高度経済成長期に造られた高速道路や橋梁・下水道といった社会インフラが、当初想定されていた 50 年という耐用年数を迎えているという。東京オリンピックやリニア中央新幹線などの大型プロジェクトに比べ、インフラの維持管理はあまり脚光を浴びていないが、しっかりと整備をしなければ老朽化に伴う事故が起こり、我々の生活社会の基盤が揺らぎかねないという。そのインフラのメンテナンスを担うべき若者たちは年々減っており、都会ではどうだかわからないが我々のような地方の会社は募集をしても応募がないような状態となっているのだ。理由の 1 つとしては建設業界のイメージの悪さが長年続いているからで、その原因は談合や手抜き工事など一部の出来の悪い関係者の行動にあると言われている。
もっともそれだけではなく、最大の要因は何よりマスメディアの影響があるという意見もある。テレビや新聞・雑誌などでそうした事件や事故だったり、 3K な職場であったりと建設業界の負のイメージばかりを報道しているからだというのだ。この仕事に誇りを持って真面目に作業している技術者は大変迷惑を被っているが、こうしたイメージをどうにかして払拭するためにも過去に NHK で放送されていた「プロジェクト X 」のような建設業界を PR できるような番組や、大成建設の「地図に残る仕事」のような CM など、建設業界に興味を持ってもらえるものを業界として放送し魅力ややりがいなどをもっと伝えるべきではないかと言われている。それと同時にこれからインフラの保守・管理を担っていく世代に対しての教育も大事だというのだ。
日本のインフラが抱える問題を小中学校でも教え土木業が社会を支える重要な仕事だと知ってもらうべきだと考えられており、土木作業員はある程度の経験を積んだり免許を取得したりすると重機の運転を任せられるということを教えるのだという。重機と言ってもたくさんの種類があってブルドーザー・ショベルカー・クレーン車など挙げれば枚挙にいとまがない。このような重機はとくに男の子が大好きなもので、危険なのであまり近寄って見てほしくはない反面キラキラした純粋なまなざしで見つめられると、自分がやっていることを誇りに思えるというのだ。厳密に言えば子どもたちは重機を見ているのであって運転手を見ているわけではないのだが、これら重機を意のままに操っている姿を見せるのは貴重だという。
土木に対するイメージ低下が叫ばれて久しいが土木作業員がする工事の中には、ガス・水道・電気・通信設備などの公共・公益関連の工事に伴って行うものもあり、宅地の造成や区画整理だけでなく田んぼ・畑の耕地整理や用水路・排水路の整備などもあって、これらはいずれも人々の生活の基盤となるものとされている。さらに土砂崩れや洪水などの災害現場の復旧工事や雪国ではウインターシーズンに除雪するなど、陰ながら人様のお役に立っている仕事なども多いのだ。私も道行く人や近所の方から「お疲れさま」とか、「おかげで道路がきれいになるよ」などと声を掛けてもらうと、自分たちががんばることによって世のため人のためになっているんだという実感が沸いてくるというものなのだ。
土木の魅力を我々が気づかない視点から発見したり再認識したりする動きがあって、土木とはそもそも何なのか関係者以外の視点から見た土木の魅力を紹介するとともに、土木の語源や社会の中での存在意義を改めて検証し多角的な観点から土木の魅力を伝えることがこれからは必要になってくるというのだ。インフラ構造物に萌える人たちが急速に増えており、いわば先駆者となってしまっている人たちは、それはすべて インターネットのおかげだという。仕 事でもないのにインフラ構造物に強い興味を持つこと自体がマニアックだというが、そうではなく「詳しいことはよくわからないけど惹かれる」とか、「なんか、いいよね」というあくまで「鑑賞」の距 離感にこそインフラ鑑賞趣味人口が増えた理由があるというのだ。
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