労働現場がパンクしたヤマト運輸とその引き金になったアマゾンとの交渉が大詰めを迎えているそうで、ヤマ場は両社の契約が更新される 9 月だとされている。関係者によるとヤマト運輸がアマゾンに対して現状の 1.7 倍への値上げを要請しているそうで、ヤマト運輸は運賃の値上げと総量コントロールする方針を打ち出しており、大口の法人客にも値上げを要請していつことからアマゾンとて例外ではないというのだ。ネット通販の王者であるアマゾン宅配便数は年間 3 億個にものぼり、このうち 4 分の 3 にあたる 2 億 2000 万~ 3000 万個をヤマト運輸が残りを日本郵便が運んでいる。ヤマト運輸が受けているアマゾンの荷物の平均単価は 270 ~ 280 円で、これは利益が出ないとしてアマゾンの仕事から撤退した佐川急便の価格に等しいという。
ヤマト運輸は徹底した顧客主義といわれており、宅急便の配達員が必ず荷物を手渡しする理由は「わたしたちは荷主の代理で大切な荷物を届けに来たのです」という意味が込められているというのだ。そしてヤマト運輸の仕組みは常に顧客の要望をくみ取る形で進化しており、翌日配送から当日配送への進化や時間指定の厳守に、常温・冷蔵・冷凍の3種類の温度管理が可能な配送など、ヤマト運輸はそれまでの物流業界の常識ではありえなかった付加価値をつぎつぎと生んできているが、その原動力は顧客の要望をかなえるという会社としてのバリューにあって、顧客第一主義でサービスを生んできたことによってヤマト運輸は世界でも最強の物流網を築き上げているといわれているのだ。
小売の業界でも「顧客第一主義」の企業が競争に勝ち上がって急成長してきたのがアマゾンであるとされており、通常注文でも首都圏なら翌日配送があたりまえで、そして有料会員のアマゾンプライムに加入するとお急ぎ便やお届け日時指定便がいつでも使い放題になる。はやく読みたい本やすぐに使いたい日用品が週末買い物に出かけるよりも早く、そして安く自宅に届くということが忙しい現代人に強く支持されてアマゾンは世界中で急成長したというのだ。顧客第一主義で成長するアマゾンが顧客第一主義のヤマト運輸を使って宅配するといったこの二重構造が、世界でも類を見ない便利なインターネット通販の仕組みを完成させたのだが、今そこに軋みが生まれてこの構造が壊れかけているというのだ。
物流力でいえばアマゾンは他のインターネット通販とは一線を画しており、生産性を上げることについてアマゾンほど強く執着する企業は世界のどこにもないという。書籍や日用品・音楽 CD など大量の商品がアマゾンの倉庫の中で分刻みの決められた速度でピックアップされ出荷されるのだが、アマゾンが配送先のエリア別に仕分けして各地の基幹センターに持ち込んでいるというのだ。そうして倉庫から出荷された荷物を顧客の指定した時間に届けるヤマト運輸の仕事が、これだけの付加価値をつけながら消費者から見れば宅配の送料は無料なのだ。顧客第一主義のための徹底した生産性管理がここでは行われているが、それはサービス残業に支えられてこそ見合う価格だったわけでこの単価では採算が合わなくなったというのだ。
ヤマト運輸はアマゾンに対して現状単価の 270 ~ 280 円から 470 円への値上げを要請しているとされているが、「アマゾンは、短期的にはヤマトの要求を飲まざるを得ないだろう」と言うのが関係者の意見だという。直近でもアマゾンは年に 1 度の大セールを実施したばかりで、荷量が通常期よりも多くなるため物流現場にかなりの負荷がかかるが、これも「ヤマト運輸に協力をお願いして、なんとか乗り切れた」というのだ。さらにアマゾンを悩ませているのはヤマト運輸が値上げのみならず総量コントロールの対象にしていることで、アマゾンに対して現状受けている 2 億 2000 万個の宅配便のうち約 5000 万個は受けられないと伝えているというが、ヤマト運輸の改革に伴いあぶれる 5000 万個の荷物をどうするかだとされている。
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