屋であることに気づかされます。早速店内に入るとわれわれのために誂えられたようにコの字のちょうど2席が残されるだけだったのでした。よく知られるようにこちらはお酒を注文すると肴が1品添えられるという方式が採用されています。この独特な流儀にも店の歴史が感じられます。もはや年齢も不詳である、真白な割烹着がこれ以上ないくらい似合う女将さんは他には思い浮かばぬほどです。K氏も店のちょっと暗すぎるくらいの静謐なムードをすっかり楽しんでおられるようです。お客たちはけして黙りこくっているわけではなく、この店のムードを壊すことのないように節度を重んじるべきであることを店の風格が悟らしてしまうようです。K氏に言わせるとぼくにはこの店は上品すぎやしないかということでしたが、いやいやぼくだって、けしてこういう格調さえ漂わす風雅なお店も大好きなのですよと、満足されている姿を喜びつつ、次なる店に向かうのでした。 店を出て、巨大なバラックを示すと大層興味を持たれていたので、せっかくなので続いては壱弐参横丁に行ってみることにしました。昭和20年の仙台空襲により焼野原となった町は多くの露店があったそうです。昭和21年に露天商が集まり中央公設市場としてできあがったのが壱弐参横丁ということです。横丁といってもっかなりの規模があり、飲食店を中心とした150軒近くの店舗が入居しているようで、確認しただけでも4つの共同便所があります。そんな中でも最古参に違いない「ツルヤ」にお邪魔してみることにしました。「小町」や「金八」など老舗風でありながらが若干高級な雰囲気であるのに対しお向かいの「王将」当は懐かしい大衆居酒屋らしい造りです。昭和22年創業というからこの横丁の最古参の一軒であること人間違いはなさそうです。そういうお店だから店主夫婦のかなりの高齢、オーダーミスもなんのその、頼んだはずのしどけ(山菜)のお浸しも頼んだそばから忘れ、茹でては忘れ、味を付けてようやく出て来るかと思ったらよそにいっちゃって、われわれの前に出されたのが30分をとっくに過ぎているのもお愛想。客たちはそんなじいさん、ばあさんの憎々しい発言が連発しようとも、どうしても憎めないのでしょう。これぞ老舗店ならではのまったりとしていながら、毒を孕んだ言葉の応酬がなんとも言えず楽しくて、爽快でいつまででも呑んでいたくなるのでした。 ここでK氏は早くも脱落。ほとんど食事らしい食事もとっていないのに大丈夫なのか。ぼくは独り青葉通りと一番町商店街が交差する角にある立呑み店に入ることとし、ひとまずは解散となったのでした。
2014/06/23
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仙台出張帰りの喫茶店巡り その1
本当なら居酒屋巡りから話を始めるつもりでぽつりぽつりと書き始めていたのですがうっかり日曜版の喫茶店ネタがなかったものですから記憶に新しい先だって行ったばかりの仙台への出張の行き帰りに立ち寄らせてもらった喫茶店の話から載っけることにします。すでにほぼ書き終えている居酒屋編との繋がりの悪さや重複はご容赦ください。 二日酔いの残るひどく鈍って重い頭の立ち直る気配さえ訪れぬままに、呆気なく到着した仙台駅。用件の開始までは2時間ばかりしか残されていません。かつては駅裏と呼ばれた駅東口を散歩することにします。この詳細は居酒屋編に譲ることにして、すっかり様変わりした榴ヶ岡駅周辺を歩いていると「Rio」という喫茶店があります。ここからほんの20メートルほどの場所にかつて住んでいたのにこんな喫茶店があったことなどちっとも知りませんでした。残念なことに閉店されたようです。 典型的な地方の駅前の再開発地域の様相を呈している東口ですが、駅からもそう遠くない場所に嬉しいことにそれなりの年季を感じさせる一軒家の喫茶店がありました。「赤い屋根」という喫茶店がありました。扉上の壁に貼り付けられた可愛らしいロゴの点が剥がれ落ちているあたりに店の年季を感じます。店内も枯れたいい雰囲気ですが，ギャラリーっぽく雑多な調度が展示されていて，どうやら骨董も扱っているようです。外目にはそれなりの収容定員が入れそうに見えましたが，それらの骨董品が喫茶客の居場所を狭めています。ぼくの趣味とは少々異なりますが，古い喫茶の少ない仙台にあっては貴重な喫茶店です。 仕事を終え，2軒呑んだ後，同行したK氏と別れ一人になったぼくはさっき呑んでいた壱弐参横丁(詳細は居酒屋篇で)に引き返しゆっくりと独りで散策してみました。仙台に住んでいて数十年前からほとんど変わらずやっているお店がまだ営業していましたので入ってみることにしました。「三好ロフト」というお店です。どうも記憶の底から違和感が湧きあがって来たので，ネットで調べてみるとかつては「コーヒー ロフト」という名前でやっていたのが，10数年前に「三好」という定食屋とくっついたようです。それが違和感の理由だったのか定かではありませんが，まあ納得しておくことにします。特に凝った飾り付けがされているわけではありませんが，昔風の落ち着けるお店でした。 翌朝，8時過ぎにK氏が部屋に迎えに来てくれました。酒が残っていますが動き出さないと体がどんよりしたまんまで1日が終わってしまいそうなので、気力を振り絞って町に繰り出しました。歩いていると、それなりに古びた感じの喫茶店があったので朝食を兼ねて入ってみることにしました。「ポケット」というお店で、格別愉快な飾り付けが施されているわけではありませんが、まあカフェとかコーヒーショップばかりのこの界隈では、重宝されてきたお店のようです。典型的なモーニングが二日酔いの胃腸に染み渡り、ひと心地つけました。 その後、山寺観光をして、おみやげを買って、少し呑んだ後K氏とはお別れ。独りで呑むことにしたのですが、それまた居酒屋編にて。翌朝、早く起床して各駅停車で東京を目指します。
2014/06/22
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山形で呑みまくる 第3夜 おまけ
山形も3日目・最終日を迎えました。といってもわれわれ3人すっかりくたびれ果てているので、酒田から直接仙台に向かうことになりました。本来なら仙台であれば「源氏」辺りで軽く呑んでおきたいところではあるのですが、ぼくも十分呑んで満足しているので、この夜厄介になるT氏宅でのんびりさせてもらうことにしました。山形道の入口を目指して車を進めているとなにやら喫茶店らしきものを目撃、せっかくの機会だから行けるところは行っておいたほうがいいというT氏の厚意に甘えて立ち寄ってもらうことにしました。ところがこの後立て続けに喫茶店を目撃することになるとは思っていなかったのでした。 最初に見つけたのが「ヴィヨン」です。まあどうってこともない街道沿いの喫茶店ですが、最後の一軒と思い立ち寄ってみました。店内は外観の味気ない雰囲気とは違って、正統派のムード漂うちゃんとした喫茶店でした。たまたま来店していた恰幅のいい偉そうなおっさんがいて、店のために何やらサインなんぞを書いているので、しっかりと俗物根性を丸出しにして店の方にお尋ねしたところ、なんでもない方なんですけど記念にね、と何だかよく分からない回答をいただいてしまったのでした。ますます何者なのか気になるではないか。 さあ、今度こそ本当に仙台に向かおうと車を走らせるとすぐに「COFFEE POCKET 四季」という1階が駐車場、2階に店舗になっている喫茶店に出逢いました。ああ、すまないことよ、もう少しだけお付き合いくださいとお二人にはお断りをして表の階段から入店します。ところが、看板が邪魔をしてまたぐように店内へ。あらあらすいませんといった表情の女主人が出迎えてくれます。それなりに年季を感じさせる店内はまあそこそこ純喫茶気分をくすぐってくれます。薄茶色のもったりしたソファに白い鉄のフレームで誂えられたパーテション、まあどうってこともないのですが、ぼくの入店後次から次へとお客さんが来店。しかもみなさん勝手知ったることに裏口から入って来られます。駐車場利用者用の階段もあったんですね。帰り際にマッチありますかとお尋ねすると、お待ちくださいと恥ずかしげに差し出してくれたのが印象的でした。 思いがけず長引いた酒田滞在もこれで終わりと改めて車を走らせると次なる喫茶店が登場。「アムール」です。小さな一軒家の昔ながらの喫茶店、小さい頃こんな喫茶店、よく見かけたものです。店に入るとご主人はまだ40前位の若い男性だったのでちょっと意外です。店の雰囲気はもともとの内装を引き継ぎつつも、現代風にアレンジした雰囲気です。このご主人は二代目で先代の残したクラシカルなムードを活かそうとしている意欲は感じられますが、どうもうまくいっておらず、カフェっぽい感じで外観とのギャップが残念に思われました。 ここからはおまけです。さて、途中のドライブインで昼食をとりつつ、五橋の村上屋餅店でお土産のずんだ餅を買ったりして、T氏夫妻宅に向かいました。夫妻のお宅は、大仏マニアにはよく知られた高台の住宅街のど真ん中に建つ仙台大観音のそばにあります。ここから市街地まではけっこう時間が掛かるので、たっぷりと昼寝をしたわれわれはご近所のファミレス風居酒屋に出掛けたのでした。仙台に5店舗ほどあるというこの居酒屋「梵天食堂 南吉成店」は地域のコミュニケーションの場という居酒屋の重要な役割を十分果たしているように思われます。地方に行くとよく市街地から外れた住宅街に駐車場付の居酒屋なんかがあったりしますが、こちらはほとんどのお客さんが徒歩で来られる圏内に店を構えています。そのため、ママさんたちの会合や子連れなんかもいたりして、それはちょっといかがなものかと思わぬでもありませんが、他にほとんど選択肢がないのでやむを得ません。肴はヴォリュームがあり、チェーン店でありながら店長の自由な采配が認められているようで、たびたび利用するT氏夫妻の来店を知ると夏野菜の炒め物なる肉もたっぷり入った立派な差し入れまでしてくれました。若い女性が中心の店員さんたちも驚くほどにフレンドリーで感じがよかったです。まあそれ以上のものを求めるなら来店は避けたほうがよさそうですけど。 ということで翌朝は早起きしてようやく新宿行の高速バスに揺られて帰宅したのでありました。山形市で張り切り過ぎたのが後日響いて酒田を十分に回りきれなかったことがほんの少し悔やまれます。 最後にさらにおまけで酒田の喫茶店の続きです。
2013/08/25
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山形で呑みまくる 第2夜 その4
