特別養護老人ホーム からの請求額が昨夏以降はね上がっているそうで、脳出血で半身マヒになった母親は最も重度な要介護5で、4年待った末にやっと東京都の特別養護老人ホームで2年前から暮らしている。食費や部屋代に介護保険の自己負担分なども含め月約8万円から約17万円に倍増してそうで、両親の年金は月約28万円だが実家の借地料は月8万円近く、一人暮らしをする父親の医療費や社会保険料の負担も重いという。男性は毎月4万円の仕送りを始めたがなお足りないというのだが、負担が増えたのは介護保険制度の改正で施設の食費・居住費の補助を受けられる条件が厳しくなったため、住民票登録をしており実家の父と「世帯分離」をしているというのだ。
男性の場合これまで非課税世帯とみなされた母は補助を受けられていたが、制度改正によって世帯が別でも配偶者が住民税の課税世帯なら補助の対象外になったという。住民税が非課税の世帯も一定の預貯金があれば補足給付を受けられなくなったということなのだが、厚生労働省によると昨年8月末の補足給付の認定数は約90万件で前月末の約120万件から一気に減ったそうなのだ。制度改正の影響が大きいとみられているがこの男性は住宅ローンや教育費を抱え仕送りはギリギリだという。そこで「両親に離婚してもらうしかない」ということで両親を離婚させて再び補足給付を受けるしか手段がないと思い弁護士とも相談しているが、こんなことを真剣に考えているというのだ。
金沢市で二つの 特別養護老人ホーム を運営する「やすらぎ福祉会」の代表者よると、昨年夏の一連の介護保険制度見直しで計144人の入居者の3割ほどで負担が増えたという。「中間層でも生活がギリギリになる人がいる。『払える人が負担する』という制度の趣旨を超えており、負担増の線引きがこれでいいのか疑問だ」と語っている。その 特別養護老人ホーム の個室に入居する認知症の女性も夫と「世帯分離」をしているそうで、夫の年金収入で補助の対象外となり施設利用料は月約7万円値上がりして約14万円になるからだというのだ。合計月23万円余りの夫婦の年金だけでは足りず貯金を取り崩すようになった。「そしていくら財政が厳しいと言っても利用料がいきなり倍なんて尋常じゃない」と怒っているという。
この「世帯分離」した夫婦のケースでは20歳で上京して電線会社で長年働き、定年後に故郷の金沢に戻った夫は「アベノミクスで成長って言われても、こんな負担増が続けばいずれ暮らしが成り立たなくなる」と嘆いている。生活保護費の予算が増大した近年では国や自治体が不正受給防止対策を急いでおり、同時に生活困窮者の自立も促しているが「老老介護」に陥った家庭には窮迫した日々を乗り越えることに追われがちだ。政府は介護の在宅・施設の整備に予算を確保し、サービスの受け皿を増やすとしているそうなのだ。収入不足については年金や生活保護など複数のセーフティーネットでのカバーを想定しているが、ある介護関係者は「網の目が粗く、制度からこぼれ落ちる高齢者が多い」と指摘している。
これまでは地元の保健師らが戸別訪問などをしてきたが人員不足の上、地縁・血縁の希薄化で孤立する家庭が増えているというのだ。高齢者の貧困問題に詳しい河合克義・明治学院大教授は「個別相談はプライバシーに踏み込まなければならないこともあり、行政が責務で取り組むべきだ。専門家から橋渡しすることで、民間の民生委員らとの連携もスムーズになる」と指摘している。高齢者介護問題は早急な解決を要するがまだ時間がかかりそうで、さらに消費再増税見送りで財源確保へ制度が再変更されれば各種制度はさらに複雑化する恐れがあるというのだ。自治体の生活相談窓口では「国にはもう財源がない。生活プランを見直して欲しい」と言うように、守り続けてきた「中流」の暮らしの揺らぎが深刻となっているのだ。
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