厚生労働省は来年の4月から社員に年5日分の有給休暇を取得させる義務を企業に課す方針だとされているが、次の通常国会に労働基準法改正案を提出する方向で調整を進めているというのだ。新しい仕組みでは年10日以上の年休を付与されるフルタイム社員のほか一部のパートタイム社員に年5日分の有休を取らせることを企業の義務とする。目指している姿は事実上の有休消化義務が企業側にあり取得率も 100%に近い欧州諸国だという。現行の有給休暇制度は6年半以上働けば年20日が付与される仕組みだが問題は実際の取得率にあるというのだ。昨年の厚生労働省『就労条件総合調査』によると、労働者の有休取得率は 48.8%で1人平均の取得日数は 9.0日にとどまる。
そこで今回の政策であるが企業で働いているこれまで全く休めなかった者にとって、年5日分の有給休暇を取得させる義務を企業に課す朗報だろう。変わって職場風土のために有休を「取りにくかった」人の場合はどうかというと、これまで「休みにくかった」社員が休みやすくなるには法律の仕組みだけでは足りず、ひとえに企業の運用にかかっている。例えば企業によっては夏休み・年末年始・GWなどの休暇時期に合わせる形で「5日分」の取得促進を図るケースも考えられる。その場合でも大型連休は実現しやすくなるかもしれないが、社員が「休みやすくなった」と感じるかには疑問が残るというのだ。これは「特別な時期」を除けば「休みにくい」ことには何ら変わりがないからだとされているのだ。
職場風土の改革は今後も取り組む必要のある課題で、もっというならば成果で管理されることも多い専門職や管理職などでは、ただ「休みを取らされる」だけだと良い面ばかりではない。休んだ翌日にその分業務が積み上がるならば休日はそう嬉しく過ごせないのだ。場合によっては自宅で仕事をすることにもなりかねないことになると、社員の満足にも寄与せず逆にモチベーションを下げることさえもありえるというのだ。それでも社員に年5日分の有給休暇を取得させる義務を企業に課す新しい仕組みによって、有休をこれまで全く取れなかった者やサービス業や中小企業で働く者の取得がすすみ、平均的に見れば取得率70%という政府目標に近づくかもしれないという期待はあるというのだ。
ただ多くの問題をクリアするには「仕組み」を入れただけでは十分でなく、今後の企業の運用にかかっていると言えそうだ。今回の有給取得の義務化という政策は働きすぎ防止策の一環として労働者の健康確保のほか、休み方改革による仕事と生活の調和と生産性向上までを狙うというのだが、有給休暇の取得を義務化しても結局は他の日に沢山働くようになるのであまり意味がないといえるだろう。労働時間を減らし過労を減らすには労働時間に上限を設ける以外に方法はないということのようなのだ。もっとも政府は前の国会での悪法との批判が強かった労働基準法改正案の成立を断念したことから、そのため有給休暇の消化の義務化は行われない見込みとなってそうなのだ。
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