「久村の酒場」を後にして、一旦ホテルへと帰還、ホテル1階のロビーで一憩しながらT氏に連絡。T氏夫婦は観光後、昼寝をして意気揚々と夜の町に繰り出す準備も万端整っているようです。さて、駅からあまり歩くには疲れすぎていたし、かといって歩き回った限りでは酒場慣れせぬ人たちを連れて行けるような店もあまりない。さて、どこに行こうかと迷いつつ、ブックスタンドに置かれたじゃらんなどぱらぱらめくっていると目指すべきお店が見つかりました。そうそうすっかり忘れていましたが、酒田にはフレンチの名店と名高い店があったことに今にしてようやく気付かされたのでした。日頃は二の足を踏むところですが、たまのことなのでよしとしましょう。 T氏夫婦を伴ってホテルを出て、駅前通りをほんの2,3分ほど歩くとホテルイン酒田駅前というとてもフランス料理店があるようには思えぬｈどさびれたホテルがあります。この3階にあるのが「ル・ポットフー(LE POT AU FEU)」です。はじめてこの店の存在を知ったのは、随分最近(といっても5,6年前)のことで岡田芳郎著による『世界一の映画館と日本一のフランス料理店を山形県酒田につくった男はなぜ忘れ去られたのか』（講談社）を読んだからでした。この本を読んだのはフランス料理への興味ではさらさらなく、世界一の映画館ってなんだろうというしかも酒田にそんな映画館があったのかという素朴な理由からでしたが、かの淀川長治から世界一の映画館と評されるほどの映画館であった、そして惜しくも火災で焼失したという「グリーンハウス」にはぜひ訪れてみたかった。それはともかくとしてこの映画館を一躍全国的に知らしめた立役者であり忘れ去られたという佐藤久一(けして忘れ去られていないようで、詳しくはネットにて検索してください)がオープンしたフランス料理店の一軒が「ル・ポットフー」です。開高健、山口瞳、丸谷才一、そして土門拳らに愛されたという味は一体どうなのか楽しみです。冴えない町の古臭いホテルのこれまた動いてるのが不思議なほどのエレベーターに乗り込み3階へ上がります。なんだか不安になりかけたところ扉が開くとあらびっくり。なんとも酒田離れしたゴージャスな内装です。予約なしでいきなり訪れて大丈夫なのかいささか不安もあったのですが、その点はなんら問題なし。先客は一組だけ。先日の山形での教訓に倣いフルコースは控えてぼくはエレベーターで宣伝されていた豚肉を使用した肉のコース、お二人は魚のコースをお願いしました。仔細に料理の紹介をするのもいいのですが、日頃肴などどうだっていいと言っていてちょっとだけいいものを食べた時だけ宗旨替えして事細かに書き連ねてはよろしくないので、ただ一言、なかなかおいしかったとだけ述べておきます。それにしても二日酔いで具合悪かったのによく呑みました。いつもと違ってちょっとお高い料理を食べると貧乏性なのでちまちまつまんではワインをがぶがぶと呑んでしまってソムリエの方にはご面倒をお掛けしました。まあ、酒場遣いはいささか贅沢なお店ですが、たまにはこのブログも変化があっていいかもと思っていたのでちょうどいい機会でした。 さて、お二人はお腹も一杯、酒も十分ということでまた一人になったのでした。さて、どこに行こうかと駅前の2つの飲み屋街を歩いてみましたがどうも気乗りがしない。と、駅前通りの突き当り喫茶店の「マリン」のはす向かいに飲み屋ビルがあったのを思い出した瞬間足はそこに向かっていました。う～ん、なんとも危うげな雰囲気だ。こんな店に入ってしまって無事でいられるのだろうかと、普段どんな酒場に行ってもヤバいという噂がある店でもさほど躊躇せずに入ってしまうようになったぼくではありますが、やはり知らぬ町の人気もない薄暗いビルの酒場とあっては若干の緊張を覚えるのでした。せっかくドキドキしているのだからさらに敷居を上げて、2階のお店に飛び込んでしまおうと誰ともすれ違わず物音さえまるで聞こえてこないビルの最奥に到達してしまいました。思い切って扉を開けたのは、読み方のわからないなんだか難しい店名のお店でした。デジャブのような既視感を感じるのはこうしたビルの店はどこも似たり寄ったりだからというわけでもなさそうです。カウンター5,6席だけの小さな狭いお店で、こうしたビルにはスナック的な店が多いイメージがありますが、ここはきっちり居酒屋の体裁で商売しているみたいで一安心。賑やかで物事をはっきりと言う(逆に言えば失礼なこともお構いなしに語る)女将さんに常連の二人のおじさんたちというメンバーで案外にわいわいがやがやと賑々しくお喋りしています。女将さんはぼくのことを気に入ってくれたらしく、腹がくちいのでもう食べられないというぼくにじゃこてんを焼いてくれたり、いろいろ構ってくれてやがては近所のおっさんたちを含めてすっかり常連にでもなった気分でした。うっかりしていつ頃から店を始めたのか失念してしまいましたが、お勘定する前に店のことをいろいろと語り聞かせてくれて、最後には貴重な開店時のチラシ2枚とマッチをプレゼントしてくれました。いずれも字もいいし、デザインやカットも素人とは思えない質の高さです。女将さんの自慢のお兄さん?が開店を記念して作ってくれたもんだとうれしそうにそして鼻高々に語られたことが記憶に残っています。肴の種類も少ないし、どうしてもついついお替りしてしまうので長っ尻になってしまいますが、とても印象深いお店の一つとして記憶に留めたい思います。店名は「鹿火屋(カビヤ)」というようです。 参考までに写真では醜いのでチラシに記載された品書きを書き写しておきます。御献立例として御酒 御銚子1本……\150、ビール 大瓶1本……\300、ウヰスキー サントリーオールド……\3,300、サントリーホワイト……\1,700、御豆腐田楽 大串……\70、揚蒲田楽 大串……\70、モツ焼田楽 大串……\100 etc.
2013/08/24
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山形で呑みまくる 第2夜 その3
さて、酒田市街地の散策です。レンタサイクルに乗り込んだぼくは、颯爽と―はいかず、あまりにも低いサドルにとまどいながらガニ股姿で―こぎ勧めたのでした。 ホテル前の飲み屋街を通過し、そう遠くない場所にあるチョンノ間風飲み屋ビルを通過します。先ほどホテルに向かう車から見えた喫茶店に向かっているのですが、その間にも数軒の喫茶店や喫茶店跡を見掛けます。 酒田での一軒目の喫茶店は「軽食 喫茶 マリン」という小さな可愛い喫茶店にお邪魔しました。ヨットのような丸い窓が可愛さを際立たせているようです。カウンターでは先客の男女がマスターとご機嫌に会話に興じています。ぼくも席に着いて店内を見渡します。レンガ風の壁紙の貼られた壁には、店名に相応しく舵やヨットに写真が飾られています。なぜだか手製と思われる機動戦士ガンダムの木製人形が飾られていました。 続いては住宅街の只中にぽつんと営業している「クイーン」というお店です。赤紫色のベルベットのソファが印象的な渋いお店です。品のいい女主人がひとりだけの静かなお店でした。それでも気詰まりになることもなく気持ちよく時間を過ごすことができます。ゲーム機が2台置かれていることからも古くからやっているんだなということが察せられます。 あまりにも近距離に立て続けにあったもんだからじっくりと町巡りをすることにしました。そうするうちにも次から次へと喫茶店が姿を現し、一部は廃業していたもののこれほどまでに多くの店が生計をたてられていたことに驚かされます。 町の中心部をなしている市役所や市民会館、マリーン5清水屋とかいうデパートの辺りにもたくさんの喫茶店がありました。しかし町には人気がなくひっそりと静まり返っています。唯一、清水屋には涼を求めて来店している客たちを見掛けるくらいです(ちなみにこの2階に「COFFEE HOUSE POEM」が入っていました)。八幡宮や日枝神社、戦前神社が立ち並び山王くらぶや相馬楼などの由緒(というかかつて豪商たちが遊んだ有名料亭)ある建物の周辺はむしろそうした建物よりも朽ち果てそうな姿を今に留める酒場や風俗店の立ち並ぶ様が見ものです。 そんないかがわしい地域の外れに「創作甘味茶房 ケルン」があります。西洋建築を見よう見まねで模倣したような古い日本的な建築様式の名残のようなものが感じられます。店内は純喫茶というよりも正統派喫茶店に近い硬派な内装と調度が施されていますが、より山小屋に近い印象を受けます。何よりこの店を特徴づけているのは、ひと癖ある店主の個性でしょうか。容姿についてあれこれ言うのは失礼にあたるので避けたいところですが、ちょび髭にだらりと垂れた7:8分けの髪型とあってはヒトラーを意識していると考えても間違いなさそうです。この店主が書いたに違いない川柳（この日は「雨の中 時まれどなる 選挙カー」）は毎日のように更新されているのでしょう。ちょっと重いヒトラーおじさんのお店でした。 おまけに酒田で見掛けた喫茶店を掲載できるだけ紹介しておきます。
2013/08/23
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山形で呑みまくる 第2夜 その2
その後、T氏夫婦の自動車に拾ってもらい市街地をぐるりと一巡りしますが、数軒の喫茶店を見掛けたものの「ローリエ」を上回るすごい喫茶店はなさそうですし、十分に満足していたのでこの夜の宿泊先である酒田へと移動することにしました。酒田もやはり数年前に来ていますが、その際はあまりゆっくりと歩き回る時間もなかったため今回はたっぷり時間を割いて散策しようと思っています。 酒田に到着後、今回唯一の観光地に立ち寄ることにしました。実際立ち寄るだけで見物もせずに食事と一杯呑むだけで終わらせてしまうことになりました。明治26年に建てられたというコメの保存用倉庫である山居倉庫です。その二棟が夢の倶楽なる赤面しそうな施設として改修されており、1棟は歴史資料館、もう1棟がお土産屋さんになっています。このお土産屋さんのほうに食事処があったのでここで昼食にすることになりました。 「お食事処 食彩旬味 芳香亭」です。改修されて間もないこともあり倉庫の中という雰囲気はまるで感じられず、こんな風に作り替えるくらいならもとの印象をそのままにしてくれたほうがよほど面白いのにとまったく楽しめません。それなのに収容定員としては80名ほど入れそうな店は一杯、観光バスで大挙して観光客が押し掛ける、そんなお店のようです。こうしたお店はうまいはずがないというのが道理でやはりその予感は間違いものとして現れました。おいしいのは酒ばかり。あまりにもがっかりさせられたので写真はなし。料亭の「香梅咲」というのの姉妹店ということですが、こんないい加減な商売がいつまでも続けられるはずはないと思うのでした。 むしろ、「夢保楽」とかいうこれまた恥ずかしいなのつけられたお土産屋の一角を使ったカウンターだけのファーストフードコーナーのほうがよほどいい。「オリジナルつや姫ソフトクリーム」などを買い求める方が多い中、山形の地酒をちっちゃなグラスで安価に味わわせてくれるのでした。まだ日が高いのでさすがに控えめにしました。こんなことなら「芳香亭」はパスしてここで玉こんにゃくをつまみながら日本酒を味わっていたほうがよかったかも。 酒田駅前のビジネスホテルに荷物を預けます。チェックインにはまだ時間が早かったので、軽く昼寝でもしたいところですが出掛けることにしました。なんともうれしいことに酒田市では無料でレンタサイクルの貸し出しを行っているようで、このホテルもレンタサイクルの貸し出し場所に指定されているのでした。お二人は車で山王くらぶやら旧鐙屋といった史跡巡りに車で向かうそうです。で、自転車で市街地の散歩に出かけたぼくは酒田という町の町の規模からするとどうして成り立っているのか不可解なほどのたくさんの喫茶店に出逢うことになるのですが、喫茶店話が連続するとつまらないので、これはまた後日に譲り、夕方頃にホテルにチェックイン、30分ほど昼寝をしてから出掛けたすばらしい酒場のことを書きたいと思います。 本当はお二人も連れて行きたかったのですが、歩いていくにはいささか遠すぎるのでひとり念願にしていた酒場に向かうことにしました。