「いろは唄」 というのはすべての「かな文字」を重複させずに使って作られた「誦文 ( ずもん ) 」のことで、七五調の今様形式となっていて手習いの手本として広く受容され、近代にいたるまで用いられていた。古くから「いろは四十七字」として知られるが最後に「京」の字を加えて四十八字としたものも多く、現代では「ん」を加えることが多いとされている。仮名を使った「いろは歌」は 11 世紀ごろから手習いをするための手本としても使われるようになり、江戸時代に入るとさらに仮名の手本として広く用いられ、 3,065 の寺子屋を対象に行われた調査では、「いろは歌」を手習いに用いていたところは 2,347 箇所となっていたという。日本の美しい言葉文化で覚えればすらすらっと言えるようになるそうなのだ。
そんな「いろは唄」に関して自民党の河野太郎衆院議員がブログで、日本年金機構の年金事務所での不可解な実態を指摘したそうなのだ。なんとファイルの整理に「あいうえお」から始まる五十音順ではなく「いろは順」を採用しているというのだ。いろは順でファイルを整理するなど今の役所では考えられないのだが、河野議員は「通常の並び順でないため、担当者がすぐにファイルを取り出せず非効率ではないか」と厚生労働省年金局に疑問をぶつけたという。ところが厚生労働省年金局の回答は「引き続きこれらの取り組みを徹底していく予定です」というのだ。そこで自らが本部長を務める自民党行政改革推進本部が「五十音順になぜ改めないのか」を調査する予定だとしている。
厚生労働省年金局によると「イロハ順」を使う事務所の方が多いそうで、全国の 114 カ所の事業所で五十音順を、 198 カ所でいろは順を使っているという。日本年金機構に問い合わせた河野議員への日本年金機構の回答は、「以前からイロハ順を使っているのは、承知していますが、詳しいことは把握できていません」というのだ。日本年金機構年金局では「ろは順」を使ったファイルの整理をしていないし、「非効率」という指摘に関してどう思うのかと尋ねえると、「たしかに、長く同じ事務所にいて、慣れている方にとっては違和感がないとは想像できます。しかし、現場の状況を把握していないので、こちらが非効率かどうか、答えることは現時点ではできません」とまでいうそうなのだ。
この「いろは順」の採用は 1942 年に厚生年金の前身である「労働者年金保険法」が制定された時に始まり現在まで引き継がれており、現在では「いろは順」での整理は時代遅れになったというのだ。ところがデータが膨大で五十音順に変更するのが難しいこともあり、すべての事務所で統一せずバラバラになっているというのだ。ファイルに入っているのは被保険者が納める保険料と将来の年金額の計算に使われる算定基礎届などで、現在の年金受給者には直接関係がない書類で、「いろは順」によって書類を探すのにもたついたとしても、受給者に「迷惑をかけることはない」というのだ。それでも担当者は「今では、いろは順が使われなくなったのは事実です。新人の方には抵抗があるはずですし、面倒をかけます。私は事務所に入った時、慣れるまで数ヶ月かかりました」と答えている。
統一する指導は事務所ごとに任せているそうで、「いろは順」が必要なところでは紙を用意したりファイルボックスにインデックスを貼ったりして対応しているという。担当者も「統一すれば、職員の仕事のしやすさは確保できますが、今すぐに変えるのは難しいのが現実です。膨大なデータを変更するのは時間も費用もかかりますし、年金受給者に直接影響を与えない以上、優先順位が低いのです。お客様の対応改善や制度の改正に予算を投入するのが先です」と語っている。確かにシステムを変えるのはなかなか難しいだろうが、河野議員のブログをきっかけにして日本年金機構が動こうとしているというのだ。
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