人口減少への対策として政府は「1億総活躍社会の実現」を掲げ、保育や介護の充実に加えて今年の夏からは働き方改革にも着手するとして、6月に閣議決定した「ニッポン1億総活躍プラン」で「半世紀後も人口1億人を維持する」と目標も明記している。それでも政府の対策は即効性が見込めず課題は山積しているのは間違いがなく、その結果が厚生労働省は平成28年の人口動態統計の年間推計を発表したのだが、出生数は前年比2万5千人減の98万1千人となり、戦前の旧戸籍法に基づく明治32年の統計開始以来過去最少となったというのだ。年間の出生数が100万人を割るのは初めてで、厚生労働省は「主な出産世代とされる20~30代の女性の人口減が大きな要因」としているというのだ。
年間出生数が100万人の大台を割る見通しとなり日本の少子化はさらに厳しい局面を迎えているのだが、年間出生数は戦後間もない昭和24年には約270万人を数えており、いかに少なくなったかが分かるというのだがこれは通過点にすぎず、国立社会保障・人口問題研究所は2060年には50万人にすら届かなくなると推計しているのだ。少子化や人口減少ですぐに思い浮かぶのは経済の停滞や年金制度などへの打撃だが、これまでの少子化の影響で女児の出生数が減っており、出産可能な年齢の女性数が激減していくためだとされているのだ。残念ながら現状においては少子化の流れを止めることは極めて難しく、このまま人々が子供を産まなくなるのでは、やがて国家は滅ぶという事態になってしまうというのだ。
この「人口動態統計」の年間推計は日本在住の日本人について、1~10月の速報値を基に1年分を推計しているのだが、毎年6月に概数が9月に確定値が公表される。死亡数は前年より6千人多い129万6千人で戦後最多となり、死亡数から出生数を差し引いた人口の自然減は過去最多の31万5千人とされ10年連続で増加している。平成28年の婚姻件数は62万1千組で前年に比べ1万4千組減って戦後最少で、離婚件数は前年比9千組減の21万7千組だったというのだ。出産の前提となる結婚についても内閣府の有識者検討会が企業による結婚支援を促進するための提言案をまとめたが、「価値観の押し付けだ」といった批判を受け修正を迫られるなど、なかなか思うように進んでいないのが現状だ
1億総活躍をめぐっては「国内総生産600兆円」とか「希望出生率1・8」や「介護離職ゼロ」の目標を達成するため、すでに最低賃金の引き上げや保育と介護の受け皿をそれぞれ50万人分増やすなどの対策を始めている。菅官房長官は「出生率を 1.8 に上げるための政策を実施することが極めて重要」としているが、平成29年度予算案でも保育士の処遇改善に向け中堅役職の「副主任保育士」を新設して月給に4万円を上乗せするほか、介護と障害福祉の職員の月給も平均1万円上げることを打ち出している。さらに各政策を横断的に進める取り組みとして働き方改革を掲げ、同一労働同一賃金の実現による非正規社員の待遇改善や長時間労働の是正に伴う余暇時間を増やす方策に着手。少子化対策につなげようともくろんでいるのだ。
それでも待機児童数は2年連続で増加するなど対策は追いついておらず、働き方改革の成果が出るのも数年先となる見込みなのだ。確かに私の回りにも適齢期過ぎても結婚してない人がかなり多いが、その大半は結婚したくないという訳ではなく、いい人がいないでもわざわざ相手をガツガツ探したくはないという若い衆が多いみたいなのだ。そういう人たちが結婚できるような社会にしないと少子化は改善しないのだが、平成28年の出生数100万人割れは少子化対策を「経済再生の最重要課題」と位置付けてきた経済界には大きなショックだろう。企業側にも一層の取り組み強化が求められるのだが、少子化対策として余裕のある大企業に企業内保育所を相次ぎ設置してもらうことも考えているというのだ。
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