ところで酒田には駅前のホテルの向かいは韓国系の飲み屋街、その100mほど離れたところにもかつてはチョンノ間であったらしいことが想像できるような一角があったり、こじんまりとして味わいのある怪しげな飲み屋街や飲み屋中心の雑居ビルがあちこちにあるのですが、山王くらぶの周辺がもっとも中心的な盛り場だと思われます。大体山王くらぶなんて観光名所としてとりすました趣が感じられるような紹介のされ方が旅行雑誌や観光向けホームページではされていますが、なんのことはないそのはす向かいが現役の巨大キャバレーなのでした。周辺にはいかがわしくて魅力的な風俗店とも酒場ともつかぬ店が数多くあって、なんで駅前にホテルを取ってしまったのだ、しかもなんで昨夜二日酔いになるまで呑んでしまったのかと昨夜の楽しさも忘れたかのように無念の思いを噛みしめるのでした。 と前置きが長くなってしまいましたが、山王くらぶからもほど近い場所にあるのが「久村の酒場」です。慶応3年酒屋として創業し、昭和初期には角打ちを始め、昭和36年に居酒屋となったという歴史ある老舗酒場です。二日酔いでしかも先ほどまで喫茶店で何杯もコーヒーばかり呑んで胃腸の具合もいまひとつなのが気掛かりですがなんとかなるでしょう。それにしてもなんと味わいがあるのでしょう、自転車で山王くらぶやらいろいろと古い建物を見て回りましたが、この酒場に比べると何ほどのこともありません。国とは言わぬまでも酒田市はいますぐにでも文化遺産とか史跡指定をして保存に努めるべきではないでしょうか。建物の左手は酒屋さんらしき造りになっていますが、現役で酒類の小売りをしているのでしょうか。右手の入口からそっと店に入ります。すでにじいさんがひとり入口入ってすぐのカウンターで呑んでいます。このカウンター、「酒場放浪記」をご覧の方はご記憶かもしれませんが、ガラス張りのネタケース状になっていて、そこから肴を選ぶこともできるのです。じいさんがしきりとこちらの様子を伺っています。素知らぬ顔で汗をぬぐっていると、お店の女性が登場、早速瓶ビールをお願いします。ついでにガラスケースにあったむきそばをもらいました。これは知っています。山形ではソバの実を皮だけ向いたものを茹でてそれを干しシイタケなどの具が入っただし汁に入れ、よく冷えたものを食べるのです。暑さでのぼせそうになっていた体に冷えたビールとむきそばが心地よく入っていきます。ようやくひと心地ついて、店内をねめ回すように眺めます。入り口付近の壁には吉田類、太田和彦、なぎら健壱といった名だたる呑兵衛の色紙なんかが飾ってありますが、まあそれはどうでもよいこと。そんな様子を見ていたじいさんがどちらからおいでになったと話しかけてきます。東京から来たのだと答えるとこの店おもしろかろう、よければ奥を見てもいいよ、そこの座敷よりもっと広い部屋があるんだとおっしゃるので遠慮なく見学させてもらいました。確かに広い座敷がありますが、薄暗い大広間より手前の酒場らしい空間がやはり楽しい。手前の小上がりの向かいには内庭もあって古びてはいるものの貫録ある構えに感心しきり。席に戻って再び呑み始めると常連らしく堂々と現れたのが浴衣姿の山田五十鈴に似たお姉さん。早速ビールを召し上がっています。じいさんが娘さんなのでしょうか、貫録ある女将さんにあの人に奥を見せてあげたんだとうれしそうに報告したものだから女将さんなんだかご機嫌悪くなって、そんなことしたら他のお客さんの迷惑になるでしょとこちらに聞こえるようになのかは判然とはせぬものの厳しくたしなめています。何もそこまで怒んなくたっていいのにと思いながら日本酒とビールと辛子で漬け込んだという小振りのきゅうりであるうどがわらきゅうり漬を注文したらなんとなく視線が厳しかったような。その後、座ったら即瓶ビールと大きいタンブラーが届けられるといった常連組が続々入店してきます。常連にはセットと呼ばれるゲソ揚と厚揚の盛合せが人気のようです。ぼくもいつまでもだらだらと呑み続けたい気分ですが、T氏たちを待たせては申し訳ないのでほどほどで引き揚げたのでした。品書:生中:470,酒(初孫金印:260,鯉川どぶろく:370),桜マスの餡かけ:550,沖ぎすのすりみ汁:390,いかの塩辛:420,〆さば:650
2013/08/22
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山形で呑みまくる 第2夜 その1
昨夜とは打って変わっての快晴の朝を軽い頭痛を抱えたまま迎えてしまいました。朝食を食べる習慣のないぼくはさっさとシャワーを浴びて荷物をまとめ、チェックアウト後にさっと町に出ることにします。彼らが朝食を摂っている間にひとり喫茶店を訪れるつもりです。駅方面に昨夜すでに営業を終えているのか、はたまたすでに廃業してしまったのか定かではない店があったので、立ち寄ってみたいと思っていたのでした。 駅前の大通りを歩いているとタバコ屋の脇に東北ではよく見かけるHATTORI COFFEEの愉快な看板が覗いていました。「ポピー」という喫茶店です。入口の壁に貼り付けられたポップなPOPPYの文字がよい雰囲気です。ご夫婦で営んでいるお店は落ち着いたごくごくありふれた喫茶店以外の何物でもありませんが、使いやすくてよいお店でした。 お目当てのお店「ラヴ」に移動します。昨夜はシャッターが閉まっていましたが、今朝はそのシャッターが開いているのが遠目に分かったのでもしやという期待を胸に扉を開きました。よかったちゃんとやっています。店のマスターはワイシャツに黒のベストの定番スタイルでかなりご高齢のようです。客はおばあさん一人なので倣ってカウンターの腰掛けます。背後にはテーブル席が広がり、なかなかシックでよい雰囲気です。マスターによると古い喫茶店はどんどん数が減っており、先日「コーヒー園」が閉店―昨夜人の出入りを見掛けたと話すとちょっと驚かれていました、なぜ?―、やはり昨夜店がなくなったのを確認した「リーフ」や幸い入ることのできた「白十字」といった店名を挙げられました。なんとか2軒だけでも訪ねられたことを幸運と思うことにします。 T氏夫婦と合流。彼らはぼくの目的を知っているので、彼らは彼らでぼくを落っことしては好きなように行動することにしています。交通規制も解除された鶴岡に向かうことにします。といってもまだ真昼間なので喫茶店巡りです。 山形道を通ってあっという間に到着するとすぐに「コーヒーショップ サンボ」に向かいました。鶴岡には数年前にもやって来て宿泊したことがありましたが、今回ぼくは観光はパスするということで街道沿いにある店の前で降ろしてもらいます。愉快なちびくろサンボの看板に迎えられて入店。店はむしろ純喫茶らしさが希薄でちょっと物足りなかったかも。お客さんも入っておらずややさびしいかな。看板と同じキャラクターが印刷されたマッチがうれしかったです。 続いて向かったのが鶴岡駅から1,2分の「純喫茶 ローリエ」です。いろんなところで紹介されていてそのすごさは知っているつもりでしたが、実物は想像以上のすばらしさでした。白亜のユニークな形状の建物を見ただけでも興奮してしまいます。この建物だけを見ると東北の喫茶店というよりむしろ昨年訪れた和歌山にあるといったほうがしっくりするように思われます。外観の優美ではあるもののむしろのっぺりした印象とは異なり、店内は驚くほどにゴージャスです。このすばらしさを表現するのにむしろ言葉は邪魔になりそうです。なんとも贅沢なことにこの広い(外見からはこれほど広いスペースが広がっているなど想像もできませんでした)店に客はぼくひとりだけなのです。地方の小さな町にこれほど驚愕させられる喫茶店があったとはまだまだ日本国内を抛って海外など行っている場合ではないなとひとり心に強く思うのでした。
2013/08/21
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山形で呑みまくる 第2夜 その1
昨夜とは打って変わっての快晴の朝を軽い頭痛を抱えたまま迎えてしまいました。朝食を食べる習慣のないぼくはさっさとシャワーを浴びて荷物をまとめ、チェックアウト後にさっと町に出ることにします。彼らが朝食を摂っている間にひとり喫茶店を訪れるつもりです。駅方面に昨夜すでに営業を終えているのか、はたまたすでに廃業してしまったのか定かではない店があったので、立ち寄ってみたいと思っていたのでした。 駅前の大通りを歩いているとタバコ屋の脇に東北ではよく見かけるHATTORI COFFEEの愉快な看板が覗いていました。「ポピー」という喫茶店です。入口の壁に貼り付けられたポップなPOPPYの文字がよい雰囲気です。ご夫婦で営んでいるお店は落ち着いたごくごくありふれた喫茶店以外の何物でもありませんが、使いやすくてよいお店でした。 お目当てのお店「ラヴ」に移動します。昨夜はシャッターが閉まっていましたが、今朝はそのシャッターが開いているのが遠目に分かったのでもしやという期待を胸に扉を開きました。よかったちゃんとやっています。店のマスターはワイシャツに黒のベストの定番スタイルでかなりご高齢のようです。客はおばあさん一人なので倣ってカウンターの腰掛けます。背後にはテーブル席が広がり、なかなかシックでよい雰囲気です。マスターによると古い喫茶店はどんどん数が減っており、先日「コーヒー園」が閉店―昨夜人の出入りを見掛けたと話すとちょっと驚かれていました、なぜ?―、やはり昨夜店がなくなったのを確認した「リーフ」や幸い入ることのできた「白十字」といった店名を挙げられました。なんとか2軒だけでも訪ねられたことを幸運と思うことにします。 T氏夫婦と合流。彼らはぼくの目的を知っているので、彼らは彼らでぼくを落っことしては好きなように行動することにしています。交通規制も解除された鶴岡に向かうことにします。といってもまだ真昼間なので喫茶店巡りです。 山形道を通ってあっという間に到着するとすぐに「コーヒーショップ サンボ」に向かいました。鶴岡には数年前にもやって来て宿泊したことがありましたが、今回ぼくは観光はパスするということで街道沿いにある店の前で降ろしてもらいます。愉快なちびくろサンボの看板に迎えられて入店。店はむしろ純喫茶らしさが希薄でちょっと物足りなかったかも。お客さんも入っておらずややさびしいかな。看板と同じキャラクターが印刷されたマッチがうれしかったです。 続いて向かったのが鶴岡駅から1,2分の「純喫茶 ローリエ」です。いろんなところで紹介されていてそのすごさは知っているつもりでしたが、実物は想像以上のすばらしさでした。白亜のユニークな形状の建物を見ただけでも興奮してしまいます。この建物だけを見ると東北の喫茶店というよりむしろ昨年訪れた和歌山にあるといったほうがしっくりするように思われます。外観の優美ではあるもののむしろのっぺりした印象とは異なり、店内は驚くほどにゴージャスです。このすばらしさを表現するのにむしろ言葉は邪魔になりそうです。なんとも贅沢なことにこの広い(外見からはこれほど広いスペースが広がっているなど想像もできませんでした)店に客はぼくひとりだけなのです。地方の小さな町にこれほど驚愕させられる喫茶店があったとはまだまだ日本国内を抛って海外など行っている場合ではないなとひとり心に強く思うのでした。
2013/08/20
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山形で呑みまくる 第1夜 その3
