東京オリンピック施設の入札で問題となった東京都の入札参加者が 1 者だけで落札率がほぼ 100 %となる入札を回避する新方式を今月から公告する財務局案件で試行するそうで、入札の公共性・競争性に対する都民の疑念を払拭するための制度改革だという。東京都が開催した制度改革の説明会は「満員御礼」状態だったそうなのだが、建設会社など事業者側の関心の高さがうかがえるという。東京都が入札制度改革の実施方針を示したのが今年の 3 月で、唐突な制度改革の公表に寝耳に水だった同じく都民である建設業界団体などからは多くの反発の声が上がっており、東京都は説明会を何度か繰り返し 5 月には小池百合子都知事が業界団体へヒアリングするなどして制度内容の一部を見直してきたという。
説明会のあいさつで東京都財務局の五十嵐律契約調整担当部長はこれまでの事業者からの陳情について「事業者からはダンピングが横行していた時代に逆戻りする、あるいは競争性のみを追求して中小企業の参加機会が減少するといった不安の声をもらった」と語り、「今回の改革については、これまで都が品確法などの趣旨を踏まえて取り組んできた制度改革と内容が矛盾するとは考えていない。重要なのはおのおのの制度の特徴を踏まえて、メリットを最大限に生かすような適切な運用だ」と述べている。東京都が 6 月から実施する「 1 者入札、 99.9% 落札」を回避するために講じる 3 つの対策というのは「予定価格の事後公表」と「共同企業体結成義務の撤廃」に「 1 者入札の中止」という大枠は 3 月末に示した案と同じだという。
建設会社の見積もりに必要な情報を適切に提供するように積算内訳書の一式計上の見直しや工程表の公表などを実施し、さらにこれまでは見積もりに必要な発注図書を入札参加希望者が確定した際に渡していたがそれを入札公告時に前倒するとともに、質問回答から入札締め切りまでの期間も従前から 1 週間延長するというのだ。事後公表になると入札参加者全員が予定価格を超過して応札し落札者が決まらない「不落」が生じる恐れがあるが、その場合は電子入札で札を入れた参加者のパソコンの画面上に「再度入札通知」を表示するほか、次の入札時間と予定価格を超過した札のうち最低額を通知し、再度入札までの時間は 1 時間程度で不落による再度入札は一日に 2 回までとしている。
続いては 2 つ目の改革である共同企業体の結成義務の撤廃についてだが、結成を義務付けると大規模な工事ほど入札参加者が少なくなる傾向があったため、より多くの会社が入札に参加しやすい環境を整備するというのだ。ただしこれについても中小企業から「大手企業が単独で受注する傾向を助長し受注機会が奪われる」とか、「共同企業体のサブで実績を積み、次の入札参加機会の拡大につなげていたがそれができなくなる」といった声が上がったという。 そこで東京都は中小企業の受注機会を奪わないように意欲と能力のある中小企業が単独でも参加できるように参加条件を緩和し、これまで共同企業体のサブとしてしか参加できなかった等級の中小企業でも履行能力を確認できれば単体で参加可能としているという。
そして 3 つ目が 1 者入札の中止なのだが、競争性が見えにくいという理由で 1 者入札を取りやめ競争性・透明性を向上させる狙いがあるという。 1 者入札の中止は他の複数の自治体でも採用されているが東京都の場合は中止にするのは入札時点ではなく入札公告以降に参加希望者を受け付け、希望申請時に 1 者だけであった場合は以降の入札手続きを中止するといように早めに中止を明らかにすることで不要な見積もりの手間がかからないようにするという。 2 者以上が入札参加を希望してその後入札時点までに 1 者になったとしても中止せず、中止した案件についてはより多くの建設会社などが参加できるように要件を緩和して再公告するが、再公告した案件で再度 1 者しか参加希望者が集まらなくても入札は中止しないこととしている。
東京都は予定価格に代わる事業者の入札参加の判断材料として工事発注の規模を年間発注予定表や公告時の発注予定表で公表する予定でこれは国で実施している同様の取り組みを参考にしたという。工事発注の規模は発注等級ごとの発注金額を細分化して設定しているが、東京都の制度改革は 10 月から財務局以外の契約案件でも試行を始めるそうなのだ。中小企業にとってはそちらの案件が主に入札対象となるケースが多く、都内のある建設会社の社長は「 6 月からの財務局案件での試行や 7 月の都議会選などを経て、各局での試行内容は大きく変わるのではないか」とみており、中止しなかった場合と比べて 1 ~ 2 週間は事業の執行が遅れるとされ事業執行の遅れなども指摘されていつそうなのだ。
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