全国の都道府県のうち、 5 月末時点で 43 自治体が公共工事に関する設計変更ガイドラインを既に策定していることが国土交通省の調査で分かったというのだが、残る 4 県も今年度には策定に向けた準備を進めているそうなのだ。設計変更が可能なケースと不可能なケースをそれぞれ具体的に示した設計変更ガイドラインは、一昨年に改正された「公共工事の品質確保の促進に関する法律」が求めている「適切な設計変更」の実現に不可欠なもので、私の住む愛媛県でも昨年に改定されたている。より適切に設計変更が行われるように、指示書に概算金額と延長必要日数を明記するように規定しているが、今回は「公共工事の品質確保の促進に関する法律」に対する自治体の取り組み状況を把握するために国土交通省が調査したという。
公共工事の発注機関は土木事業について効率的かつ組織的な事業執行を図るため、「設計図書作成上のルール」や「設計変更のルール」を定めているのだが、「設計図書等作成要領」はより効率的かつ円滑な事業執行を図るため、発注者・受注者が共通認識のもとに工事を行うことを目的として、設計図書作成上のルールや設計変更のルールを掲載している。公共土木工事は多様な制約条件のもとで個別に設計が行なわれ、多岐にわたる自然・環境条件の影響だけでなく、工事中の安全確保や近隣への迷惑防止措置など、社会条件への配慮も必要となるなかで目的物を完成させることになっており、そのうえ契約当初の施工条件に不確定要素を多く含んでいるとされているのだ。
このことから施工条件等が変わり不確定要素が確定した時点で、その内容に応じた設計変更の必要が生じる場合が多くあって、そのため当初積算時に予見できない事態が起こることが工事中によくあるのだ。例えば土質・地下水位等の変化に備えその前提条件を明示し、施工条件が変わった場合の措置を明確にすることにより設計変更の円滑化を図る必要があるとされているのだ。今回の国土交通省の調査でも 38 自治体では、地域内の市町村に向けてガイドラインの策定を支援していることも分かったそうで、各自治体とも市町村職員向けの説明会や研修会の開催などを行っているそうなのだ。また受注者向けには設計変更に関する相談や苦情の受け付け窓口を開設した自治体もあるというのだ。
一方で設計変更ガイドラインをうまく活用できていない自治体もあって、国土交通省の調査では技術職員の不足で設計変更に充てる時間の確保が難しいとする声や、ガイドラインに対する担当職員の理解が不十分でうまく活用できていないといった声が挙がっている。国土交通省では「適切な設計変更」のほか「予定価格の適正な設定」と「発注や施工時期の平準化」を、「公共工事の品質確保の促進に関する法律」の運用における重点項目に設定し、それらの推進に向け全ての自治体が自身の現状を客観的に把握できる指標を、この夏までに決める予定だとされている。そして参考資料として国土交通省技術調査課のウェブサイトで、指針本文や解説に参考資料などを公開しているという。
国土交通省は「公共工事の品質確保の促進に関する法律」の運用指針が正式決定されたことを受け、品質確保の担い手である施工者や設計者が人材を確保や育成しやすくすることを目指して、施工者が適正な利潤を得られるよう発注者に配慮を求める条文などを盛り込んでいるというのだ。私も数多く工事を担当してきたが、契約図書に明示すべき事項が不明確な表示であるためにその変更対応が問題となる場合や、口頭のみで協議したために設計変更の段階で意見が食い違い変更に反映されなかったといった事例があるほか、発注者と受注者との間でトラブルとなる事例が数多く見受けられていることから、設計変更ガイドラインの策定も指標の案として挙がっていたのだ。
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