「馬車屋」で気分が盛り上がったぼくはすでに十分呑んでいたにも関わらず、大いに気をよくして次なる酒場を求めて歩き始めたのでした。というのはちょっと嘘が混じっていてできることなら「吉田類の酒場放浪記」で紹介されたこともある古い居酒屋に行ってみたいと考えていたのでした。その酒場は日中歩き回った六日町方面にあるので、ここからは随分距離があります。ほんのりと酔いも交じっていたのでいくらかうんざりした気分で、それでも何か面白いことはないかと未踏の通りを歩きすすみます。ほとんど明かりの点っていない暗い通りの先にぼんやりと赤い光が見えたのでそれを頼りにさらに細い路地を進みました。 ああ、なんだかとても渋い酒場があるようです。現金なことに疲れもすっかりと吹っ飛んで店を目指して一目散、やはりぼんやりと赤く見えたのは赤提灯だったようです。近寄ってみると思ったほどは古くはありませんが、店内はカウンターのみのこじんまりして感じのいい空間です。10席ちょっとの狭い店ですが、こんな駅からも飲み屋街からも外れた場所にもかかわらずお客さんでほぼいっぱいになっています。隙間を縫うようにして空いた席にようやく着くとちょうど店内を見渡せる絶好の席でした。夫婦二人でやっている店で、目の前では女将さんがお茶割を用意してくれます。お客さんたちはあまり交流がないようで、みな黙々と酒を呑んでいます。肴を何やらもらっているらしい写真が残っていますが、この写真を見ても茄子のお新香らしきものは察しが付いても丸いのは何だかよく分かりませんね。地元でも知る人の少ない穴場的なお店のようなので山形を訪れた方はぜひ事前に調べたりせずに偶然出会えることを楽しみにお出かけください。「鳥せん」というお店です。 さて、ようやくお目当ての酒場に辿り着くことができました。「ふるさとの味 やまがた」です。写真では真っ暗でなんだかよくわからないことになっていますが、かなりの年季が入った一軒家です。昼間の喫茶店巡りの際に裏通りの路地を通り抜けるように視察しておいたので迷うことなく辿り着けました。まったく下見なしにいきなりやって来ていたら店の前まで来る前に引き返していたかもしれません。どうしてかというと表通りから入った横道には土産物を扱っているような立派な施設があって、その脇をせせらぎが流れるといったまるっきり観光地化されたこじゃれた光景があるからです。こういう後付けの風景ってうんざりさせられます。この一画を抜けると突如古びた一軒家があり、知らずに来たらある意味意表は突かれるかもしれません。昭和20年代創業のお店ということで店内が楽しみです。人の気配がまるで感じられませんが思い切って入ってみます。すると広い土間にゆったりとテーブルが置かれ、古い田舎の造り酒屋の土間にでもいるかのような印象があります。お客さんは少なくて5名ほどの掛けられるカウンターの両端にお互いを避けあうようにしたお二人がいるだけです。なぜだかやたらとにこにこした剽軽な主人に酒を頼み、くつろいで呑み始めることにします。何かうまいものがあるわけでもなさそうですが、なんだか気分よく過ごせます。しばらくして見慣れん人だねということになり、むっつりとスマホなぞをいじっていて常連も話に加わってきます。番組を見て来たという話がきっかけでしたが、話題はいつしか山形国際ドキュメンタリー映画祭のことに。日本が誇るドキュメンタリー映画作家であった小川伸介が立ち上げた世界的にも知られた映画祭でこのお二人もボランティアでスタッフをお勤めであると伺いました。そんな話を伺いながら、もしかすると世界的なドキュメンタリー映画作家がこの店で映画論などを交わしたこともあったのではなかろうかと夢想するのはこよなく楽しかったのでした。そんなことを尋ねてみたいと思ってみたのですが、いかにも無粋な質問であるように思われ、いずれ映画祭の開催時にお邪魔してみれば済むことではないかと思い直したのでした。品書:ビール中:550,酒(初孫魔斬):500,もってのほかいくら:400,きんこ:300,芋煮:600,ふる里の鳥肉炒:1,000 いくらなんでもここでホテルに帰るべきだったのでしょうか。最後に立ち寄った酒場についてはおぼろげな印象があるばかりです。かなり古い西洋風の造りの店のドアを見た瞬間、ここは入っておくべきだと思わず扉を開けてしまっていたのでした。もちろん店の名も覚えていなかったのですが、帰宅後調べるとどうやら「ボルドー」という老舗のバーであることが分かりました。(恐らく)カウンターだけの店内は思いのほか若い人たちの姿が目立ちます。バーテンダーはちょっと意外だったことに女性でしかもけっこうご高齢であったと思われます。照明は暗く落とされ、もはやここがどこなのか、もしかして眠ってしまい夢でも見ているのだろうか。 翌朝起床して携帯の写真を見ると確かにバーらしきところで呑んでいたようですが、今となってはそれが現実であったとしても夢と一緒のようなものに感じられます。
2013/08/19
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山形で呑みまくる 第1夜 その2
T氏夫婦にはすっかりお世話になっているし、翌日からもお世話になりっぱなしになる予定なので、ここで気張って奮発することにします。しかもぼくにとっては、敷居の高いお店を紹介しがちな太田和彦氏推奨のお店に伺うことにしました。 駅から5分ほどの飲み屋街を抜けて住宅街に差し掛かった辺りにある「川なり」というお店です。こちらもまた遠目からはちょっと立派な民家と見える、地方都市ではごくありふれた平凡な造りでした。店に入ると外観より思った以上に席数が多くて、ご予約ですかとの言葉に予約してないんだけどと答えると満席のカウンターやテーブル席を抜けた座敷に通されました。この座敷もなんとか1卓だけ空いていて、お隣の卓は空席ではありますが予約客のための用意がされています。対繁盛店と言っていいでしょう。席もゆったりしているとはいえず、居心地は必ずしもよくないのに、なにゆえにここまで混雑しているのでしょうか。店の方が早速やって来て、うちではおひとり2,000円のコースをお勧めしていますとのこと。3人前頼んでしまっては食べたいものが出なかったらつまらないので、2人前だけお願いしました。そうしたらこのコースが予想以上に質量ともに充実していたのでした。何を食べたかはいちいち記しませんが(すでに忘れかけているのが本当ですけど)、お通し、焼物、刺身、煮付、揚げ物、最後の芋煮まで次から次へと出される肴には面食らうほどです。当然酒もぐんぐん進みます(これまた安い)。最終的には2人前を3人でも食べきれずに残してしまうほどでした。なるほどこれでは人気もあるわけだ。T氏夫婦はしょっちゅう山形市内に限らず東北銃を頻繁に旅行しているようですが、ここはかなり気に入ったみたいです。いい店を紹介できて(単に太田氏の受け売り)よかったよかったとみな満足して店を後にしたのでした。ここを訪れる際は、予約は忘れずに、あとしっかり動き回って腹を空かせて来るのがよさそうです。 すっかり満腹となった二人はホテルに帰るということなので、腹は一杯でもまだまだ呑み足りないぼくはひとり駅前の飲み屋街を散策します。飲み屋がたくさんあると言ってもそこはそれ地方都市の習いとしてその多くがチェーン店と化し、その他は世の男性たちの欲求を満たすためのピンク系のお店ばかりが目立ちます。中にはそれなりに年季のありそうな居酒屋もありますが、気分的には店の方とコミュニケーションを取れる程度のこじんまりした酒場にしたいのですが、古いのはいずれもオオバコです。諦めかけていると「馬車屋」という名が記された置き看板があります。何度か通り過ぎていたのですが、スナックなんかと勘違いして見過ごしていたようです。ビルの地下にある酒場のようです。いささかの緊張を味わいながら階段を下ります。入口を見て一安心、これが様式のドアノブがあるような店だったら迷いに迷って引き返してしまいそうなものですが、うれしいことに店の入口は典型的な居酒屋の佇まいです。赤提灯に紺暖簾のある入口の引き戸を明け安心して入店しました。入り口付近にある小上がりには掘り炬燵が2つ。まだ客のいないせいか女将さんがその1卓でくつろいでいます。あとはカウンターだけだったでしょうか。もともとはろばた焼のお店だったようで、カウンターの先には網が敷かれていて、目の前で焼けるようになっています。立派な銅製の燗付け器もありました。あまりに暑くてお願いする気になれませんでしたが、雪の降る夜なんかにこれでお燗してもらうことを想像するだけで楽しくなります。なかなか素敵な酒場でした。女将さんにあれこれとお話を伺ったのですが、ほとんど記憶にありません。
2013/08/18
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山形で呑みまくる 第1夜 その1
この夏、仙台に在住の知人T氏に誘われ山形を旅行してきました。と言ってもスケジュール調整がうまくいかずわずか3泊の滞在となりました。せっかく山形に行ったのだからもっとじっくりとあちこち訪ね歩きたかったのですが、夏バテで体調もいまひとつなのでこれ位が無理のない期間だったのかもしれません。これまでも何度も山形には旅していますが、今回のように酒場と喫茶店巡りに特化しての旅ははじめてなので、これまで知らなかった風景が見えてくることを期待します。 新宿から高速バスに乗車、お金より時間が大事だよとたびたび忠告もされますが、先立つものがないと少なくともぼくの旅は味気ないものになってしまうので、致し方ありません。まあ、今時の高速バスは、仙台行に関していえば時間帯も選択肢が多く、価格も3,000円程度とかつてに比べると驚くほど安くなっているので非常に助かります。だったら青春18切符を使えばもっと安いではないかというご指摘もあろうかと思いますが、それは聞かなかったことにして、早速バスに乗り込みます。仙台到着は午後3時頃になりそうです。前夜の痛飲がたたって(これがあるから鈍行列車の旅は避けたかった)、首都高に入るころにはまどろみはじめてしまいます。安いのに3列シートと豪華版なのもうれしいことです。さて、話は一気に加速、山形方面は記録的な豪雨とのことでその影響で東北道も通行止めとなっています。1時間近く遅れてようやく仙台駅東口に到着。出迎えに来てくれていたT氏夫婦には随分待たせてしまいました。車を乗り換えて早速山形方面に向かいます。ラジオでは本来予定していた鶴岡・酒田方面が通行止め続出でなんとか行けないこともなさそうですが、そこはご厄介になる身ですから無理をせずに行先を山形市までに変更します。結果この判断はなかなかに良い結果をもたらすことになりました。 さて、午後5時頃には山形駅そばのビジネスホテルにチェックイン。夕食までのんびりするというT氏夫婦をホテルに置き、早速山形市内を散策することにしました。山形市内の繁華街の中心は七日町の辺りということで事前のチェックで喫茶店もけっこうありそうなのが分かっています。歩き始めてほどなくしてホテル内によさそうなティーラウンジがあります。 山形グランドホテルの「コーヒー&レストラン ココ(CO・CO)」から喫茶店巡りをはじめます。ホテル1階のロビーには悪天候にもかかわらず恐らくビアガーデン目当ての客が列をなしています。そんな人々を横目に、とりあえずひとり優雅にくつろぎます。