日本人は家を買うのが好きだと言われているが、まとまったお金が入ってきたり収入が増えたりすると必ず家を買ったりあるいは新築するというのだ。都会に住んでいれば新築マンションを買うということになる。40歳を過ぎて子供が学校に通っていると持ち家ではなくて賃貸に住んでいると「まだ買っていないの」という目で見られるという。一人前の大人は持ち家に住んでいなければいけないというのが日本社会の空気なのだが、「うだつが上がらない」という価値観は今も濃厚に生きているのだ。この「ウダツが上がらない」という言葉は、「仕事ができない」とか「稼ぎが悪い」といった意味で使われているが、「うだつ」とはもともと隣家との間に設ける1階と2階間の屋根付きの壁のことなのだ。
つまり「ウダツを上げられる」というのは「立派な家を建てた」という意味になるわけで、マンションの購入や売却について多く特に購入を考えている方の発想は「家賃を払っているよりも買った方が得だろう」というベクトルが多いという。これはその通りである場合もあればそうでない結果になることもあって、エリアや物件にその時の市場の状況などによるという。日本は全国的に家が余っている状態だというが、空家率の調査で13・5%とされ賃貸住宅の空室率も、現在は約20%だとみなされている。東京や大阪に名古屋といった大都市でも今後人口は減っていき世帯数の増加も止まることから住宅に対する需要は細る一方だ。東京の都心エリアのように購入価格が家賃の30年分以上にもなる場合は賃貸にしておいた方が無難だという。
昭和の時代まではマンションは将来一戸建て住宅を取得するまでのステップという意味合いが強く、いわゆる「住宅すごろく」という考え方があったというのだ。結婚して賃貸アパートや賃貸マンションに住んで、少しお金がたまれば分譲マンションを買い、そのうちマンションが値上がりするからマンションを売却して売却益を使って郊外の一戸建てを取得し、定年後はこの住宅で子や孫に囲まれて穏やかな人生を過ごすという、こんな絵にかいたような人生を思い描いてきたのが「住宅すごろく」だったのだ。ところが平成になってマンションは「永住する資産」としての認識が急速に広まったという。郊外からの通勤が大変であるのは昔も今も変わらないが、都心部のマンションが安くなって買いやすくなったというのだ。
郊外に住むことなく便利なマンションに永住しようとする考え方が主流となったわけなのだが、そのマンションでは管理組合があってマンションの管理組合の理事会とは、マンション内の行政機関のようなものだとされ、そこで行われることは市町村の役所がやっている行政のミニ版だと考えるべきだという。ただしその行政力が及ぶのはマンションの敷地内のみで、また「管理規約」や各種「使用細則」というルールに縛られている。あまり知られていないが管理組合の理事長には巨大な権限があって、その理由は管理組合の最終的な意思決定を行う総会の決議方法にあるわけなのだが、その総会に提案する議題を決めるのは理事会で意見を取りまとめるのが理事長の役目なのだ。
理事と理事長の意見が違った場合には実質的に理事長の承認なしには総会の議案は決められないという。なぜなら多くの総会では区分所有者の大半が「議長一任」の委任状を出し、総会で議長を務める理事長がその権限を行使すればどんな議案でも否決することができるとされているのだ。理事長の権限とは行政組織の長である市区村長や知事が持っている巨大な権力に近く、そして行政とはすなわち予算の立案と執行になるのだ。 分譲マンションの区分所有者であるなら自分たちの管理組合の活動に目を光らせるべきで、特に何年も同じ人間が理事長を続けている場合は要注意だとされ、「絶対権力は絶対的に腐敗する」という政治の法則が利権化した管理組合にもあてはまるからだという。
大規模なマンションの理事長は年間数億円にもなる管理組合収入の使い道を実質的に独断で決めることができてしまうといわれており、理事はいってみれば地方議員みたいなものとされ理事会で意見を言えるが、予算案やその他の議案を提案しても理事長に反対されると引き下がらざるを得ないのが実情なのだという。多くの管理組合では理事が輪番制になっている理事長だが理事長はだいたいの場合「理事による互選」で選ばれることが多いというが、マンションの住民は理事になっても理事長はやりたがらないという。理事たちがお互いに押し付けあって決めているケースがほとんどなのだが、理事長にはかくも巨大な権力があってそのことに多くの人は気づかないというのだ。
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