東京都の小池知事は飲食店など建物の中を原則として禁煙にする罰則付きの条例を制定する方針を明らかにしたそうで、東京から受動喫煙対策を前進させる考えなのだが、条例案の基本方針では学校や医療機関は敷地内を禁煙とし、官公庁や福祉施設などは屋内を全面的に禁煙にするとしているという。飲食店では規模の小さなバーなど以外は喫煙室を除いて屋内禁煙としており、違反した喫煙者や施設の管理者には 5 万円以下の罰金を設ける方針だというのだ。小池知事は定例記者会見で「東京都の受動喫煙防止条例の基本的な考えを策定した。国の法制化を待っていると東京都として 2019 年のラグビー W 杯や 2020 年の東京五輪と実際に世界から多くの人を受け入れなければいけない」と話したそうなのだ。
受動喫煙対策は国でも法整備に向けた検討が進められているが、東京都は開催自治体として 2019 年のラグビーワールドカップまでの施行を目指すため、 2017 年度内に東京都議会に条例案を提出することにしたというのだ。これについてたばこを吸わない人からは「いいと思います。普段生活している時にちょっと気になる時がある」とか、「賛成。子どもなども公共施設にはいる。屋内だったらなおさら空気が流れないので」といった歓迎の声が聞かれている。その一方でたばこを吸う人からは「条例案は一言で言うと最悪。屋内で吸えないのであれば、公共の喫煙所などを充実させてほしい」とか、「ちょっと乱暴な気がする。時間帯で区切るなど、もう少し柔軟な対応でもいいのでは」などといった声が聞かれたそうなのだ。
他人のたばこの煙を吸い込む受動喫煙の対策を強化する健康増進法改正案は、先の通常国会に提出されず対応は秋の臨時国会に先送りされているが、 塩崎恭久前厚労相が主導した厚生労働省案では飲食店について、原則屋内禁煙にした上で喫煙専用室の設置を認め30平方メートル以下のバーやスナックは規制対象外にしている。自民党案は150平方メートル以下の飲食店は「喫煙」・「分煙」を店頭に明示すれば規制対象外としており、原則禁煙に強くこだわった塩崎恭久前厚労相が内閣改造で交代したが、後任の加藤厚生労働大臣は安倍晋三首相の最側近の1人で、これまでも1億総活躍担当相や働き方改革担当相として各省庁にまたがる難しい政策課題の調整を任されてきたという。
受動喫煙防止対策をめぐっても安倍首相からは現実的な結果を出すことを期待されているとされており、秋の臨時国会は安倍政権の目玉法案である働き方改革関連法案の審議にかなり時間を取られるとみられていることから、健康増進法改正案は早めに党内手続きを終わらせて閣議決定し審議入りに備えておかなければならないという事情もあるというのだ。都内の受動喫煙を巡っては都議会でも動きが加速しており、都民ファーストの会と公明党は 9 月下旬からの都議会で子どもの受動喫煙防止に絞った条例案の提出を目指し、教育関係の団体などからヒアリングを行っているという。これまでは罰則付きの条例案も検討していたが都が今回の条例案を出すことから「足並みをそろえる」として提出しない考えだという。
国のがん対策の方向性を定める次期がん対策推進基本計画に「2020年までに受動喫煙をゼロとする」という目標を盛り込むかどうかだが、厚生労働省のがん対策推進協議会が今年の6月に次期計画に「2020年までに受動喫煙ゼロ」と明記するよう求めたが、健康増進法改正案の自民党内の調整が難航したため当初の期限は「夏ごろ」だったにもかかわらず、いまだに閣議決定できずにいるというのが実情なのだ。厚労省幹部は「いつまでに閣議決定をしなければならないという締め切りはないが、国の基本計画をもとに自治体も計画を立てなければならないので、そろそろ決めないといけない」と説明するが、自民党の規制慎重派からは「次期計画に細かい目標なんか入れなくていい」と強硬論も飛び出しているそうなのだ。
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