まあホテルのティーラウンジ以外の何物でもない多少ゴージャスではあるもののさほど面白みもないのでのんびりくつろいでもいられない気分になり早速次に移動することにしました。 ほどなくして「ひまわり」という喫茶店がありました。アットホームな雰囲気の喫茶店で、内装も正統派の喫茶店です。なかなかよいです。お向かいにも「珈琲専科 煉瓦家」がありました。こちらも正統派ではありますが、さほど年季は感じられません。いずれも客はまばらだったのですが、天候不順が影響しているのでしょうか。 県民会館の脇に「白十字」がありました。「白十字」はかつては各地にチェーン展開していたようで実際都内でも何軒か巡っていますが、ここはそれらのチェーンとは別物のようです。ビルの1階というあまりそそられない外観だったので、ちょっと躊躇しますがともあれ雨脚が強くなっていたので入ることにしました。入れ替わりで帰られたお客さんがいなくなった店内は高齢の女店主とぼくだけになります。古いお店ということですが、スツールや床が緑色でなんだか爽やかで清潔感があってとても気分がいいのです。明るい雰囲気が草原のようだなんて言うと嘘くさくなりますが、ともかくもなんとも素敵な可愛い喫茶店でした。 山形駅方面を目指すことにします。「コーヒー園」の店先ではお店の方なのでしょうか、すでに閉じたシャッターの前をうろうろされていますが、どうやらすでに店仕舞いしたようです。次のお目当ての「COFFEE & SNACK リーフ」は、閉店してしまったようです。別の店舗が入居されていたように記憶します。 そのそばに「居酒屋 もも焼 やまちゃん」なる赤提灯に紺地の暖簾が掛かる典型的な酒場があって、ぐっとそそられる雰囲気だったので、喫茶店巡りはここまでにして早速お邪魔することにしました。飲食店ビルの1階のお店で廊下の先にも数軒の店舗があるようです。便所も共同のようです。店はカウンターを中心にしており、相当な年季があるのか内装はかなり古びて感じられます。まだ開店準備中で駅から離れたこのお店が忙しくなるのはもっと遅くなってからのようです。店の方も開店準備で忙しい最中のようなので、名物のもも焼ももらわずに慌ただしく店を後にしました。 さすがにずいぶん時間が経ってしまったので、お腹も減ったであろうT氏夫婦と合流するために駅前に移動します。市内では駅前がもっとも大きな夜の繁華街を形成しているようです。外れにある「招き猫」という立飲み屋があったので、ここで到着を待つことにしました。まあどうってことのない真新し開店したてのお店のようです。市内にはどうやら立飲み屋はここだけのようです。仙台市内には以前から立飲み屋があって、それもどんどん増加しているようですが、東北の他の都市ではほとんど見掛けることがありません。東北人はどっしり腰を据えて呑み明かすのが本流なのでしょう。この後おいしいものを食べる予定なので、肴は不要。お通しとして出された大量の落花生をつまみながら、ハッピーアワーでお得になっているハイボールをいただきます。お得といっても立飲み屋さんの価格としてはやや高かったと記憶しています。若いカップルなどが物珍しげに立ち寄っていました。
2013/08/17
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今年の夏は盛岡で飲み歩く[今年の夏も仙台を飲み歩く 喫茶編 その4]
ご無沙汰しておりました。昨夜まで出張とそれに絡めた旅行をしていたため、ブログの更新ができませんでした(ホントはできたんですが、飲みすぎで夜はホテルでぐったり)。また今日から再開しますのでご覧ください。--- 酒編でも書いたとおり，盛岡入りは夕方近くになってしまったため，駆け足で喫茶店めぐりをすることになりました。ホテルにチェックインして荷物を置くと片時も休まずに盛岡の町に飛び出します。事前の調査では，盛岡の喫茶店は盛岡城址周辺と盛岡駅前に集中しているようなので，この日は盛岡城址を中心に巡ることにしました。 最初に向かったのは飲み屋の集中する東大通商店街です。通りの飲食店長屋に「モンタン」があります。ここは堀を眺めながらリラックスできる店ではありますが，喫茶店としての魅力はさほど感じられません。スパゲッティを食べているお客さんが多いようです。かなりのボリュームでちょっと惹かれるものがありますが，ここは我慢。 太田和彦が櫻山横町と呼ぶ一角にも喫茶店が数軒あります。今回もっとも楽しみにしていたのがこの中にある「喫茶 Park(パァク)」です。その期待をはるかに超える素敵な喫茶店でした。昭和44年に創業されたというこちらの喫茶店のカウンターには毎晩のように訪れていると思われる常連さんが並び，テーブル席には一日の仕事を終えてくつろぐ初老のご婦人などがぽつりぽつりと腰掛けて幸福な時間を過ごしているように感じられました。こんな喫茶店なら本当に毎日でもやってきて帰宅前のひとときを送りたい気持です。 「クラムボン」は，正統派の自家焙煎珈琲をいただける店です。おじいさんマスターがやっている店だと勝手に思い込んでいたのですが，主人はまだまだお若いようです。どっしりとコクのあるコーヒーはなかなかの味でした。 「ハニーウッド」は藤原養蜂場というはちみつ屋さんに併設された喫茶コーナーでカウンターにテーブル2卓が設置されていて，本格的な喫茶店の風情があります。店名がはっきりしませんが，ジェラート売り場は「GELATO ONE(ジェラートワン)」 というのでしょうか，こちらで購入した味噌味のジェラートを「ハニーウッド」に持ち込んでいただいてみました。これが味噌臭くないのに濃厚でコクがあってなかなかの味。納豆ジェラートなんていうのもありました。さすがにこれは今回はパス。「藤原パーラー」というのははちみつ販売コーナーに併設されたカフェのような場所を指すのでしょうか。なんだか店名が複雑ですが，思いがけずいい店でした。 「DAN」や「セレクト」を覗きますがいずれも飲み屋さんのような雰囲気なのでパスすることにします。魅力的な店名の「未完成」や有名店「六分儀」は間もなく閉店となるので翌朝訪れることにしました。 向かったのは「リーベ」。やはり櫻山横町の一店です。外から見ると店の1階は割とありふれたベルベット調で装飾されたお店で，カウンター10席にテーブル席が5つ程あったでしょうか。店内に入るとその印象はがらりと一転，西洋の甲冑などが飾られていて，2階に続く螺旋階段を見ると矢も盾もたまらずに，穏やかなママにお願いして覗かしてもらうことにしました。2階に上がってびっくり，1階などまだまだ序章にすぎないようなゴージャス空間が広がっており，その思いがけない広さに驚愕させられました。しかも純喫茶を巡っていると，これで掃除が行き届いていたら抜群なのになあと思ってしまうことがままあるように，ほこりが積もっているなんてことが多いのですが，ここはしっかり掃除され，手入れも行き届いています。客の入りの悪さがやや気になりますが，ぜひ訪れていただきたい一店です。 翌朝に訪れた「カプチーノ 詩季」は，以前盛岡を訪れた際に立ち寄ったお店でシックな内装とおいしいエスプレッソが印象に残っていました。その記憶どおりのいいお店でした。 「機屋」という自家焙煎珈琲を出してくれるらしいお店は巨大な洋館で，想像とはまるで異なってコーヒーハウスと呼んでもいいくらいの規模ですが，残念ながら開店前。この店の周囲にも古い建築が多く残り，見事な写真館がこんな近接して並んでいるなんてやはり盛岡のハイカラなイメージは間違っていないようです。 「六分儀」は無駄な調度品などを極力排していて，静謐な空気に浸ることが出来ます。ご主人夫婦も物静かな印象で時間を忘れて時を過ごすことが可能です。特にトイレがすっきりときれいで，トイレの理想型かもと思ったりもしました。会計場の小さな窓もノスタルジックな気分に浸らせてくれます。 「未完成」は，盛岡の古い繁華街の肴町商店街入口にあります。どうということのない店で残念でしたが，店名はやはりいい感じ。ギャラリーとして提供している壁には定期的に絵が架け替えられているようです。ところで，2階に螺旋階段があるのですが，それの行き先は天井になっているのですが，どういう目的で設置されているのでしょう。今となってはちょっと気になるところです。
2012/08/15
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今年の夏も仙台を飲み歩く 喫茶編 その3
一番町通りを目指してもう少し歩くことにします。開福湯や目的と設置の趣旨がよくわからない豆腐会館などの古い建物が多く残ります。華僑会館という建物もすばらしくてノスタルジーを掻き立ててくれます。建物の前の背の高い木とのバランスが絶妙です。 するとその向かい側に「村上屋餅店」があります。仙台は城下町らしくおいしい和菓子屋がちらほらあって，全国的には白松や菓匠三全，玉澤総本店が知られていますが，生菓子の名店としては賣茶翁が筆頭でしょう。ここは全国的にも指折りの名店と言っても過言ではないのではないでしょうか。ちなみにニューウェーブの森の香本舗もなかなかです。脱線しましたが，「村上屋餅店」は，最近ようやく全国的にも知られてきたずんだ餅で有名な老舗店です。その存在を知りながらこれまで訪ねずにいたことを後悔することになりました。 店には喫茶コーナーがあるので，こちらでいただくことにします。それにしても豊富なメニューに目移りさせられます。それでもやはりずんだ餅をいただくべきでしょう。ずんだ餡とくるみ餡，黒ごま餡の3種の団子のセットがあり，組合せは自由ということなので，ずんだ餡を2個とくるみ餡をもらうことにしました。お楽しみは後にとっておいて，くるみ餡から食べてみます。けして甘い物が得意ではないのですが，この餡の濃厚で深みのあること。餅はしっかりつかれたことがはっきりとわかるほどの強烈な弾力でこれまで食したことがないような感覚です。ずんだ餡はさらにすごくてとにかく食べてみて欲しいとしか言いようがありません。この餡だけでもいいから真空パックか冷凍で販売してもらえないかと本気で交渉したい気持でした。ちなみにずんだ餡入りのカキ氷というのがあって，お隣のお客さんが食べていましたが，次回，必ず食べることにします。 一番町通りが近づくと，「ラブミー牧場」というのがありますが，お休みのようです。立派な建物が見えたので喫茶店かと近づくと残念ながらそこは「OPT」という眼鏡屋さん。喫茶店も併設すればいいのにと思うほどいい感じの店です。巨大バラックの壱弐参横丁には「LOFT」「京都イノダコーヒー」がありますが，なぜかさほど惹かれるものがなく通過します。 「エビアン 東一店」に入ることにします。一見はチェーン店のような愛想のない店ですが，店内はなかなかよい雰囲気です。かつて提供していたマッチ箱コレクションがきれいにディスプレイされていてそれがとても味わい深くて，持ち帰りたい位です。なお，現在のマッチはブックマッチでさほど面白味はありません。 仙台，いや日本全国を見渡しても有数の高級喫茶店「ホシヤマ珈琲店」に向かいます。たまたま知人から飲物無料券をもらっていたからです。コーヒーを含めてあらゆるメニューが最低1,050円からととてもじゃないけど普段ならパスするような価格帯で，これで商売成り立つのかなといらぬ心配までしてしまいます。実際はあまり繁盛している様子はありません。見送りサービスはいらんからちょっと値段を下げたほうがいいのではないかしら。アイスコーヒーはちゃんと氷がコーヒー味でさすがに高級店という感じですし，装飾もさすがにセンス良く上質な感じではありますが，あまり心そそられる店ではありませんでした。 そういう意味では広瀬通沿いのビル2階にあるカウンターメインの喫茶店「珈巣多夢」は常連さんが足しげく通うのがよく分かるアットホームでくつろげる空間でした。カウンター喫茶っていうのは，最近めっきり減っていますが，テーブル席よりマスターや従業員などと親密さが湧いてくつろぎやすいのだと思います。ちなみにこちらは喫茶本も充実しているのでそれらを眺めたり，窓越しに道行く人たちを眺めるのも楽しみです。
