「スーパーゼネコン」と呼ばれている大手建設会社の 4 社は、今年の 3 月期の決算を発表したのだが受注高は 4 社とも前期より増加しており、鹿島を除く 3 社が増収となっているのだが、労務費の上昇などに伴い特に建築工事で採算の悪化が進んでおり、完成工事総利益率は清水建設を除く 3 社で低下しているそうなのだ。大林組の完成工事総利益率は前期より 1.6 ポイント低下しており、その理由を全国的に労務単価などが高騰したことが一因としているのだ。作業員の実質賃金は型枠工の労務単価は東日本大震災の前と比べると東北で 2.5 倍となっており、関東でも 2.2 倍だし関西では 1.5 倍になっている。高騰する前に受注した工事ではコスト増を反映しきれず利益率を引き下げたというのだ。
土木の完成工事総利益率は大林組を除く 3 社で前年同期より改善したのに対して、建築では 4 社ともに低下しており基本的には解消されていないのだ。土木工事の場合は重機などによる機械化や効率化が進んでいることから、人件費に利益が大きく左右されにくいのだ。それでも深刻な人手不足には変わりがなく、建設業関連の新規求人倍率はいずれも上昇しており、中でも型枠・鉄筋など躯体工事にかかわる技能労働者への求人倍率は10倍を超えているとも言われているのだ。建設現場で働く労働者の需給は少なくともここ10年で最も逼迫して大きな懸念材料が顕在化しているのだ。特に人手不足による労務費の高騰は今期の利益を直撃した格好となっているようなのだ。
「スーパーゼネコン」と呼ばれている大手建設会社の 4 社でも受注・売上高ともに増額修正となったにもかかわらず、営業利益は期初予想から減額せれているし、経常利益も同じく減額されたているそうなのだ。売上高営業利益率でみると期初予想の 2.16 %から 1.18 %へと大幅に低下しているそうなのだ。労務費と資材の高騰ということなのだが、建設業界は長期間にわたって市場が縮小し、その間各社はダンピング競争を繰り広げ、かなり熾烈な競争をした結果シワ寄せが末端の労働者に集中したのだ。数年前までは「職人の年収は 200 万円半ばから 300 万円台前半。 1 日現場に出ても 1 万円も稼げない」という声が聞かれ、現場の職人をまとめる親方でも、年収 400 万円に届くかどうかだったのだ。
そのころは「建設現場で働くよりコンビニのアルバイトのほうがいい」というのはもはや業界の定説だったし、現場の作業員からは「生活保護を受けたほうがよっぽどマシ」という声すら上がっていたのだ。特に賃金の低下がきつくなったのは業界全体の受注量が激減したリーマンショック以降で、これを機に建設業界に見切りをつけ多くの職人が現場から去っていったのだ。業界で働く人の数は 15 年前と比べて約 180 万人の約 27 %の減少となっていたのだ。しかも従来から高齢化も進んでいたが今では労働者の 3 人に 1 人が 55 歳以上となっているのだ。もともと建設現場は 3K (危険・汚い・キツイ)職場と言われており、それでも人が集まっていたのはそれに見合う報酬を得ていたからなのだ。
業界の特異な構造も賃金適正化のカベになっているとの指摘もされており、建設業界は元請けから「 1 次下請け」・「 2 次下請け」と幾層にも分かれている。元請けであるゼネコン自らが技能労働者を抱えることはなく実際には 2 次以下の下請けが労働者を呼び集めているのだ。重層構造は 10 次以上にわたることもあって、そのため元請け段階で賃金が上がってもそれが末端の労働者までこぼれてくる保証がないのだ。型枠工などの技能労働者の育成には時間がかかりすぐに人手を確保できない。それだけに技能別にみると人件費がかなり高騰している分野もあるというのだ。このままでは人手不足が足かせとなって今後の建設投資が消化しきれない可能性があるというのだ。
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