大阪市と堺市を結ぶ路面電車の阪堺電気軌道が日本一高い「あべのハルカス」がある天王寺駅前から出発する上町線の線路の一部にセンターポールによる架線や芝生を取り入れ、天王寺駅前停留場・駅舎の新設、阿倍野停留場ホームの新設なども実施するそうなのだ。これで関西初の芝生軌道が姿を現すのだが、この路面電車の軌道整備工事は事業名を「都市計画道路長柄堺線拡幅整備に伴う阪堺電気軌道上町線移設工事」というそうで、工期は 2015 年 7 月から 2017 年 12 月までとなっており、新たな軌道を造りながら天王寺駅前や阿倍野の順に停留所の新設工事などを実施しており、発注者は阪堺電気軌道で施工者は土木・建築工事が南海辰村建設・奥村組 JV だというのだ。
新軌道へ移る阪堺電気軌道上町線の天王寺駅前─阿倍野間で、その阿倍野停留所を見ると複合施設「あべのベルタ」寄りに屋根付き新ホームが建っているそうなのだ。 新たに屋根が付いた阿倍野停留所ホームはスロープで地上とつながり、車いす利用者などに配慮した構造になっているそうで、下り線の新ホームは来年度中には供用開始することから、既存線路の撤去に併せて上りホームと同様の屋根付きホームが出来上がるというのだ。新軌道移行によって大きく変わるのはクルマや歩行者との関係で、これまでは併用軌道で線路内を自動車や歩行者が行き来できたが阪堺電車によれば、「新たな軌道は、併用軌道でありながらも制限区域を設けたイメージ」だといい一部区間には関西初という芝生を植えているそうなのだ。
また現在の軌道のあべの筋に敷かれた既存レールを見ると大きく波を打っているが、この上を行く電車はこの波打つ線路によって上下に揺れながら走っていたというのだ。今月から新軌道へと移るとこの揺れも低減するとされており、阿倍野区の芝生軌道化などの取り組み「あべの筋の魅力ある街づくりに関する事業」については、芝生の維持管理を安定的に続けていくための財源を確保するため寄付を募っているそうなのだ。芝生軌道の保守・維持管理に使用することでは、事業用車輌「芝刈り電車」を持っている鹿児島市の取り組みが有名だが、散水車の機能を持たせた牽引車が芝刈り装置を搭載したトレーラーを牽引する方式で、牽引車単体では、桜島の降灰時における日中の散水作業も実施されているそうなのだ。
作業時は常に作業車を牽引する事となっており終点では方向転換して必ず牽引車後部に連結されるという、わたしの住んでいる松山市の伊予鉄道で運行されている「坊っちゃん列車」に使用されている方式と近似しているそうなのだ。牽引車として採用されたのは「ユートラム II 」の増備によって運用から外れ保留車となっていた電車を改装したもので、車内は座席をすべて撤去し容量 6000 リットルの水タンク及び散水装置を設置し、芝刈り装置等の各種機器を搭載しているそうなのだ。車体の前後には車内から配管を引き通した散水用のシャワーパイプが設けられた他、黄色回転灯や作業灯が設けられ、芝刈り車の牽引だけでなく単体で散水車として運用することも可能となっているそうなのだ。
芝刈り装置を搭載した車輌には芝刈り装置の他に、刈り取った芝やごみを吸引して清掃する吸引装置や方向回転時に使用する油圧ジャッキを設けており、牽引車である 512 号の運転席横の細い窓からは制御引き通しのジャンパ栓が接続され、車内から吸引装置と芝刈り装置が制御されているそうなのだ。方向転換時は車体に組み込まれた油圧ジャッキで車体を持ち上げ人力で反対方向に回転させ再び牽引車の後部に連結され、前後の行き先表示幕には、新たに「芝刈作業中」と「散水作業中」の表示がセットされているそうなのだ。もっとも芝刈り作業は人が歩く程度の低速で行われるため、正式運用開始後の作業は最終電車運行終了後の深夜に行われることとなっていることから、普段は運行状況が見えないというのだ。
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