2012/08/08
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今年の夏も仙台を飲み歩く 喫茶編 その2
多賀城から引き返しての仙台の喫茶店巡りの2日目は，地下鉄南北線の五橋駅から始めることにしました。前日が特別な喫茶店には出会えたものの全般としては期待したような満足を得られなかったので，さほど期待もせずにとりあえず行ってみることにします。 この日，持病の腰痛がいつものごとく突然にうずき出して，純喫茶ファンにとってはかなり辛いコンディションと言えます。日頃純喫茶に通われている方はよくご承知のとおり，多くの喫茶店が(それがさほど古くなさそうな場合においても)和式便所を今なお現役として使用しているからです。その割合たるやオンボロの居酒屋の比ではありません。居酒屋ではどこもかしこもボロでも便所だけは一部例外を除いて(例えば「庚申酒場」など)案外洋式化されていることが多いものです。和式便所の上に洋式の便座を置いたタイプの便所もありますね。 先日，日本の純喫茶をこよなく愛好するアメリカ人のお喋りを耳にしたのですが，これほど愛する純喫茶なのにどうしても和式便所だけは馴染めないという話をしていましたが，すでに人生の7割近くを洋式便所を使って用を足してきた身にとっても同意したくなる意見で，そこに腰痛が発症していた場合の辛さは並大抵のものではありません。 まあ，そんなことは置いておいて，最初に見つけたのが「ルシアン」。町中のどこにでもありそうなありふれた喫茶店で近所の常連に愛用されているようなお店です。店構えも店内装飾も飾りっ気なく，特別なところは何一つ見当たらないような店ですが，近頃忘れていたような本当に生活に密着した感じがいいです。さり気ない店でありながら町からなくなってしまうととても寂しいような，大切なものを失ったような気分になってしまいそうな，そんな喫茶店です。 続いての「ぴーぷる」は，小さなアパートのような建物の2階にあり，細い階段を上っている最中はとりたてて期待しないでいました。上がりきって扉を開けた瞬間，その予感が快く裏切られることを知ることになります。そこに広がるのはまさしく正統派の喫茶空間です。喜び勇んでもっとも眺めのよさそうな場所をすばやく探って，腰を落ち着けます。余談ですが，そんなときぼくの選ぶ席は大体がトイレのそばになります。もっとも末席の場所が喫茶店を楽しむには最良の場所なんでしょうか。落ち着いてコーヒーを飲み始めるといくつかの欠点が見えてきますが，その欠点の最たるものは流される音楽が昭和のヒットソングみたいなものだったことです。いくらなんでもこの薄暗くてシックな空間でこの選曲はヘンです。まあ欠点を補って余りあるムードに集中することでよしとしましょう。 細い道を進むと懐かしい風情の洋菓子屋・パン屋さんが見えてきます。「ガトー・タカハシ」です。テントシートをかき分けて，商品の入ったガラスケースを覗くとクラシカルなサバランなどの洋菓子やコロッケなんかを挟んだパンが並んでいて，ロシアケーキなんてものもありますので，お試しで購入。飛び切りの味でないものの，日本人の舌にもなじむやさしい味わいでした。 そうこうすると「ベニー」が見えます。ガラス扉の真鍮製品?の貝殻のような取っ手がなんとも味わいがあります。店の中央には10人以上が掛けられる大きなテーブルがあってサロンのようですし，周囲に配置されたテーブル席や入口の小部屋には趣きの異なる家具が配置され，あらゆる場所でくつろいでみたい気にさせられます。4人組の東北学院大の学生たちは水色のクリームソーダをすすっていますが，それが特別な時間を送っていることを知ってか知らずか，それでもとても幸福な青春を送っているように思われて思わず学生時代っていいもんだなあ，なんて柄にもなく感傷的になってしまうのでした。 そういえばこの辺りは先ほどの学生の通う東北学院大学や東北大学のある地域。こんな場所には古書店があるはずだと思ったら早速に目の前に古書店があります。古書店があったら喫茶店が付き物と思っていると「皇琲亭」が出現。早速入ってみます。正統派の喫茶店という感じでこうした店では寡黙で少し眼光鋭いマスターがいるものです。ここもまさにそうしたお店。安くておいしいコーヒーを飲めるお店です。
2012/08/07
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今年の夏も仙台を飲み歩く 喫茶編 その1
仙台の飲み歩き喫茶編です。酒場レポートを御覧の方は，ざっと斜め読みいただければと思います。最初にざっと仙台の町を散策した結果，仙台では東京以上にカフェやコーヒーショップが主流で純喫茶らしい趣の店は思った以上に少ないということです。 到着後，仙台駅構内の立飲み屋で一杯飲んだ後，名掛丁のアーケード街のビル地下にある「花」に向かいます。昼間こそ喫茶営業をしていますが，これはむしろ酒場のほうがメインのお店のようですね。ベルベットの椅子などの装飾には喫茶店のようなムードもありますが，いささか期待したものとは違いました。 「路傍」はオフィス街の横道にひっそりとある店で，店の名に惹かれて訪れました。昼時ということで食事をするサラリーマンやOLでなかなかの繁盛振りでした。オーソドックスな普通の喫茶店でこれはこれでいい店でした。しかもこの日のサービスのカツカレーはものすごいボリュームで大盛を頼んだ2人組の青年は汗だくでようやく完食していました。身近にあって普段使いしたいタイプのありふれたいい店です。 次に入った「Waiting Bar 銀杏坂」もまた，喫茶店というよりは夜からのバータイムがメインのお店でこちらもそれなりにお金を掛けた装飾で飾っているのですが，お店の人の客あしらいがあまりにも乱暴で残念な店でした。 「あかとんぼ」は食事重視の近隣の役所関係の人たちが訪れるようなお店で，のっぺりした空間があまりに平凡すぎて長居したくなる要素が見当たりません。 「あかとんぼ」のお隣の居酒屋さん，なかなかの佇まいですね。こちらはひどくそそられます。また，すぐそばに「藤や」という昔ながらの店構えの食堂兼甘味処があって，ナポリタンなど食べず，こちらの安い親子丼を食べればよかったと後悔したものです。 いささか期待はずれの店が多くてげんなりした気分になりかかってきた頃，ふと気付くと「喫茶 アキバ」というなんとも魅力的な古い一軒家が目に飛び込んできました。純喫茶というよりはもっと昔風のコーヒー屋さんといった風情のお店です。お婆さんがひとりでやっていて創業は昭和41年ということでした。数十年ぶりに訪れたという先客は懐かしさでかなり長居してしまったようです。その気持がすんなりと受け止められるくらい，穏やかな時間の流れを味わうことができます。40数年という年季以上の歴史を感じるような丸椅子などは持ち帰りたいほどの懐かしさを覚えます。お婆さんはまだまだ生きてる限り続けるからまた立ち寄ってとおっしゃていました。今後仙台に行った際は必ず立ち寄りたい店ができました。 その後，ビル2階のシックなお店「カフェ・ド・ランバン」やこじんまりしてどこか可愛らしい感じのお店「どんぐり」と「チャオ」にもお邪魔しましたが，「喫茶 アキバ」の印象が強すぎて今では記憶も薄くなりつつあります。明日は仙台駅の南側に位置する地下鉄南北線の五橋駅方面の散歩を報告します。とりわけ愛着のあるお店に出会えたので明日も御覧ください。
2012/08/06
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今年の夏も仙台を飲み歩く 喫茶編 その1
仙台の飲み歩き喫茶編です。酒場レポートを御覧の方は，ざっと斜め読みいただければと思います。最初にざっと仙台の町を散策した結果，仙台では東京以上にカフェやコーヒーショップが主流で純喫茶らしい趣の店は思った以上に少ないということです。 到着後，仙台駅構内の立飲み屋で一杯飲んだ後，名掛丁のアーケード街のビル地下にある「花」に向かいます。昼間こそ喫茶営業をしていますが，これはむしろ酒場のほうがメインのお店のようですね。ベルベットの椅子などの装飾には喫茶店のようなムードもありますが，いささか期待したものとは違いました。 「路傍」はオフィス街の横道にひっそりとある店で，店の名に惹かれて訪れました。昼時ということで食事をするサラリーマンやOLでなかなかの繁盛振りでした。オーソドックスな普通の喫茶店でこれはこれでいい店でした。しかもこの日のサービスのカツカレーはものすごいボリュームで大盛を頼んだ2人組の青年は汗だくでようやく完食していました。身近にあって普段使いしたいタイプのありふれたいい店です。 次に入った「Waiting Bar 銀杏坂」もまた，喫茶店というよりは夜からのバータイムがメインのお店でこちらもそれなりにお金を掛けた装飾で飾っているのですが，お店の人の客あしらいがあまりにも乱暴で残念な店でした。 「あかとんぼ」は食事重視の近隣の役所関係の人たちが訪れるようなお店で，のっぺりした空間があまりに平凡すぎて長居したくなる要素が見当たりません。 「あかとんぼ」のお隣の居酒屋さん，なかなかの佇まいですね。こちらはひどくそそられます。また，すぐそばに「藤や」という昔ながらの店構えの食堂兼甘味処があって，ナポリタンなど食べず，こちらの安い親子丼を食べればよかったと後悔したものです。 いささか期待はずれの店が多くてげんなりした気分になりかかってきた頃，ふと気付くと「喫茶 アキバ」というなんとも魅力的な古い一軒家が目に飛び込んできました。純喫茶というよりはもっと昔風のコーヒー屋さんといった風情のお店です。お婆さんがひとりでやっていて創業は昭和41年ということでした。数十年ぶりに訪れたという先客は懐かしさでかなり長居してしまったようです。その気持がすんなりと受け止められるくらい，穏やかな時間の流れを味わうことができます。40数年という年季以上の歴史を感じるような丸椅子などは持ち帰りたいほどの懐かしさを覚えます。お婆さんはまだまだ生きてる限り続けるからまた立ち寄ってとおっしゃていました。今後仙台に行った際は必ず立ち寄りたい店ができました。 その後，ビル2階のシックなお店「カフェ・ド・ランバン」やこじんまりしてどこか可愛らしい感じのお店「どんぐり」と「チャオ」にもお邪魔しましたが，「喫茶 アキバ」の印象が強すぎて今では記憶も薄くなりつつあります。明日は仙台駅の南側に位置する地下鉄南北線の五橋駅方面の散歩を報告します。とりわけ愛着のあるお店に出会えたので明日も御覧ください。
2012/08/06
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今年の夏は盛岡で飲み歩く[今年の夏も仙台を飲み歩く 酒編 その4]
盛岡にも行きたい店がたくさんあったのですが，やはり食欲がいまひとつ。昼には日本三大鍾乳洞のひとつとして知られる龍泉洞を観光しました。今回の旅行で唯一の一般的な観光スポットでした。約20年振りに訪れました。夕方に盛岡入り。喫茶店を5,6軒ハシゴして，居酒屋に向かうことにしました。 今回の飲み歩きのハイライトの盛岡城址そばの櫻山神社参道にある飲食店横丁(東大通商店街の一部)に向かいました。太田和彦の近刊「太田和彦の居酒屋味酒覧〈第三版〉: 精選173」で、新たにこの櫻山横丁も追加されています。かつてかかれた文章があるので少しだけ引用します。--- 仙台の東一連鎖街なき後、おいらが日本一の飲み屋横丁と断じるのが盛岡・櫻山神社参道の飲食店横丁だ。正式名称はないようで、ここでは便宜的に櫻山横町としよう。 盛岡市の中心・県庁前から一の鳥居をくぐった、亀が池・鶴が池の囲む内丸という場所が素晴らしい。二の鳥居を抜けると櫻山神社の正面拝殿、その奥は盛岡城址だ。 ここは戦後引揚者らに提供されたのが始まりで、今は三筋の横丁におよそ九〇軒が木造二階に連なる。有名な盛岡じゃじゃ麺の元祖「白竜（パイロン）」もここだ。戦後の雰囲気を残す車の通らない横丁は、飲食店だけでなく薬局、花屋、商店などもある健全な地域だ。居酒屋老舗「中津川」「茶の間」などに加え、最近若い人の店が増え、郷愁にとどまらない活気が生まれて楽しい。--- 東大通商店街の公式HPもありますので、興味のある方は御覧ください。http://www.east-street.net/index.html 櫻山横丁は土曜日の夜というのにやや閑散としていて、もっと活況している様子を想像していたのでやや肩透かしでしたが、じゃじゃ麺の「白龍」には、行列ができています。まずは「茶の間」に向かったのですが、土間に置かれた丸椅子には地元のおっさんでいっぱいになっています。通りはさびしくても店はちゃんと活況しているようです。 それではと向かい側の「味の名所 なにわ 桜山店」の引き戸を開けてみます。いきなり階段という変わった造りのお店です。階段を上ると思った以上に広い土間と座敷が広がっていて、カウンターと丸椅子の風情がたまらなくいいですね。魚介系に自信がありそうなお店でお通しはマンボウの湯引きを芥子味噌で和えたもの。酒も安くて雰囲気も抜群のいい店に出会えました。桜山店とありますが，すでに他店は店仕舞いしてしまったようです。 続いて「茶の間」に再びトライします。映画館通りの脇道にも店舗がありましたが，店の雰囲気の良さは抜群にこちらが良いですね。地酒のわしの尾をいただきながら過ごす時間は、非常にゆったりとして感じられ、なんとも言えない幸福感に包まれたものです。 そして、「酒蔵 早苗」。渋いお店を想像していたが行ってみたら小奇麗なありふれた店でした。せっかく来たので入ってはみましたが，長居はせずにさっくり店を後にしました。 盛岡で最古参のバー、「バー バロン」にお邪魔します。仙台の「門」も渋かったのですが、こちらも負けず劣らず渋いお店でした。初代のバーテンダーがまだまだ現役で頑張っておられます。無口で頑固そうですが、ちょくちょく会話に口を挟んできてくれて、実はなかなかのおしゃべり好きの方のようです。もうおひとりの若い人はお調子もんで楽しませていただきました。なかなか落ち着けるいいお店です。 猛烈に腹が減ったのでホテルそばの「道楽」にお邪魔しました。民芸調の装飾がされていますが、こうした造りの店にありがちなわざとらしさもなくて、気分よく飲むことができそうです。ところが閉店時間が迫っているようで，適当に食べるものをと頼んだら，残り物といっては失礼ですが，ありとあらゆる肴を次から次へと運んできてくださいました。しかもお会計がびっくりするほど安かった。余りものとはいえこれはうれしかったなあ。 翌朝、町を歩くとまだまだ魅力的な酒場がいくらでもあることがわかりました。次回はコンディションを整えてもっと充実したレポートができればと反省しきりです。
2012/08/05
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今年の夏も仙台を飲み歩く 酒編 その3
明くる日は，多賀城まで足を伸ばしました。仙台と塩釜に挟まれた多賀城は律令時代に設置された城跡のある町として歴史に造詣のある人には知られているようですが，一般にはあまり馴染みのない地味な町です。小学生の頃に2年程過ごしたこともあるこの町も，多賀城駅の高架化などに加えて，震災の影響もあって(駅付近まで2mの高さまで水が押し寄せたと伺っています)，駅周辺の馴かつて染みだった店もほとんどなくなってしまいました。 それでも震災前から多賀城というローカルな地で驚くべき質の洋菓子を提供し続けるお店があり，仙台を訪れると必ず立ち寄っています。かつては「シセイドウ(寿正堂 Patissier Shiseido)」という店名で営業しておりましたが，今では「Kazunoli Mulata」(あじの細道)として再出発しています。再出発とはご想像通り震災で店はめちゃめちゃな状況になったのですが，見事復活して震災の年の夏にはすでに営業を再開されていました。ここは何を食べても外れなしですが，やはり一番のお勧めはマカロンです。10数種類あるどれもが秀逸でそのおいしさはピエール・エルメに負けるとも劣らぬほど，ジャン＝ポール・エヴァンがやたらと高く評価されているのがちゃんちゃらおかしくなるほどです。今回はじめていただいたレーズンサンドもこれまで食べてきた中で最高峰です(最近お気に入りだった「しろたえ」さえ凌駕しているかも)。カヌレも表面のぱりっとした感じなんてこれまで食べてきたものが一体なんだったんだと思えるほどの違いです。しかもこれらが驚くほど安い。わざわざ多賀城まで訪ねても損はないと言い切ってしまいます。できれば仙台の藤崎に出店してもらえるとうれしいのですが。 せっかくなので，昼食がてらにビールでも一杯引っ掛けていくことにします。当時の同級生の家が料理屋なので，久しぶりに訪ねてみることにしました。砂押川という川の土手にあるお店，「和食 小島」です。住んでいた家からもすぐの場所なのに当時は行ったことがありませんでした。ちょうど土用の丑の日なのでうなぎでもいただくことにしました。価格が高騰するうなぎですが，ここはお得な値段で提供していて量もたっぷり。同行した知人の注文したミックスフライ定食:1,050円はとりわけすごくて，大きなヒレカツ2枚に人参くらいの巨大エビフライをメインにおいしそうなタルタルソースがたっぷりとポテトサラダもうまそうだったなあ。しかも茶碗蒸しに茹で野菜の和え物やフルーツまで付いているのでした。カウンターの中ではご主人らしき初老の方の両脇にぼくと同世代と思われるふたりが調理に没頭しています。ひとりは黙々と厚焼き玉子を焼いていて，もうひとりは刺身のつまでも用意しているのでしょうか。このいずれかが同級生と思われますが，仕事の邪魔になると申し訳ないので声は掛けませんでした。ともあれこちらはボリュームたっぷりで味も良く，同級生の頑張りに大満足したのでした。 夜になっても満腹感は持続したまま。地元の知人2名に同行者を含めて「郷土酒亭 元祖 炉ばた」を訪れました。こちらは昭和25年創業の炉ばた発祥の店です。客席は囲炉裏を取り囲むスタイルで，囲炉裏の炭火で魚介類や野菜を焼いて，長いしゃもじ(掘返べらと呼ぶようだ)で料理を運ぶのが定番ですが，ここ「炉ばた」はお会計時のみこのしゃもじが活躍するようです。「炉ばた」の一番弟子が大阪，二番弟子が釧路に炉端焼きの店を出し，この釧路の店が現在全国にある炉端焼屋のスタイルを確立したということ。席に着くとおばちゃんがお通しを3品運んできてくれます。鶏肉と油麩の煮付，寄席豆腐，アジの開き。ところが，残念なことに食欲がまるでなくて，たったこれだけの肴なのに残してしまった。酒もあまり進みません。品書：酒(天賞)1合:420～,白魚玉子とじ/蓮根まんぢゅう:840,むきそば/鳥ごんぼ:630,にしん:1,050,ひと鍋:1,890 食欲もなく，あまり飲めそうもないので，昭和24年創業の東北一の老舗バーに行ってみることにしました。「COCKTAIL BAR 門(酒場 門)」です。なかなか渋い佇まいで狭い店内が心地よく感じられます。チャームは枝豆とホタテとタルタルソースの春巻です。うまそうなのですがなかなか手が伸びません。2,3杯カクテルをいただきました。クラシカルなカクテルで量は大目。雰囲気をじっくり楽しみたい店でした。品書：カクテル:800～1,000(モスコーミュール:800),シングルモルト:1,200～3,000
2012/08/04
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今年の夏も仙台を飲み歩く 酒編 その2
元号が昭和だった頃の仙台の町は，夕方ともなるとひんやりとした風が吹き降ろしてきて今のように日が落ちてからもなお暑いなどといったことはほとんど記憶にありません。平成の仙台は東京都内ほどではないにしろ，町が夕日に染まり始めてもなおうだるような暑さで，町歩きにいささかくたびれて来た身にはそろそろ冷たいビールが恋しくなり始めます。そんな夕暮れにまさに出現したのがとある一軒家の居酒屋です。 「珠や」は，国分町のはずれに一軒だけ取り残されたようにポツンと建つ居酒屋さん。たまらなく魅力的な風情に誘われるままふらふら入ってしまいます。狭い店内で感じの良い夫婦でやっておられます。口開けの客になったようです。カウンター7,8席と小上がりに小さな1卓があるだけの狭いお店で，その狭さが心地よく感じられます。店を開けたばかりでまだまだ開店準備中。山形産のちょっと変わった茄子のおしんこなどシンプルなものをお願いして，ビールで流します。そうこうするうちにも常連さんがちらほらと集まりだしたので，通りすがりの客としてはさらりと店を後にするべきでしょう。 続いて向かったのは，「炭焼き ホルモン だるま」。仙台には歴史ある横丁があちこちにありますが，その最古参が文化横丁です。そんな通りでも最も異彩を放つほどの店がこちら。座席も8席ほどのホルモン焼屋でば元気なばあさんひとりでやっています。常連の女性2名が先客。焼酎を炭酸で割ってもらいました。お通しのおしんこをつまみながら，ホルモン焼が焼き上がるのを待ちます。ここはばあさんがすべて焼いてくれるので楽チン。若い歌舞伎役者が来店した話などを伺いながらのんびりいい気分になってきました。ところで支払が思った以上に高額だったのにはがっかりさせられました。 「八仙」もまた文化横丁では古参の有名な老舗中華料理店です。小上がりに2卓ある以外はカウンターのみの店内はすごい繁盛振り。とりあえず名物の焼餃子と水餃子をいただくことにします。酒のアテにはちんまりとした小松菜のおひたし。ちびりちびりといただきます。酒も2本ばかり空きましたが，まだ餃子が届かない。特に水餃子はいつまでたっても出てこないのです。催促してももうすぐもうすぐと御座なりな応対をされるばかりで，従業員もほとんど押し売りみたいにあれこれと注文を催促してくる。しかもお隣の客などはまだ残ったかた焼きそばを勝手に下げられそうになって，もう少し待ってと言うと，勝手に一人の小皿によそってしまったのでした。ともかく高飛車な商売っぷりにはものすごく不愉快な思いをさせられました。焼餃子:560,水餃子:620,蒸餃子1,140(2人前～),青菜の炒:700,八宝菜/酢豚:1,500 口直しに訪れたのは「LE BAR KAWAGOE」。国分町のビル2階にある本格的なカクテルを提供するバーということではじめて訪ねてみました。髭のダンディなバーテンダーさんは手早くおいしいカクテルを作ってくれてなかなかです。値段もリーズナブルでうれしいなあ。地方のバーって老舗店はムードは抜群によくても味はいまひとつで値段ばかり高いことも多いのですが，一方でこちらのような若い志の高い人がやっているバーも増えているようです。同店で国分町の若い店主たちで作ったバーを中心とした飲食店のパンフレットをいただきましたが，まだまだよさそうな店がありそうな感じです。
2012/08/03
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今年の夏も仙台を飲み歩く 酒編 その1
旅行後，体調がいまいちだったり，パソコンを買い換えてセットアップしたりして時間を割けずなかなかブログの更新ができずに過ごしてしまいました。まあ，その間もあちこち飲み歩いてる時間はあったんですけどね。 昨年も震災後の仙台を2度訪ねていますが，今夏も盛岡を絡めて短い時間ですが仙台を訪ねてみることにしました。特に仙台では，観光もせず仙台駅の周辺をぶらぶらするつもりです。 出掛けに早速問題発生。高速バスで仙台に向かうつもりが山手線でトラブル発生，内回り電車が停車してしまい新大久保で立ち往生してしまいました。やむを得ず東京駅に向かい東北新幹線にて仙台に向かうことになりました。今回は同伴者Ｍ氏が一緒です。 結局高速バスで向かうよりも2時間弱早めに仙台到着。せっかくなので仙台駅の新幹線改札内にあると噂に聞いていた立飲み屋に寄ってみることにしましたた。「立ち呑み 伊達や」がそれ。今では改札内に飲食店があるのはさほど珍しい風景ではなくなりましたが，立飲みはけっこう珍しいですね。それだけが興味深い位で特筆すべきことはありません。たまたま読んでいた「鉄子の部屋」という交通新聞社発行の本に沼津駅の立飲みスタンドのことが書かれていたのですが，こういう情緒ある店だったらいいんですけどね。 仙台駅東口前の名掛町アーケード商店街を進み，中央通り商店街のダイエーの脇道を入ると「SPREE&LIQUORS NISSHINDO(日進堂 本店)」があります。老舗の酒屋らしいのですが，見た目はおしゃれなダイニングバーみたいな店。一応角打ちなんでしょうが，風情まるでなし。昼間から飲めるのはうれしいのですが，若い店主がどこかふてくされた雰囲気です。次の角打ちに期待することにします。 でやって来たのが「日本酒スタンディングバー 菅原酒店」。中央通り商店街と直角に交わる一番町商店街にあります。「NISSHINDO」と同様に一応角打ちではありますが，ここもやはり，あまり角打ちらしさは感じられません。立飲みなのが救いでしょうか。 それではと以前から目を付けていた「立のみ処 ちだや」に引き返します。名掛町の裏手の飲み屋横丁で13時から20時30分という奇妙な時間帯に営業している立飲み屋です。肴は10種類ほどしかありませんがほとんどが120円という低価格。チューハイは小振りなジョッキながら200円とこちらも低価格でうれしいですね。サラリーマンと地元のおっちゃんだけがのんびりと飲んでいて，なかなか場末な雰囲気があってここはいいですねえ。おばちゃん2名でやってます。ちょっとおっかない感じですが会計の時には笑顔を見せてくれました。品書：モルツ生セット(肴付):500,チューハイ:200,ちだやハイボール:290,ザ・角ハイボール:300,ビール中:420,肴:120(韓国岩ノリ:150)
2012/08/02
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福島県の素敵な酒場(郡山市編)
福島県は，人口ではいわき市，郡山市，福島市となっているようですが，町の規模は郡山市，福島市，いわき市の順番になるでしょうか。もちろん福島県（特にいわき市などの浜通り地方）は震災の影響による原発問題もありさまざまな影響を受けていることでしょう。会津藩の城下町として盛え，現在でも若松城(鶴ヶ城)など史跡旧跡や観光地が随所にある会津若松市も福島県です。 今回は，最近立ち寄った郡山市の酒場を紹介します。郡山市は栃木県宇都宮市と宮城県仙台市の中間にあり，同じ福島県の会津若松市や新潟県新潟市とも直接接続されている流通・交通の要所となっていることから，福島県の商業の中心地となっています。江戸時代には奥州街道の郡山宿が設けられたこと，農業用水，工業用水，水力発電，飲用水としての役割を担った安積疏水を開拓こと，郡山駅のターミナル化ことも発展の大きな要因となっているでしょう。かつて暴力団による抗争事件が多発し，「東北のシカゴ」とまで呼ばれていましたが，現在は「東北のウィーン」や「音楽都市」キャッチフレーズに音楽活動が盛んな街として売りだしています。 郡山駅前には複数箇所に飲み屋が集まる路地や長屋があります。いずれも古びていて魅力的ですが，とりわけそそられるのが駅前すぐを北側に進んだエリア。酒場以外にも「食堂 二八」など渋い飲食店があり，お邪魔できなくて悔いの残る店も数多し。郡山市 おでん おばこ こじんまりとしたカウンターだけの飲食店長屋の一軒。おでんを中心とした小料理店です。ＧＷにお邪魔したためおでんはなかったように記憶しています。ちなみにこちらにはメニューがありません。落ち着ける内装が魅力的で，民画家として人気の高い（らしい）渡辺俊明氏（存じ上げません……）が設計されたようです。気のいい常連さんたちと楽しいひとときを過ごさせてもらいました。郡山市 味のじゅん天 見るからに渋い年季の入った店舗。もうもうと煙を上げて焼かれるもつ焼に特製ニンニクだれを付けて食べるとぐいぐい酒が進んでしまいます。その日同席した福井県在住のおにいちゃんはあまりにもこの店が気に入ったため帰りの高速バスをキャンセルしてしまいました。それだけ居心地のいい店なのです。郡山市 味の串天 駅前支店 見るからに渋い正統派の大衆酒場です。奥までずーっと伸びる長いL字カウンター。大き目のテーブルがずらーっと並んでいて壮観です。入口そばのカウンターに腰掛けると設けられた書棚には，かなり充実した「古典酒場」や太田和彦や吉田類など酒場本コレクションが並びます。店主も酒場が大好きなのでしょう，好感度高しです。郡山市 とんちゃん やはり同じ並びにある「とんちゃん」はコの字カウンターの味のある酒場です。ところがこちらはなぜか客の入りはいまひとつ。オヤジさんも感じ良かったんだけど，なんででしょうね。郡山市 天ちゃん 駅前店 何度か覗きに行ってようやく最後にはいることができました。L字型カウンターに10席位、奥にテーブルもあります。ここで紹介する5軒と比較してしまうと平凡と言えば平凡なのでしょうが，酒場に免疫のない方にとっては比較的安心して入ることのできるお店だと思います。
2012/03/04
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宮城県の素敵な酒場(仙台市編)
宮城県は，仙台市を中心に広い平野部を持ち，ササニシキ，ひとめぼれなどの稲作農業が盛んで，気仙沼漁港，石巻漁港，塩釜漁港など全国屈指の水揚げ量を誇る漁場を持ち，カツオ，サンマ，マグロ，カキ，ふかひれ，ホヤの生産量が多く，高級和牛の仙台牛なども知られています。また，気候は，夏は比較的涼しく，冬は降雪量が少なく過ごしやすい県です。 全国的な現象ですが，宮城県でも一都市への人口集中が顕著となっており，仙台市以外の街は，人口減少が始まっています。もうすぐ一年になる東日本大震災の影響も少なくはないでしょう。 と，ありきたりの冒頭の文章を綴ってみましたが，宮城県は思い入れのある県です。ぼくは子供の頃に多賀城市，仙台市に短い期間ですが暮らしていました。両親は，あちらこちら引越ししてきた土地の中で，最も暮らしやすかったという仙台市に在住しています。そんなこともあって，昨年のＧＷと夏休みを使って，宮城県を中心に里帰りしてまいりました。その際，立ち寄った酒場を紹介するとともに女将さんたちにお伺いした話も交えていきたいと思います。仙台市 小町 戦後マーケットがそのまま残ったような壱弐参横丁はバラックの建物が密集した100軒近い店舗のある通りです。一番丁通り側から入るともっとも出口に近い場所に「小町」はひっそりと在ります。よき時代の小料理屋のようなカウンターのみのお店でお邪魔した4時頃にはすでにお客さんがおり，すれすれで入ることができました。女将さん一人で切り盛りされており，ゆっくりとチロリで燗を付けていただきました。仙台市 焼き鳥 きむら 文化横丁の「焼き鳥 きむら」へ向かいます。昭和45年創業の老舗焼鳥屋で，さすがに雰囲気は抜群。1階はL字のカウンター8席にテーブル席，2階もあるようです。ばあちゃんと女子大生風2名が立ち働いています。名物の豚ミソ焼はとても安くておいしい。実に気分のいい酒場でした。地元に住んでいたら常連になること必至のすばらしい店でした。仙台市 源氏 同じく文化横丁の奥の奥に店を構えるのが，昭和25年創業の「源氏」です。店に至るアプローチだけですでに気分は最高潮。割烹着の女将さんが付けてくれる酒の燗付け機がとにかく渋い！ガスの温熱機が組み込まれたユニークな燗付け機に一升ビンから酒を注ぎ込み，蛇口をひねると燗酒がだら～と受け皿付きコップに注がれるのです。これを見てるだけで楽しい。女将さんがキャップを付けたまんま一升瓶を傾けたのには笑ってしまいましたけど。ここは飲物には必ずお通しが付くというシステムで，1杯目が煮物（これが絶品！），2杯目が冷奴（これまた普通の豆腐のはずなのになぜかうまい），3杯目はお刺身（やはりうまい）で，この日は飲みませんでしたが，4杯目にはシジミ汁またはもう1品が出されるようです。よくぞ残っていてくれましたと心から満足させていただきました。仙台市 焼きとり くろ田 国分町のど真ん中に焼鳥店「くろ田」はあります。子供時代，仙台のローカル番組テレビセンサーワン(?)で「仙台ママをたずねて三千軒」といったようなコーナーがあって，早く大人になって国分町で遊んでみたいと思っていたものです。もちろん，番組ではクラブやスナックといったママさんのいる店が毎週紹介されていたわけですが，結局大人になってやってくるのは庶民的な焼鳥屋なんですね。年季の入った店の雰囲気はどこか東京五反田の「鳥茂」に近いかもしれません。 その他，太田和彦氏大推奨の「一心 本店」（雰囲気は雑居ビルの酒場としてはこざっぱり，料金がべらぼうに高い），昭和24年創業の老舗おでん屋「おでん 三吉」（ぜ～んぜんどうでもないおでん屋），「梵天食堂 南吉成店」（住宅街のそばにあるチェーン店風（というよりファミレス風）の居酒屋），文化横丁の雑居ビル2階の「家庭料理 満がん」（雰囲気も女将さんも非常に感じがいいのですが，料金がちょっと高いですねえ，女将さんは多賀城市在住で震災ではひどい津波被害を受けられたようです。この店もガスが使えず不自由されていましたが，元気に店を続けていただくことをお祈りします）などにお邪魔しました。
2012/03/03
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